#42 とりあえずウミガメのスープを仕込もう。|宮下 奈都
暗い魔女の部屋でなんだかグロテスクなものたちがぐつぐつ煮込まれたシーンを想像してしまう目を引くタイトル。
ちょっとあやしさを感じる…
しかし内容はそういうイメージとは全く異なって、著者の日常や思い出を、「食」をとおして、家族・生きることについてつづったエッセイでした。
宮下奈都さんが、本当に食を丁寧に扱っていることがよくわかります。
でも、毎日の食事の用意は、丁寧にばかりはやってられない…。
宮下さんも「1時間と決めて準備する」、とおっしゃっているようにいかに効率よくすませるか、ということばかり考えてしまいます。
それでも食をとおして子供の成長を見守る視線や、家族や旦那さんとの思い出へ巡らせる気持ちなど、とても温かくゆったりと綴られていて、どのエピソードも読んでいてじんわりと、心が温かくなります。
特に「クリスマスの夜」のところでの娘さんとのエピソード。
たくさんの食事を並べたクリスマスの夜。
一生懸命仕事をがんばる宮下奈都さんにもプレゼントをあげてほしい、とサンタさんにお願いする娘さん。
その娘さんが生まれてきたことがもう一生分のプレゼントとなっているんだ、と娘を抱きしめた宮下さん。
宮下さんのお子さんたちはみなさんとてもすてきな感性をもっていて、とても個性的です。
これまで「食」とともに、様々な会話をしたり、経験を重ねてきたから、あたたかい家族をつくれたのかなぁと、私もそうありたいな、と、ほんわかと思わせてもらいました。