読書 |「英語の発想」 あなたならどう和訳する?
安西徹雄(著)「英語の発想」(ちくま学芸文庫)を再読しました。拾い読みですけどね。
安西徹雄さんはシェイクスピアの研究や演劇の演出などで活躍された方です。
「英語の発想」の中で、コンラート・ローレンツ『ソロモンの指輪』の一節が取り上げられています。
In the study of the behavior of the higher animals, very funny situations are apt to arise, but it is inevitably the observer, and not the animal, that plays the comical part.
(Konrad Lorenz, King Solomon's Rings, Eng. trans. M.K.Wilson)
安西、前掲書(p16)
安西先生は、この一節の「直訳」と「意訳」を次のように書いています。
(直訳)
「高等動物の行動の研究において、非常に滑稽な情況が起こりがちだが、しかし喜劇的な役を演じるのは、不可避的に観察者であって動物ではない」
(意訳)
「高等動物の行動を研究していると、非常に滑稽な場面によく出くわすが、そんな時、きまって道化役を演じるのは、実は動物ではなく、むしろ観察しているわれわれ人間のほうなのである」
安西、前掲書pp.24-25
どちらも正確な訳ですが、どちらが読みやすいでしょうか?
一般的に言うと、英語が「名詞」を中心とした構文であるのに対して、日本語は「動詞」を中心とした構文です。
英語で使われている名詞をそのまま日本語に訳そうとすると、「AのBの中で」のように「誰が何をするのか」ということが不明確になりがち。だから、「BをAする時には」のように訳すと、日本語として自然に聞こえる場合が多いです。
安西先生の翻訳にも考え方にも特に異論も反論もないのですが、私ならこんなふうに訳します。
(拙訳 [ 山根あきら(訳) ] )
「高等動物がどのように行動するのかを研究していると、とても面白いと感じることが多いのです。けれども、滑稽な役を演じるのは、観察される動物たちではなく、観察している私たち人間であるのが常なんですけどね」
おそらく、英語試験の答案を書くならば、私は安西先生の直訳のような和訳をするでしょう。
採点者(先生)は、答案を書いた人(生徒)が、英語の構文をしっかり捉えられているかどうかに重きをおくからです。
いま挙げたローレンツの英文ならば、「A, not B」(BではなくA)という熟語表現と、「It is…that~」が強調構文であることを見抜けたかどうかがポイントです。
この2つのポイントを抑えていれば、他の箇所で多少まちがっていたとしても、10点満点ならば、6点以上をあげてもいいかな?
ここで、この記事を終わらせても良いのですが、逆に「次の日本語を英語に直しなさい!」という問題が出されたら、直訳調の日本語のほうが英語に直しやすいかな?、とも思っています。
一般的には意訳のほうがよいのですが、元の英文を想起しやすいのは、直訳だったりします。
ところで、意訳された日本語から英作文するならば、私は次のような英文を書くでしょう。
When we study the behavior of the higher animals, we will be sure to find it very funny, however, actually it is not they but we that always play a comical part.
今回は「英語の発想」を取り上げましたが、安西先生の著書は、何度読んでも考えることが多いです。
ちくま学芸文庫に入っている、「英文翻訳術」と「英文読解術」もオススメです。
私がこれらの安西先生の英語三部作を
はじめて読んでから、けっこうな時間が経っていますが、いまだに時折読み返しています。大袈裟に言えば、私のバイブル的な地位を占めています。たまにしか読み返しませんけどね。
「英語三部作」だから、英語に関する話題が中心なのですが、日本語の文章を書く上で、とても役だっています。
英語に関心がない方でも、日本語を見直すきっかけになったり、日本語で文章を書くトレーニングにもなるのではないか、と思っています。
毎回、私が安西先生の著書を読むときは、いろいろ考えながらゆっくり読んでいます。拾い読みするだけでも、なんか賢くなっている気持ちになるんです。実際に賢くなっているかどうかは分かりませんけどね😊。
日本語で文章をつづる時にも、「これって英語になるかな?」ということは常に念頭にあります。
もちろん、私の母語は日本語ですから、日本語では表現できても、すぐにその日本語に相当する英語が思い浮かばないことは多々あります。けれども、日本語の曖昧さゆえに英語に直せないような日本語では文章を書かないように気につけています。
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記事を読んで頂き、ありがとうございます。お気持ちにお応えられるように、つとめて参ります。今後ともよろしくお願いいたします