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限りある時間の使い方

タイムマネジメントに係る書籍で、巷に溢れている生産性向上のスキル本とは視点が異なり、ユニークかつ芯を食った一冊。
忙しい方ほど、一読の価値があると思います。

◼︎本書の論旨

時間は自分のものではないし、自由に使うこともできないという現実を、我々は受け入れるべき。
逆に時間をコントロールしようと思うと、時間のなさにストレスを感じてしまう。

そもそも、時間を「ある」「なし」で捉えること自体がおかしい。
やれることはやる、やれないことはやらない。
それだけのことであり、「もっとやれ、全部やれ」という内なる声は無視して良い。

やるべきことはいつだって多すぎるし、この先も変わらない。
全部できるという幻想は手放し、一握りのことだけに集中すべき。

◼︎優先度「中」は捨てる

人生でやりたいことのトップ25をリフトアップし、それを重要なものから並べる。
上位5つに時間を使い、残りの20個はやらない。

優先度が中くらいのタスクは邪魔になるだけ。
人生の中でさほど重要ではないが、重要なことから目を逸らすくらいの魅力がある。
やりたいらことを全部追い求めると、どれも中途半端に終わる。

◼︎重要な活動ほど退屈に感じる理由

ものすごく重要でやりたいと思っていた活動が、なぜか急に退屈に感じられて集中できなくなる。
この不可解な現象の答えは、私たちの「有限性」にある。

私たちが気晴らしに屈するのは、自分の有限性に直面することを避けるためである。
つまり、時間が限られているという現実や、限られた時間をコントロールできないという不安を、できるだけ見ないようにしているのである。

重要なこと、思い入れが強いからこそ、完璧にできないことがもどかしくなる。
そうした現実なら逃れたいという欲求が、退屈な感情を内発する。

◼︎退屈や苦痛を否定せず、そのまま見つめる

禅の教えによると、人の苦しみは全て、現実を認めたくないという気持ちから生じるのだという。
「こんなはずではなかった」「思い通りに行かない」と言う気持ちこそが、苦しみの根源。

◼︎未来志向の姿勢は「いつかこれが終わったら」という考えになりやすい

こうした考え方をしていると、いつまで経っても満たされることはない。
なぜなら、現在を永遠に先延ばしにする考え方だから。

例え、仕事が落ち着いても、素敵な人に出会っても、その時にまた充実感を先延ばしにするための別の理由を見つけてしまう。

◼︎父親になって、自分がどれほど未来のために現在を犠牲にしてきたか気付いた

息子はただ純粋に、そこに存在している。
その瞬間を懸命に生きている。
そこに参加したいと思った。

行き過ぎた英才教育は、将来息子が最善の結果を得るために、今の時間を利用しようという考えだ。
将来に不安を感じなくても良いように、息子にあれこれやらせて、心の平穏を得ようとしているのだ。

◼︎「今を生きよう」という姿勢も、未来志向と変わらない

「今を生きよう」と考える時、我々は自分を「今」から切り離した上で、今をうまく生きられているかを判断しようとしている。
つまりこれもまた、時間を何かしらの目的に従わせようとする道具化のアプローチだ。

◼︎非目標性の活動の重要性

つまり趣味のこと。
その道のエキスパートになろうとするより、誰にも褒められない活動をする方が、結果を気にしなくて済む。
無益なことをする自由、下手くそを楽しむ自由は、心が洗われる。

◼︎ほんの少しを毎日続ける

成果を焦らない。
1日の成果が少なくても、毎日取り組めば長期的に大きな成果が出る。
大事なことは、1日に割り当てた時間に達したら、すぐ手を止めること。ペースを守ること。

もう少しだけやりたいという欲望は、生産性が上がらないことへの焦りを反映している。

◼︎戦略的失敗

失敗を避けることはできない。
大事なのは、戦略的に失敗すること。
人生のどの側面で失敗を許容するか、予め決めておく。
そうすれば、エネルギーを効率的に使えるし、恥ずかしくもない。
敢えてバランスを崩すことを受け入れる生き方をする。

◼︎何もしない瞑想

時間をコントロールしようとしない、現実逃避をしないための訓練。
5分でも10分でも良い。
何もしない。
考えごともしないし、呼吸に集中もしない。
何かしている気がついたら、落ち着いてそれを止める。
そうやって、タイマーが鳴るまでただ座る。

何もしないをできる人は、自分の時間を自分のために使える人。

◼︎最後に

ただ受け入れるという、実は至極難題な時間の捉え方を説いた書籍。
忙しく駆け回り、スマホやSNSに侵される今を生きる私たちにとって、気づきの多い一冊であると思います。

原文は英語で翻訳されているのですが、そのセンスの良さも際立っていました。

ぜひ読んでみては。

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