「黒影紳士」親愛なる切り裂きジャック様4〜大人の壁、突破編〜🎩第五章 9空
9 空
「なんかすみません、今回は。」
と、サダノブが見舞いに来た黒影に、事件の犯人を捕まえたと知って、そう申し訳なさそうに言う。
「気にするな。その代わり、早く元気になってもらわないと、報告書の山でクリスマスには僕がそこで寝る羽目になる。」
と、窓の外から視線をサダノブに下ろし、言うと微笑んだ。
「最近、良く空を見ますね。そろそろホームシックですか?」
と、サダノブは笑った。
「まぁなぁ。日本の治安が気になる。あっちは能力者に対応出来る所が少ない。」
と、黒影は答える。
「……違いますよぉ〜。もっと、寿司とか味噌汁が恋しいとか、そう言う話が先輩の口から出ないのかなぁ〜って。」
と、サダノブは意図が違うと、説明する。
「まだイギリスの美味い物をそんなに見つけていない。急な海外からの依頼の為に、知っておきたい。」
と、黒影が言うのでサダノブは溜め息を吐いた。
「事件、探偵社の事ばかり。……違う話とか無いんですかぁ?」
と、サダノブはずっと仕事モードが取れない黒影を気にしてそう言う。
サダノブが居ない分、しっかりしないととは思っているのは事実だ。
「……じゃあ、事件の話、好きなだけ話して下さいよ。そうしたら、気も抜けて仕事モードじゃなくなるでしょう?」
と、サダノブは提案した。
「ダリアンは全部話してくれたよ。利き手を入れ替えた二件の事も、夫が興味を持ってくれなくて前妻を恨んでいた事も、自分だけが血が繋がっていないから次第に疎外感を感じて、血液を抜いて飲んだそうだ。注射の跡を刺し隠したのもな。
目撃者はやはりルナが寄越した偽物らしい。エリー夫人は今、指名手配で逃げている。……なぁ……。」
「はい。」
途中で話を切り、サダノブを読んだので、返事をして更に先を聞く。
「……何でこうも犯人は孤独が多いのだろうな。……大人数で暮らしていても、犯人だけが孤独を感じ、何かの行動にでる。孤独を感じなくなれば、人は犯罪を侵さなくなるのかなぁ?」
と、黒影は意見が聞きたいらしい。それは黒影が刑事時代に孤独を感じていたからだとサダノブには理解出来る。
「……先輩は大丈夫ですよ。途中で変わろうと思ったから。人から言われて変わるんじゃ駄目なんですよ。犯人自身が思えないと。だから憂いて空を眺めなくても良いんです。」
と、サダノブは言った。
「最近勝手に思考を読むな。やはり読む力が成長したからか?コントロール出来るように、暇な間に練習あるのみだな。」
と、黒影はサダノブに宿題を出す。
――――――――――――――――――――
見事なまでのホワイトクリスマスイブ。
真っ白な世界に包まれたが、家々の窓は明るく飾りが楽しませてくれる。
下は白い雪……上からは霧にも似た灰色の空から、真っ白な灰が舞い降りるようで、幻想的ながらも、刹那的にも感じる。
白雪は相変わらず雪が好きで、ボスボスと可愛らしいロングの編み上げブーツを雪に沈ませては遊んでいる。
「白雪ぃ――!」
白雪が夢中になっていたので、黒影は少し大きめの声で呼んだ。
「なぁに?黒影?」
と、ひょこひょこ小さなジャンプでパニエ入りの白いスカートを揺らして、黒影の前に辿り着く。
「……はい、クリスマスプレゼント。」
と、黒影は後ろに隠していた鞄程の箱と花束を渡す。
「有難う!あのね、私からはサダノブと一緒に作った珈琲のカップ&ソーサーがあるの。あれ割れてしまったでしょう?だから新しいの。……ねぇ、これ開けていい?」
と、白雪は箱の中身が気になる様だ。
「良いよ。」
と、黒影は満面の笑みで答える。
「まぁ……綺麗……。レースが素敵ね。」
と、白雪は箱の中の真っ白いロリータのジャンパードレスに感激している様だ。
レース選びからお願いした特注品である。
「やっぱり白雪は白がとても似合うからね。」
と、黒影はにっこり微笑む。
「ねぇ、見て♪」
