見出し画像

読書感想文 | 中島義道(著)「晩年のカント」講談社現代新書より

 二年前に購入した、中島義道(著)「晩年のカント」を再読・拾い読みした。
 この新書の第8章は「老衰そして死」。
 孫引きになるが、カントの『人間学』に次のような文章があるという。


ところで、自分の一生の大部分を通じて退屈に苦しみ、したがって毎日が長くなった人間が、しかも人生の終わりに至って生の短きを歎くという現象は、何と説明したらよいであろうか?
・・・・・・
そして、計画に従って進行し所期の大いなる目的を達成する仕事によって、時間を充実させるということ(いろいろな仕事によって生を延ばすことvitam extendere factis)は、自分の人生を楽しくし、同時にしかしまた人生に飽きるようにもする唯一確実な手段である。「君が考えたことが多ければ多いほど、君がなしたことが多ければ多いほど、それだけ長く君は(君自身の想像においても)生きたことになる」
⎯⎯ このようにして人生を終えることは、いまや満足をもってなされることである。

(前掲新書、pp.214--215) 


また、これと関連してカントは『倫理学講義』で次のように論じている。


何も為すべき仕事をもたない人びとには、どんな時間でも随分長く感じられるが、回想すれば、その長かった時間もどこに在ったかわからないほど短く思われてくる。しかし仕事に忙しい人には、これが逆に感ぜられる。彼にとってはどんな時間も非常に短く、仕事中には時間のたつのがわからないで、いつもあまりにも速く時間がたつのに驚かされてしまうが、ふり返ってみるとこの時間中にどれだけ多くの仕事をしたかに気づくのである。

(前掲新書、p216)


 むずかしいカントの哲学だが、ここに書かれていることは、日頃誰でも感じることではないだろうか。私の実感とも合致している。

 新天地へ赴く。慣れ親しんだところと違い、あれやこれやと忙しく、時間が飛ぶように過ぎていく。4月は、新しい職場や学校で、奮闘している人も多いだろう。忙しいかもしれないが、しかし、たぶんそれは充実した生活をおくっているからだろう。

 また、忙しく一生懸命働いているとき、その仕事をしている最中はとても時間が短く感じられる。しかし、週末あるいは年末になって回想するとき、「今年(今週)は長かったなあ、充実していたなぁ」と思う。

 逆に仕事らしい仕事がなく、ぼーっとしている最中は時間が長く感じられるが、回想するとき、「今年は短かったなぁ。なんもしなかったなぁ」と思う。

 忙しいにしろ、そうでないにしろ、その時の時間の長さを実感するのは「あとになって」「回想するとき」である。


 えっ?私ですか?
 仕事しているときは、とても時間が「長く」感じます。そして、休みの日はとても時間が「短く」感じます。ということは・・・・・・。

 あなたはどうだろうか? 



#カント    #晩年のカント
#哲学     #中島義道
#講談社現代新書
#読書感想文 #時間の感じ方
#学問への愛を語ろう
#心理学

記事を読んで頂き、ありがとうございます。お気持ちにお応えられるように、つとめて参ります。今後ともよろしくお願いいたします