panipani_books

読書記録。「真夜中の読書会〜おしゃべりな図書室〜 」からの選書おおめ。原田マハさん、千早茜さん、島本理生さんおおめ。ゆるゆると記録していきます。ネタばれは極力しないように気を付けます。

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最近の記事

#50 世界でいちばん透きとおった物語 | 杉井 光

電子書籍化不可能!とうたわれ話題になっていた本。 最後まで読んで、その意味と、タイトルの意味がわかって、 そういうことかー!!!! と大納得。 確かにこれは電子書籍では味わえない驚きがある。。。 本が芸術作品のようで。 制作に関わった人たちの労力が感じられた。 本を読みながら、現実と物語の世界が交差してくるような少し不思議な感覚にもなる。 いろんな意味で新しい小説の形だと感じた。

    • #49 夜の向こうの蛹たち | 近藤 史恵

      才能があるけど容姿にコンプレックスがある初芝と 初芝の才能に寄生している咲子と、 完璧な関係であるようで、実は細い糸でつながっているような、はらはらして、胃がきりきりとするような、そんないびつな関係だった。 「いつだって、自分のことがいちばんよくわからないのだ。」 最後の一言が本当に、この本を表しているようだった。 自分らしく、自由に、何を選択してもいい、と決めた二人の決意と、それに悟った妙のすがすがしさが気持ちいい。

      • #48 悪い女 藤堂玲花、仮面の日々 | 吉川 英梨

        登場人物たちは全員、愛してもらえなかった人たち。 愛されるべき人に愛されなかったという想いは、確実に残り続けて、様々な負として影響を及ぼす。 それがみるみるうちに負の連鎖となり、大きな問題や事件となってしまった。 欲に狂った人々の、恐ろしいほどの依存から生まれる崩壊。 常識とか非常識とかそういうものでは整理できない、彼らの歪んだ世界。 でも、確実に、その負の連鎖が止められたポイントがあるのがわかった。 それが見えて、この物語に光が見えたような気がした。 いい終わり方ではないし

        • #47 六人の嘘つきな大学生 | 浅倉 秋成

          大学生の頃、初めて企業説明会に参加したとき。 みんな同じスーツを着て、みんな同じ髪型をして、みんな同じ顔に見えて、 背筋をまっすぐに伸ばして、質問をするために手をびしっとあげて その光景を目にしたその日に「私には無理だ…」と私は就活を諦めました。 当時の自分には本当に無理だった。できなかった…。 それも自分の「傲慢」だったと今は思います。 人について語られるとき、どうしても一つの側面しか切り取られない。 話し手の主観によって切り取られたそれによって、「いい人」とか「悪い人」

          #46 マリエ|千早 茜

          大好きな千早茜さんの新作! 千早さんのX(Twitter)を見過ぎているせいか、よくXに出てくる食べ物やワイン、服装や部屋の雰囲気など私がXから覗き見る千早さんの生活が、まりえのそれと重なって、まるで千早さんの私生活を読んでいるかのよう感覚だった。 まりえが始めから 「私の幸も不幸も、私が決める。そう、決めた。」 と言っているように、私自身が、みんなが、そうあってほしいと思う。 自分で決めていいものであって、誰かに善し悪しを決められていいものでは決してないということ。 私た

          #46 マリエ|千早 茜

          #45 書きたい生活|僕のマリ

          「常識のない喫茶店」の続編。 実は、こちらの「書きたい生活」のほうを先に読んでしまったので、マリさんはとても繊細で弱くて、、、というイメージをしていたら、「常識のない喫茶店」のほうで、バンバン客を出禁にしていたので最初はそのギャップに驚いた… 今作は、喫茶店を卒業した後に、女性として悩んだり、書くことや生活のことなどが綴られたエッセイ。 前作とはちがって、喫茶店で働くマリさんとは違う、人間としてのマリさんを見ることができた。 日々のひとつひとつをちゃんと整理している感じ。「

          #45 書きたい生活|僕のマリ

          #44 常識のない喫茶店|僕のマリ

          どんなヤバ客、珍客が来るのだろう?とワクワクしながらページをめくった。 あだ名の付け方や形容詞が絶妙!声を出して笑った。 接客をする人にとっては、あるあるの話で笑えて、そうでない人たちにとっては、「自分はこうであってはいけない」と姿勢を正すような、教訓となるような、そんな一冊。 お金を払っている、というだけで偉そうに、いまだに「神様」のように接する客。 店側はそれなりの対価を与えているので対等なはず。 いまだにいるんだよな、、、私は接客の仕事ではないけど、たまーに店員さんに

          #44 常識のない喫茶店|僕のマリ

          #43 マッチング!|加藤 千恵

          マッチングアプリに登録して、結婚相手を探そうとする30歳女性の話。 個人的には、出会いを求める男女にとって、こういうアプリの存在はとてもありがたいと思うし、合コンなどに行くよりもとても効率的とおもう。 ただ、琴美も感じているように、選ぶ・選ばれるの世界であるし、つながりが希薄でもあるので、簡単に繋がれて便利な一方で、簡単に切れるし、排除されることもある。 残酷な世界かもしれないけど、それでもここに賭けるしかない、と時間とエネルギーを費やす。 いちいちそう深刻に受け止めず、ライ

