後輩を勝たせること
先日、仕事(アパレル・バッグの店舗販売)で嬉しいことがあった。
そのことをここに書き留めておこうと思う。
先日、後輩から「こんなことを考えたんですけど・・・」と提案があった。
それがどんな内容かというと、ラッピンングに関するもので、
現状よりも人的コスト・材料コストなどを大きく改善できるであろうものだった。
ラッピングのこと
まず現状のラッピングを説明しておくと、
透明の袋に包装紙を差し込んで作成するというもの。
これがけっこう手間がかかるもので、包装紙をそれぞれの透明袋のサイズに裁断し、のり付けして袋に入れるといった具合だ。
それだけ手間や材料費をかけた上で「無料なのはどうなんだ?」という声があがり、今年からは有料での案内となっている。
有料になったおかげで件数は減少したわけだが、
そもそもの「ラッピング作成時の負担軽減」という根本的な部分は改善されたわけではない。
ただ単に「件数が減ったので、負担が減りましたよ」というぐらいのもの。
「本当にそれでいいのか?」と、そんな気持ちがあった。
誰かにプレゼントしたい時、
「有料だからやめておこう」
「有料でたいそうな仕上がりでなくてもいいから、ギフト感が出たらなぁ」
「ソックスとかの小物だけだし、すごく簡単なものでもいいのに」
そんな思いを抱いていたお客さんもいたのではないだろうか?
もし一定数いたのだとすれば、「有料」という文字がお客さんの満足度を下げてしまっていた可能性もある。
「贈った側の満足度を安易に無視はできない」そう感じていた。
「こんな案はどうでしょう?」
ある日、後輩からラッピングについての提案があった。
その提案というのがとてもシンプルなもので、他業種でも当たり前に行われているものだった。
それがどんなものかというと、紙袋の取手にギフトデザインのタグを差し込むという簡単なもの。
ピンッとこられた方もいるでしょう・・・
そう、スターバックスの無料ギフトと同様のものです。
紙袋代は有料にはなるけれども、無料でラッピングを提供することができる。
これならば、有料になったことで贈り物を避けていたお客さんのニーズに答えられるのではないだろうか。
・ソックス2枚ずつを3名に贈る人
・両親や子供にサイフを買ってあげる際、少しだけギフトっぽくして欲しい人
この案を聞いたとき、いかに自分の価値観が凝り固まっているのかを認識した。
スタバでは当たり前にやっていて、自分も贈ったことがある。
それなのに、自分たちが提供側にまわった途端にそれを忘れてしまう。
勝手に「飲食」「アパレル」「バッグ」「シューズ」「サービス」
などと別分類のように隔たりをつくりあげてしまっていたのだ。
うれしかった理由
企画などの提案というと、業務上は当たり前と捉えられるかもしれないが、
私にはこの提案がとても嬉しかった。
なぜなら、その後輩はとても人見知りで常に人の顔色を伺う性格。
自分が発言したことへの他人からの意見にビクビクする。
考えることはできるのだが、意見を述べることができない。
そんな後輩が、依頼されたこと以外の提案を考えてきてくれたのだから。
また、提案してくれたこともさることながら「考えていた」という部分にとても感動した。
「成長」というと偉そうに聞こえるかもしれないが、「一皮剥けた」そんな印象だ。
振り返ってみえること
そしてこうなった背景について、少し振り返ってみるとみえてくるものがあった。
ここ一年ぐらいだろうか、私は自分の考え・理念・行動についてその後輩にはよく話してきた。
業務を教える以上に、私の頭の中にあるものを外に出して後輩に伝えるということをしてきた。
それは決して業務的に意図があったわけではなく、私にとっても都合が良かったのかもしれない。
私はあまり文字を読むのが得意ではないし、文脈を読む力や語彙力もない。
そして相手に言語化して伝えることも得意ではない。
それなのに、インプット量はそれなりにあるものだからいつも頭の中が混雑していた。
いつの間にか、得た知識と自分の考えを話すということが増えていったのだが、
伝え方の下手な私の話は短く済むはずもなくもちろん長くなる。
そんな私の話を「うん、うん」と頷きながら聞いてくれる。
どうやら後輩は人の話を聞くのが幼い頃から好きで、聞いた話を解釈・理解するのが得意なようだ。
そして「つまり〇〇は△△につながっていて、最終的に◎ってことですね」
といった具合に端的にまとめてくれる。
つまり簡単にいうと、
「私の長い文章を短く端的に翻訳してくれる存在なのだ」
勇気を出して
文字が苦手な店長と語彙力のある後輩という構図が成立するわけだが、
お互いの考えが言えるという関係性も存在する。
いわゆるこれが「心理的安全性」と言われるものかもしれないが、
ここでは触れないでおこう。
ここで私が提案をうけたタイミングに時間を戻そう。
提案を「なるほど!」と聞き入れ後輩に伝えたのは、
「この案を私から会社の担当者に伝えるのでなく、アナタ自身が伝えてきなさい」
というものだった。
幸いにも、翌日に後輩は会議に出席する予定。
その場には代表取締役も同席する。
後輩の緊張度合いも想像できる。
ガタガタと震えているかもしれない。
別の議題を議論する余裕などないかもしれない。
「それでもいいから、この案は自分の言葉で伝えてきなさい」と。
最終決断者が目の前にいるケースなんて今後ほぼないだろう。
チャンスとかそういうことではなく、案の進行スピードを考えれば私を経由するよりもその場で発言し、同席者の意見を混ぜて議論した方が合理的。
必ず最後に「他に何かないか?」と社長からの問いがくる。
「だから、その時に勇気を振り絞って手を挙げなさいと」
「マジですか〜」と若干顔を引き攣りながら笑う後輩に、
「明日アナタがやるべきことはこの一つだけでもいいから」と背中を押した。
翌日、後輩が提案した案はスムーズに受け入れられ、前進するようだとの報告をうけた。
「ノドがカラカラになるくらい緊張しました〜」と話している後輩をみて、
「後輩を勝たせてあげられてよかった」
素直な私の感情だ。
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