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読書感想文〜澤口俊之著『発達障害の改善と予防 家庭ですべきこと、してはいけないこと』〜
澤口俊之氏の著書『発達障害の改善と予防 家庭ですべきこと、してはいけないこと』を読んでの感想と学びをお伝えします。
この本では、発達障がいの「支援」ではなく「改善」に重点を置いた方法が論じられており、非常に興味深い内容になっています。多くの場合、発達障がい児には環境調整やサポートがメインで語られることが多い中、この視点は新鮮で、目を引かれました。
特に印象的だったのは、「発達障害ではない子どもでも、科学的根拠に欠けた幼児教育が原因で、発達障害的な症状(脳の歪み)が現れることがある」という指摘です。世の中には、子どもの知能発達を謳う早期教育プログラムが多く出回っており、テレビや雑誌でも紹介され、一見すると信頼できそうに見えるものも少なくありません。しかし、澤口氏は、以下のように述べております。
脳の発達段階に即していない「教育」は、「無理な使い方」や「不適切な使い方」を脳に強制させることになります。そのせいで、脳の健常な発達が阻害され、脳が歪んでしまいます。つまり、脳機能の発達の程度に大きな凸凹ができてしまいます。その結果、発達障害が「作られる」という事態になりかねないのです。
このように、本書では非科学的な早期英才教育を鋭く批評し、警鐘を鳴らしています。
「我が子のために」と熱心に取り組んできた幼児教育が、実は脳に悪影響を及ぼしているかもしれない…そう考えると、親としてこれほど恐ろしいことはありません。本書には、どのような行為が脳の機能を低下させ、脳の歪みを引き起こす可能性があるかも詳しく書かれていました。
実は私自身も、その一部の英才教育教材として取り上げられている数字のフラッシュカードを使用していたことがあり、この本を読み進めるうちに青ざめました。「私があんな教材に手を出さなければよかったのでは…」と愕然とし、後悔せずにはいられませんでした。(かなり高額な教材だったうえに、効果も感じられず、本人も飽きて途中でやめてしまったので、その当時は悔しい思いが募りましたが、今となっては、途中で辞めて逆に良かったと感じています。)
しかし、本書にはしっかりと「救い」も提示されていました。脳の歪みを改善し、脳機能を向上させる方法が具体的に紹介されています。
澤口氏は、IQに代わる新たな知能として、「HQ論」を提唱してします。
HQ(人間性知能)とは、脳の前頭葉の一部である前頭前野という領域が主に担っ ており、『目的・夢に向かって、社会の中で協調的に生きるための脳力』とされています。
発達障がいは脳機能障害であり、「HQ障害症候群」であるとされています。つまり、HQを向上させることで、発達障がい的症状も改善することが可能なのだそうです。
発達障がいのある子どもの脳機能(HQ)を改善する方法として、「ワーキングメモリー」を鍛えることが有効とされています。ワーキングメモリーとは、WISCを受けたことがある方ならご存じかもしれませんが、簡単に言えば「脳の作業台」です。意味のある情報を一時的に保持しながら適切に処理する能力のことで、脳の様々な認知機能に重要な役割を果たしています。
(↑ワーキングメモリーについてはこちらにも書かせていただいています。ご興味のある方は是非!!)
ワーキングメモリーは、前述した脳の「前頭前野」の機能と深く関わっているそうです。前頭前野は「脳の司令塔」のような役割を担い、思考や行動をコントロールする実行機能の中心となる部位です。そのため、ワーキングメモリーを鍛えることで脳全体の機能が向上(HQが向上)する可能性があると記述されてます。
例えるなら、スポーツチームにどれだけ優秀な選手が揃っていても、采配が上手な監督がいなければ試合には勝てないのと同じです。
つまり、
監督=前頭前野
◎ワーキングメモリーを鍛える
→ 前頭前野の機能を高める(=監督の力量が上がる)
→ 脳の他の機能も幅広く向上する(=チームの他の選手も力を発揮できるようになる)
こうした「汎化効果」によって、HQが向上し地頭が良くなり、発達障がいの改善にもつながると考えられています。
発達障がいのある子どものワーキングメモリーを鍛える方法がいくつか紹介されていますが、どれも日常生活や遊びに取り入れられるものばかりです。とはいえ、それを毎日続けるには、親の確固たる愛情と根気が不可欠です。正直、記載されている方法を簡単に続けられるようであれば、私もこの本を手にしていなかったかもしれません。
それでも、澤口氏が「発達障がいは根本的に改善できる」と述べている点には、とても勇気をもらいました。この言葉は、今までの発達障がいに関する常識を覆すものであり、また多くの実験データと脳科学のエビデンスに裏付けられています。そのため、非常に説得力を感じました。
ただ一つ残念だったのは、「発達障がいの改善には4〜6歳頃の就学前が適している」との記述です。私がこの本に出会った時、長男はすでに7歳でした。しかし、前頭前野は他の部位に比べて発達が遅く、20歳近くまでゆっくり成長すると言われており、「未就学児ほど効果が顕著でなくても、きっと良い方向に向かう」と信じて、できることをやってみようと思っています。
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澤口氏は、ASDやADHDに「発達障がい」という呼称は不適切であり、「異能児」あるいは「天才児」と呼んでも良いほどだと述べています。これらの子どもたちは、自然から授かった特別な脳機能を持つと考えられるからだそうです。精神医学では社会への適応が難しいことから「障がい児」とされていますが、脳科学の観点では、この脳の個性を活かしながら社会に適応できるよう脳機能を改善していくことが目標とされています。
本書には一人でも多くの子どもたちを救いたいという澤口氏の熱い想いが詰まっており、発達障がい児をもつ母親として、とても勇気づけられる内容でした。この本を通じて、発達障害の「改善」を目指す視点や、教育の選び方、日常生活での関わり方について改めて考えるきっかけを得られました。
🍀おわりに
ここまで読んでくださり、ありがとうございました!
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