          #43 マッチング!|加藤 千恵

          #42 とりあえずウミガメのスープを仕込もう。|宮下 奈都

          暗い魔女の部屋でなんだかグロテスクなものたちがぐつぐつ煮込まれたシーンを想像してしまう目を引くタイトル。 ちょっとあやしさを感じる… しかし内容はそういうイメージとは全く異なって、著者の日常や思い出を、「食」をとおして、家族・生きることについてつづったエッセイでした。 宮下奈都さんが、本当に食を丁寧に扱っていることがよくわかります。 でも、毎日の食事の用意は、丁寧にばかりはやってられない…。 宮下さんも「1時間と決めて準備する」、とおっしゃっているようにいかに効率よくすませ

          #42 とりあえずウミガメのスープを仕込もう。|宮下 奈都

          #42 汝、星のごとく|凪良 ゆう

          自分の足でしっかり立って生きる それでやっと、生きている、という感覚を味わえる 「自分を縛る鎖は自分で選ぶ」 きっと、楽な道というものは絶対にない どの道を選んでも、辛くて苦しい思いはするはず でも、どの苦しみや試練を選ぶかは、自分で決めることができる 自分が何を良しとして、何を受け入れるか、受け入れないか それら全てをひっくるめて、降りかかるであろう困難を受け入れる それが、自分を生きる、ということなのだろう ただやってくるものをこなして、かわして、自分が選択していない痛み

          #42 汝、星のごとく|凪良 ゆう

          #41 赤い月の香り|千早 茜

          前作もそうだったが、この本を読んでいると、なんとなくひんやり、と冷たくてほの暗い場所にいるような感覚になる 人間の感覚器の中で、嗅覚はいちばん不思議なものだと感じさせられる物語 匂いや香りの感覚は鋭くて、しつこく記憶に残り続ける 確かに思い出す記憶は、匂いや香りと結びついているものが多い気が 匂いを感じることで、当時の場所や人の表情などがありありと再生される しっかりと記憶に結びつくその分、心がとらわれてしまうこともある 香りによって呼び出される記憶の奥底にいる、自分でもわか

          #41 赤い月の香り|千早 茜

          #40 全部ゆるせたらいいのに|一木 けい|

          アルコール依存症になってしまった人、その家族の悲惨さ、辛さ、痛さがリアル 家族だから見捨てられない、でも支えることももうできない 怒りと罪悪感が交互にやってくる 依存症となった父親の葛藤 淋しさが心の奥深くにあることが、とても痛い 本当は家族を愛している気持ちがあるのに、それを表現できない 「葛藤を乗り越える術を知らず、だから酒や本の中に迷い込む。」  程度はあれ、誰でもそういう逃げ方をしてしまうことがある 恋愛関係 食事 喫煙 ゲーム 現代にはたくさんの逃げ道がある 私た

          #40 全部ゆるせたらいいのに|一木 けい|

          #39 葉っぱ|銀色 夏生

          あの日、そうすることしかできなかったこと その時の僕にはそれ以外の方法が思い浮かばなかったこと 後悔するわけではないが、ずっと心に引っかかっていること 涙は心が痛んで出てくる 「君」が「痛み」そのものとなっている どうしようもなかったこと ふとしたときに思い出す 痛くて苦い、記憶 初めて詩集を手に取ってみた とても曖昧で短い言葉の繋がりだけど、たくさんの想像がうまれたり、過去に戻ったり、自分に問いかけたり 人によって心を打つフレーズが違ったり、思いだすことがあったり 同じ詩

          #39 葉っぱ|銀色 夏生

          #38 100回泣くこと|中村 航

          当たり前のように、そこにいつもあるものは、ない いつかは必ず離れていくものだということ やっぱりそういうものに心が苦しみを感じる こういう類の本を読んだ後に苦しくなるのは、それが頭ではわかっているけど、事実としてつきつけられるからか それなら、手にしない方がいい、と思うのはまっとうか でも、すでに前から始まっていたと思わせるような人と出会ったり、自分を100%で好きで、信頼してくれるような存在を得たりすること そういうことを経験することが、失うよりも何倍も幸せなこと そう思

          #38 100回泣くこと|中村 航

          #37 わたしたちは銀のフォークと薬を手にして|島本 理生

          誰かと食事や旅をする 焼き鳥を食べる 簡単そうで、誰とでもできることではない 一緒に暮らす 生きていく そういうことくらい、同じこと 大きくて、大切なこと 相手の体を大切に扱うこと、それ以上に自分の体を大切にすること 自分にとっても丁寧な暮らし、生きること もう少し、丁寧に、自分の内側と相談して、話し合いながら、考えることが必要なのかもしれない 少しの出来事が積み重なって、どんどん違う自分になっていく できれば良い方向に これまで湧きおこらなかった想いが浮かぶ 行動する 言

          #37 わたしたちは銀のフォークと薬を手にして|島本 理生

          #36 2020年の恋人たち|島本 理生

          「手に入れない方が傷つかずに自由でいられる」 この言葉に尽きる せっかく手に入れたと思ったものが手から離れていくときの感情は、まさに「浸水」 期待していたものが体から抜け落ちて、代わりに絶望、裏切り、負の感情が一気に体を満たす 人に触れる そのことで背負うこと、失うことがあるということ 幸福感さえも負ってしまうもの 出会い 別れ その度に自分にかえってきて、どうしてまた同じ苦しみを味わうために同じことを続けているのか、と問う またあの苦しみを味わうくらいくらいなら手に入れな

          #36 2020年の恋人たち|島本 理生