一語の宇宙 | 所得再分配の理論的根拠income redistribution
いつの時代でも税制の在り方は多くの人の関心事です。今回の「一語の宇宙」では、税の役割について少し理論的に考えてみます。
税というものは、基本的に「国」(あるいは地方公共団体)の「収入」(歳入)です。
基本的なイメージは、「行政サービスへの対価」(立法サービス、消防サービス、外交サービスなど)であり、家計の収入と同じなのですが、税の役割は家計とは異なる部分もあります。
家計の収入は基本的に「労働に対する対価」であり、収入を得た労働者は自分の生活を豊かにするために手に入れた収入を使います。
しかし、税は国家に必要なものを購入するためだけに徴収されるわけではありません。
社会的に望ましい状態になるように「所得再分配」するのも、税の役割の1つです。
以下では、なぜ「所得再分配」が必要なのか?、ということを簡単なモデルを使って説明します。
経済学や物理学をかじったことのある人ならば、「モデル思考」(思考実験)に馴染みがあると思います。
不馴れな方もいらっしゃると思いますが、それほど難しい考え方ではないので、読んでいただければ幸いです。
#効用関数
#utility_function
従来の経済学では「欲望の不飽和」を前提として、モデルが構築されてきました。
なんでも例は構わないのですが、例えば「ジュース」。喉がカラカラに渇いているとき、飲み物が欲しくなりますね。
飲み物は、多ければ多いほど良いのですが、その「ありがたみ」は最初の「一口」がいちばん大きなものです。
しかし、だんだん潤ってくるに従って、その「ありがたみ」は徐々に減少していきます。
一般的に、飲み物の「ありがたみ」は
「一口目のありがたみ」>「二口目のありがたみ」>「三口目のありがたみ」
のようになります。
グラフに描くとこんな感じ(↓)になることでしょう。
ジュースの量が増えるほど「ありがたい」のですが、「ありがたみの度合い」は徐々に減少していきます。
経済学では「ありがたみ」のことを「効用」(utility)と言いますが、どんな財(商品、有形・無形を問わず)でも、
量が増えるにつれて効用は減少していきます*。
*これを「限界効用逓減の法則」と言います。
数学的に言うと、「限界」とは「微分係数」のことです。簡単に言えば、「傾き」が徐々に緩やかになっていくことを意味します。
お金(収入)は、一般的に、多ければ多いほど良いものですが、ある程度の所得に達すると、「ありがたみ」(効用)は横ばいになる、と言われることがあります。
調査の方法にも依りますが、おおむね年収が「600万円~800万円」を越えると、「お金の効用」は横ばいになると言われています。イメージ的にはこんな感じです(↓)。
#所得再分配の意義
「効用関数」が成立するとして、年収300万円のAさんと、年収900万円のBさんの二人がいるとしましょう。
600万円を越えると、お金の「効用」が横ばいになるのですから、年収900万円のBさんから年収300万円のAさんに300万円再分配するとき、社会全体の効用が最大になりますね。
まとめ
税というものは、単に国庫を潤すためにあるのではありません。社会全体から見て、効用が大きくなるように「再分配」するという役割もあります。
今回の例をもっと簡単に言えば、年収300万円の人が追加的に手にする300万円のほうが、年収1億円の人が追加的に手にする300万円よりも、はるかに効用が大きいということです。
税の在り方を考えるとき、税の「所得再分配機能」に目を向けて政策を立案していただきたいものです。
「一語の宇宙」では、英単語1つを取り上げて、1つのエッセイを書きます。こちらのマガジンに収録していきます。
数学的な話題はこちらのマガジンに収録していきます。
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