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英文法 | 中動態について

目次
(1)「中動態」とは?
(2)「中動態」的な文法事項
 ①「能動受動態」(activo-passive)
    ②「再帰代名詞」を伴う動詞
 ③いわゆる「無生物主語の構文」
結び

(1)「中動態」とは?

 先日、「中動態」について記事を書いた。前回の記事では、中動態という概念を使って哲学してみたが、今回の記事では、「中動態」という視点で、英文法を考えてみたい。

 簡単におさらいしておく。
 英語には「態」( voice )という文法カテゴリーがある。能動態( active voice)と受動態( passive voice )という「態」である。能動態は「主語が~する」、受動態は「主語が~される」。

 能動態と受動態の真ん中の「態」を「中動態」という。現在の標準的な英文法の教科書には「中動態」という言葉は載っていない。しかし、「中動態的」な文法が残っている。

(2)「中動態」的な文法事項

①「能動受動態」
    (activo-passive)

「能動受動態」とは、能動態の形式で、受動の意味関係を表す構文のことである。たいていの場合、副詞または形容詞(相当語句)を伴うことが多い。

たとえば、

This book sells well.
(この本はよく売れる)

The cheese cuts easily.
(そのチーズは簡単に切れる)

Silk feels smooth.
(シルクはなめらかな手触りだ)

これら3つの文の主語は、いずれも「モノ」だから、意志を持っているものではないが、外見上、「能動態」である。

しかし、意味的には

「この本は(人間によって)よく売られている」

「このチーズは(人間によって)よく切られる」

「シルクは(人間が触ると)なめらかに感じられる」

のように、受動的である。
形式上、「能動態」だが、意味的には「受動態」だから、「中動態」的と言えるだろう。

②「再帰代名詞」を伴う動詞

I enjoyed myself.
直訳すれば「私は私自身を楽しませた」

*普通、次のような言い方はしないが
再帰代名詞がないならば、
I was enjoyed.と「態」を変えるべきところである。

He devotes himself to studying
English.
直訳すれば
「彼は自分自身を英語の勉強に捧げている」
この文は「受動態」を使って
He is devoted to studying English.とも言える。
直訳すれば
「彼は英語を勉強することに捧げられている」

このように、「再帰代名詞」を使うと、外見上、「能動態」だが、意味的には「受動態」である。
「自分が~する」と言えるところを
「自分が自分自身を~する」と表現することによって、「受動態」と似た意味合いになっている。
よって、再帰代名詞を使った「能動態」の構文は「中動態」的だと言えそうだ。

③いわゆる「無生物主語の構文」

これは「おまけ」として書いておきたいと思ったこと。日本語では、比喩表現以外では、次のような無生物主語の構文は用いない。

Illness prevented me from going 
out.
直訳すれば、
「病気は私が学校に行くことを妨げた」
病気が原因だが、学校に行かなかったのは、「私の意志」のはずである。
しかし、「病気」を主語に立てると、私の意志が希薄となり、「病気」に学校に行くことをひき止め「られた」ように響く。

Nothing pleases him.
直訳すれば
「無いもの」が彼を喜ばせる。
喜ぶか喜ばないかは、彼の意志のはずだが、「nothing」が主語だと彼の意志が希薄に響くような気がする。

③は文献に載っていたことではない。私が思ったことを書いた。「無生物主語」の構文には、人間の強い「能動性」が感じられず、「受け身」な感じがしたので、「中動態」的だと思った。

結び

強い能動性がなく、かと言って完全に「受動的」でもない「中動態」。

「能動態」と「受動態」という2つの「態」では思い付かなかった切り口を「中動態」という概念が与えてくれた。

英語を学ぶにも、他の言語を少しかじってみると、違った角度から英語を「学び直す」ことができそうで、面白いと思った。

新しい「概念装置」を手に入れること。それは「中動態」という概念に限ったことではない。
さまざまな概念を手に入れ、今までとは異なった切り口で語れることを増やしていきたい。








 
 

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