と、言ったかと思うと白雪は跡の付いていない雪の方へ走っていき、パタリと倒れた。
「……えっ?……白雪、大丈夫かぁ?!」
と、黒影は白雪の方へ走った。
「ねぇ、びっくりしたー?私、白いから雪に混ざったら見えなくなるんじゃないかと思って」
と、白雪は笑う。
「…………見えないのは……嫌だよ。」
ふと、黒影は白雪を見下ろしていた笑顔をフッと消して、大切そうに抱き上げた。
「ほらやっぱり……。」
と、白雪が黒影を見上げて言う。
「……やっぱり?」
不思議そうに黒影が聞いた。
「キリが無いわねぇー、この事件。」
そう言って白雪は黒影から降りると雪の舞う空、いっぱいに手を広げ、
「不安定な一時的な足場……鸞(らん※息子)はフランスでお隣りなのになかなか会えない……。どんな名探偵でも落ち着く場所が無ければ走り出せないし、疲れるわ。……だから、黒影……。」
と、白雪はゆっくり回って言っていたのに、そこで急に話を止めて、黒影を見る。
「えっ?」
急に呼ばれてキョトンとした顔で黒影は、白雪を見た。
「この事件、私も参加するわっ!」
と、白雪はビシッと指を翳して言うのだ。
「……嘘……。」
黒影は久しぶり過ぎて、口が半開きになっている。
「えっ!……マジっすかぁー?」
と、少し遠くで穂と話していたサダノブにも、その宣言は大声だったので、聞こえて歩いて来た。
「当然よっ!……サダノブにはNOと言う権利はないですからねぇー。だって夢探偵社では、い、ち、お、う!私の方が先輩なんですからっ!」
と、白雪は一応を強調して、指先で点々と宙を差し言うのだ。
「先輩ぃ〜!白雪さんが既にパワハラしてくるぅ〜!」
と、サダノブは仔犬みたいに、黒影の後ろにさっさと隠れて、泣き言を言う。
「あら、素敵♪ママさん探偵ですねっ!」
と、穂も来て言うと、白雪と微笑んでいる。
「えっとお……僕はじゃあ、パパさん探偵?」
と、黒影は苦笑いをした。
「だって、聞いてよ黒影、知ってる?新しく創世神さん、連載始めたのよ。何だか主人公が武家の末裔で、霊能力と二刀流で事件を解決するライバル探偵よっ!うかうかしてられないじゃない。宣伝だって持ってかれているんだから!」
と、白雪は言うのだ。
「何だって!?……連載って……まだ終わってないのか!黒影紳士の世界にもならないじゃないかっ!……しかも宣伝までだとぉ……!!」
流石にそれには黒影もご立腹の様だ。
「おいっ!……どう言う事だっ!書いているんだろう?!降りて来いっ!」
……やばぃ……黒影が怒っている。
どっ、どうしようか。
取り敢えず、音声書き出しに切り替えてっと……。
何時もの服に着替えてっと……。
『←(創世新専用である。)おっ、お待たせ。なっ、何だろうなぁ〜?』
「お前なぁ!何年の中で僕らを裏切るつもりだっ!こっちの事件が解決していないのに、新しい事件だと!?巫山戯るなっ!」
と、黒影は今にも手袋を投げつけ、決闘でも挑みそうな勢いだ。
『……だってぇ……偶には他を書いてみるのも勉強の内だ。何れそれが黒影紳士に還元されるのなら良いだろう?』
と、僕(創世神視点で失礼する)は、如何にもな理由を述べたが、実は違う。
諸君、あんれー?珍しいと最近黒影紳士を探さなくては見つからなくなった事に気付いているだろうか。
読者様には真実を伝えねばならない。それが著者からの読者様に出来る誠実さと思っている。
今や無料で読める物語の戦国時代と言っても良いだろう。
出版氷河期が過ぎ、そんな中……生き残るのに必要な執筆法、連載がある。……が、僕は長く書いているのであまり動じてはいなかった。
今やその連載も増え過ぎた。また廃れるに違いないと。
だが、黒影紳士が今を取り敢えず擦り抜けるには、必要な手段だと自覚している。
本書蚊帳の外であってはならない。黒影紳士は黒影の記録であり、僕の人生だから記す。
この記録媒体が、とうとう連載重視に切り替わった。
そうじゃないから選んだのだが、諸君も気付いているね?
