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連載小説「お弁当屋の笑子さん」 第五話

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第五話 こころ優しき隣人たち


おかあさんと いつもの こうえんに いったら
ベンチに みたことのある おにいさんが すわってた。
しらないひとには こえをかけちゃいけないって
ようちえんのせんせいも
おかあさんも
しょーこおねえちゃんも
かずえばぁばも
みんないってたけど
しってるひとだったら いいよね?

「おはよーございます!」

あたしがおおきなこえでいうと おにいさんは びっくりしたかおで あたしをみた。

「へっ? ……え、と。誰……かな?」

しつれいな! この みめうるわしゅう れでぃをわすれるとは!

あたしは こしに てをやって
はなからいきをはきながら こたえた。

「しょーこおねえちゃんの じょーれんきゃく! ねむちゃんだっ!」
「えっ⁉ ……あぁ、アレルギーのね……」
「あれるぎー かんけいない! ねむちゃんだっ!」
「ねむちゃん。……おはようございます」

あいさつを かえしてくれたので ほっとした。
あいさつしないのは、ワル。
おにいさんは ワルなひとでは ないみたい。
それに ちょっとていねいにおへんじしてくれた。
こどもにも ていねいにへんじをするおとなは いいひと!

さて あたしのこみゅにけーしょんのうりょくで ききだした
かなしそうな このおにいさんが
なんで こうえんのベンチに すわっているかというと
しょーこおねえちゃんのおみせが おやすみだったからだそうだ。

「こうそげんまい、パワーぶそく?」
「うーん、まぁ、たべられると思ってたのしみにしてたからね……」

おにいさん めっちゃがっかりしてる。

「なんで、おやすみだった?」

あたしがきくと たいちょーふりょーで りんじきゅうぎょう らしい。
このあいだの おかあさんがぐあいわるいのを おもいだした。

しょーこおねえちゃんの こうそげんまいがないと みんな しょんぼり。
おにいさんも しょんぼり。
あたしも それをみて しょんぼり。

あ、むこうから おかあさんがやってきた。

「すみません……うちの子がいきなり……。ねぇ、ねむちゃん、向こうで遊びましょ!」

しらないひとに はなしかけちゃったと おもったんだろうか。
あたしはあわてていった。

「あ! お、おかあさん、このおにいさん、パワーぶそくなんだって!」
「何ですって⁉ パワー不足⁉」

いいせつめいだとおもったのに おにいさんはちいさいこえで

「余計、不審者みたいになっちゃうよ……」

といっていた。
なんだか よくなかったのか。

かくかくしかじか。

おにいさんのなまえは せいた らしい。
しょーこおねえちゃんの じょーれん、というと おかあさんが あんしんしたようなかおになった きがした。

笑子しょうこさん、風邪かしら」
「店の入り口には『体調不良で』と書いてありましたけど……」
「珍しいですね……。でも、笑子さん、いつもお店をされているから、無理がたたってもおかしくないですものね」

そうなのだ。こうそや は ねんじゅうむきゅう。ずっと こうそげんまいを つくりつづけないといけないんだって、しょーこおねえちゃんは いつもいっていた。

「おみまい!」

あたしは てをあげて せんげんした。
ぐあいがわるいひとには おみまいをするんだと こないだ テレビアニメでやっていた!

「え? お見舞い……。どうしましょう、ご迷惑かしら……」

おかあさんが それにおうちがわからないわ といった。
せいたおにいちゃんが ちいさなこえで いった。

「おれ……、あ、僕……笑子さんと同じアパートでして、隣の部屋に住んでいるんですよね……」

なんと、せいたは ごきんじょだった!

      ***

ということで、ひとりでつらいめにあっているであろう しょーこおねえちゃんに みんなで おみまいにいくことになった。かずえばぁばも さそって いっしょに スーパーで おみまいのプレゼントをかって のみものとかもかって せいたおにいちゃんのあんないで しょーこおねえちゃんの いえまであるいていった。

「♪ ピンポーン……」

ちょっとまってから 「はい……」と がらがらのこえがきこえた。
「しょーこおねえちゃーん!」
「えっ? ね、ねむちゃん⁉」

しばらくして ドアがあいた。しょーこおねえちゃんが あかいかおをして マスクをして たっていた。やっぱりぐあいがわるかったんだ。

「ねむちゃん……お母さん……そして、誠太せいたさん……」

したからじゅんばんに しょーこおねえちゃんが みんなをみて いった。

「おみまい! いつもありが」

みんなをだいひょうして あたしが プレゼントをわたした。
せいたおにいちゃんが ちいさなかみを しょーこおねえちゃんにわたすと しょーこおねえちゃんが てでかおをはんぶんかくして おれいをいって ペコペコと なんかいもおじぎをしてた。

あたしたちは ただ げんきをだしてほしいだけだったのに
ほんのちょびっとでも げんきになってほしいだけだったのに
ないちゃったのかな とおもった。

だって こえが ちょっとふるえていたきがしたの。


それからすうじつたって
こうそやは またいつもみたいに おべんとうをうりはじめた。

しょーこおねえちゃんのこえは ちょっとガラガラだったけど
しばらくたって もとにもどって
あたしは おれいにって こめこのクッキーをもらって
とってもとっても うれしくなっちゃった。

おみせをずっとつづけるのって たいへんなんだ。

そういったら
かずえばぁばも おかあさんも せいたおにいちゃんも
みんな たいへんなんだよって いって
みんなでしょーこおねえちゃんを たおれないようにしようねって
ささえてあげようねって いってた。

そのかおがやさしくて やわらかくて
あたしは あぁ、あったかいなぁって またうれしくなっちゃった。



(つづく)


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