これが私の優しさです
もうだいぶ前に買った本だけれども、今も手元にある一冊の本。
谷川俊太郎詩集「これが私の優しさです」。昔、私の知人が書いてくれた手紙の中で、この詩集について触れていたので、興味を持って買った。それ以来、ほかに読みたい本がないときには、適当に開いたページを少しだけ読んでいる。
(出典)
#谷川俊太郎
#これが私の優しさです
#名
#集英社文庫
(pp.196~197)
谷川俊太郎さんの詩に「名」という作品がある。
すご~く真面目そうな字面が並ぶが、
すご~くふざけたような言葉遊びをしている。
謎解きは、この記事の最後に😄。
谷川俊太郎 | 名
あれとかあそことか呼ぶのは
べつに婉曲語法という訳ではなくて
本当に名前がないからなのだ
古事記みたいな擬古調は物欲しげで
ほとほといやになってしまったし
数十はあるという北米の俗語のたぐいも
この国じゃカントの哲学以上に抽象的だ
方言辞典でひびきのいい言葉を探すのも
都会者にとってはそそっかしい話だろう
解剖学の術語に至っては
一片の生気すらない
いつの間にか男は愛する女のからだに
うす暗い井戸を掘ってしまった
茹で卵だのコーラの壜だのを投げこんで
それじゃまるで はきだめじゃないか
かつてあれには名前があった
かけがえのない名前がたしかにあった
ただひとつだけのその名を呼ぶのが
男たちよ そんなにこわかったのか
ただひとつだけのその名を忘れて
男たちよ いったい何をいつわったのか
千個の名で呼ばれ 万個の名で呼ばれ
いまやあれはただひとつの名を
みずから拒む
ついにはまことの無名の淵に
沈もうとする
あれ*→¤¤¤
あそこ*→¤¤¤
ほと→¤¤¤
カント→「Kant」を装いつつ「cunt」
そそ(っかしい)→¤¤¤
生気→性器、¤¤¤
万個→そのまま「ひらがな」に。¤¤¤
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