僕はその為にチャレンジとして、一週間で黒影紳士を仕上げようとした。
二週間に五万文字を一冊を、一週間に5万文字に……。
治りかけた腱鞘炎が悲鳴を上げてしまった。
当然の話だ。
せめてTOP検索からは消えない為だが、一週間でさえ僕の無力さ故に惨敗せざるを得ないようだ。
そして、入院中の人でも忙しい人でも体調や時間を自由に読める二週間に一回の中編のスタイルは、僕が欲するものだ。
毎日なんて読めないが新着が来たら疲れてしまう。ただ、暇な時はあるし、一気にでも少しでも読みたい自由な幅の理想が、僕は特に読むのが遅いので二週間であった。
黒影が生き残るのに必要なものは、それを変える事ではない。
重要なのは「存在を残す」事だ。
だから著者は無理を押してでも、他の連載をし、その人が書いている他の物語があると、その経由を探っている。
どの記録媒体も紙でさえ、「10年」をほぼ満たない。
その意味が分かるだろうか。
黒影が10年内に消えるのは必然と言う話しになってしまう。
だから僕が必要と判断すれば、残す為に移転すら辞さないだろう。
君と時空を超えたいんだ。
何時迄も。
それが……僕の切なる願いである。
着いて来てくれとまでは言わない。
ただ、ふと思い出す事があるならば、「黒影紳士」を検索して欲しい。
僕が書けれる限りは、この愛が何処かに更新され続けているだろう。
「……また誤魔化して。……不器用な生き方をする。……貴方は。」
と、黒影は帽子を深々被り言った。
……バレてしまったようだ。真実を追う者には、この僕でさえ敵わない。
僕は今……自分の手を見下ろしている。
右手に炎症止めの湿布と、ネットがボロボロである。
僕はこの両手を既に、season2が始まった時から捧げると誓った。
黒影を悲しませない方法が、今の僕には分からない。
迷い……疲れ……そんな時、やはり人は人に救われるものだ。
「宣伝どうぞ。いつか、必ず還元すると誓うなら。だから、白雪参戦でしょう?白雪なら追跡に長けている。確かに今、事件を早期解決するには必要だ。」
……そうか、僕は歩いていたのでは無い。
……黒影と、走っていたのだ。
どうしてこんな単純な事に気付かなかったんだ。
端折っている訳でも何でもない。
早期に事件を解決するならば、必要な物は何でも使う。
それが、「探偵」の底力ではないか。
大丈夫だ……諸君。……僕は……走れる。
『じゃあ、遠慮なく。樹海出禁探偵ー霊雅れいがーだ。黒影と真逆で出禁食らっているから樹海から出ないで事件を解決する。動かざる事山の如しだな。現代だから黒影と同じ世界だ。』
と、僕は黒影にも、今後の参考として分かりやすく説明した。
「……霊雅……か。日本に行けば会えるのか?」
と、黒影は聞いてきた。
『ああ、勿論。彼は樹海から出れないが、黒影ならば出入り出来る。』
と、黒影の質問に答えてやる。
「ふぅ〜ん。変わった奴だ。何れ会ってみよう。」
『ああ……W主演、助かるよ。有難う。……では、皆仲良くな。』
そう僕が別れを言うと、黒影は飛び去る僕に帽子を手に取り振りながら見送ってくれた。
――視点を黒影紳士に帰す――
「白雪は基本的には追跡と連絡ね。今回はギャングと謎の集団の長……切り裂きジャックが相手だ。それに卑劣な事に女性ばかりを狙う。僕は白雪が心配なんだ。
これだけ、女性ばかりのご遺体を毎日みていると、君が心配で……。」
と、黒影は手伝って欲しくても、モヤモヤしている胸の内を、心配と連呼した事にも気付かずに言った。
「また、心配で胃潰瘍になっちゃう?」
そのモヤモヤに気付いた白雪は、本当に自分の気持ちには鈍感だと、溜め息を吐いて、てっとり早く此れではないかと聞いた。
「……そう、それだ。」
と、黒影は心配事が解消した訳でもないのに、胸のつっかえが取れたかの様な顔をする。
「じゃあ、良いわね。」
と、白雪はにっこり笑った。
「あ、うん。」
と、黒影は良いように言わされたが、気にしない。
「サダノブさんが、白雪さんを責任持って守って下さいよ。じゃないと、黒影さんが気が気で無いんですからっ!」
と、穂がサダノブの背を押す物だがら、女性陣は可笑しそうに笑い、男性陣は苦笑いをするのであった。
――――――――――――――
「風柳さんは?」
黒影が庭先で皆んなで雪遊びしていたのに、姿が全然見えないので近くにいた筈の穂に聞いた。
「あの二人なら……彼方ですよ。雪見に一杯始めて、風柳さん……照れて白虎になってます。」
と、穂は微笑み指差した。
その先を見ると、イギリスだと言う事を忘れさせる様な景色があった。
……杯を持つ花魁姿の涼子の後ろ姿に、隣に寄り添う真っ白な大きな虎が絵になる。
涼子は虎に微笑み酒を呑ますと、白銀の雪の夜月を見上げていた。
――「何処に居ても、僕はただの探偵だな。」
そう言ったのに、黒影も微笑み月を見上げるのだ。
これからも……走らなければ。
誰よりも早く……時代を擦り抜けてみせよう。
―――取り敢えず「親愛なる切り裂きジャック様」黒影紳士大人の壁限界突破編 4幕 おわりー
で、す、が……こんなもので終わっては超大作だなんて名乗れません。
まだまだ、黒影紳士は続きます^^🎩🌹
🔸次の↓「黒影紳士」親愛なる切り裂きジャック様 五幕 第一章へ↓(此処からお急ぎ引っ越しの為、校正後日ゆっくりにつき、⚠️誤字脱字オンパレード注意報発令中ですが、この著者読み返さないで筆走らす癖が御座います。気の所為だと思って、面白い間違いなら笑って過ぎて下さい。皆んなそうします。そう言う微笑ましさで出来ている物語で御座います^ ^)
お賽銭箱と言う名の実は骸骨の手が出てくるびっくり箱。 著者の執筆の酒代か当てになる。若しくは珈琲代。 なんてなぁ〜要らないよ。大事なお金なんだ。自分の為に投資しなね。 今を良くする為、未来を良くする為に…てな。 如何してもなら、薔薇買って写メって皆で癒されるかな。