大月書店

1946年創業の社会科学出版社、大月書店の公式アカウントです。新刊の部分公開やweb限定の連載など、紙の本から一歩はみ出て読者の皆さんと出会える場を作れたら嬉しいです。

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  • メールマガジン「大月書店通信」

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  • 先生が先生になれない世の中で

    雑誌「クレスコ」に好評連載中の教育研究者・鈴木大裕さんの教育事情レポート。

  • あっと驚く刑務作業の世界

    家具や雑貨、文具にお茶――。全国各地の刑事施設のユニークな刑務作業を紹介するシリーズです。

  • 君も本棚を作ってみないか?(田野大輔)

    君も本棚を作ってみないか? 研究者のための本棚自作マニュアル 田野大輔(たの だいすけ)1970年生まれ。甲南大学文学部教授。専攻は歴史社会学。著書『ファシズムの教室――なぜ集団は暴走するのか』(大月書店)、『愛と欲望のナチズム』(講談社選書メチエ)、『魅惑する帝国――政治の美学化とナチズム』(名古屋大学出版会)ほか。

  • 大月書店×ジェンダー×多様性

    2021年夏から順次刊行するジェンダー・多様性に関連する新刊の情報をまとめます。

最近の記事

【大月書店通信】第189号(2024/10/31)

「大月書店通信」第189号をお届けします。 在日朝鮮人や在日コリアンによく向けられる言説に、「祖国へ帰れ」「出て行け」、少していねいな「お国にお帰りください」といったものがありますが、これらは「ヘイトスピーチ解消法」が定める「排除類型」ヘイトスピーチの典型例です。法務省もそう解説しています(こちらをご覧ください)。「帰れ」を「お帰りください」とていねいに言おうとも関係ありません。 ヘイトスピーチ類型のなかでも、「○○人は殺せ」などの「害悪告知類型」は脅迫罪(刑法)や平穏生

    • 先生が先生になれない世の中で(38) ~15 歳のT~

      T――僕にとって最も印象深い生徒の一人だ。比較的裕福なうちの学区において、Tのような複雑な家庭環境の子はめずらしい。わけあって親は近くにおらず、近所に祖父がいたものの、基本的には兄貴2人が親代わりをしていた。 Tは4人兄弟の3番目。兄貴らはうちの学校が千葉市で一番荒れていた時代の中心的人物として知られた「ワル」だった。社会に出てからは、何人もの部下を使う立派な塗装職人になったが、当時は地域の不良たちを束ねる存在だった。 Tはと言えば、体は小さいがキレると何をするかわからな

      • 先生が先生になれない世の中で(37) ~ずっとわからなかったこと~

        僕は教員時代、K先生に褒められたことがほとんどない。 その数少ない栄光の中に、初めて担任を任されたクラスの卒業式がある。教員1年目の僕は、2年生だったその学年の副担任だった。でも、年度途中に病休となった学年主任の先生の代わりに、急遽担任を受け持つことになったのだ。 当時は「団塊の世代」の一斉退職前で、教員の採用がほとんどなかった時代だ。僕は、アメリカの大学院を修了後、2年半かけて通信教育で教員免許を取得し、28歳で晴れて教員になった。そんな僕でも、教職員の中では久々の「若

        • 【大月書店通信】第188号(2024/9/30)

          「大月書店通信」第188号をお届けします。 山田洋次監督といえば、押しも押されもせぬ映画界の巨匠。1961年の初監督作品『二階の他人』から2023年の最新作『こんにちは、母さん』まで、90の監督作品があります。『男はつらいよ』シリーズはもちろん、『家族』『故郷』『同胞』や『幸福の黄色いハンカチ』といったシリアスな作品、『学校』シリーズ、『たそがれ清兵衛』『隠し剣 鬼の爪』『武士の一分』の時代劇、戦争を描いた『母べえ』『小さいおうち』『母と暮せば』などなど、日本中の観客を魅了

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          【大月書店通信】第187号(2024/8/30)

          「大月書店通信」第187号をお届けします。 8月24日、「高校生平和大使」(1998年に創設)が核兵器の廃絶を求める署名約9万6000人分を国連ヨーロッパ本部に届け、その報告会が開かれたというニュースがありました。「高校生1万人署名活動」は、長崎の高校生の発案で2001年から取り組まれ、現在では、全国19の拠点に広がっています。 24年を数えるこの署名活動も息の長い取り組みですが、核兵器と戦争のない世界を求める高校生たちの活動は、1974年に広島で開かれた「全国高校生平和

          【大月書店通信】第187号(2024/8/30)

          先生が先生になれない世の中で(36) ~人生を団体戦に~

          人は、誰も信じることなく、自分を信じることができるのだろうか? スポーツの試合で、「自分を信じて思いっきりやってこい!!」などと子どもを激励する監督を目にすることがある。ただ、それは子どもにとっては酷な言葉だ。まだ「自分」がない子にいくら自分を信じろと言ったところで、その子が急に自信を持てるはずがないし、自分の強さだけでなく、弱さも誰よりも知っているのだから。 ならば、子どもはどうすれば自信がつくのだろうか。 「信じることだ」 とK先生は言う。ただ、それは自分を信じるとい

          先生が先生になれない世の中で(36) ~人生を団体戦に~

          【大月書店通信】第186号(2024/7/31)

          「大月書店通信」第186号をお届けします。 4月の放送開始以来、話題沸騰のNHK朝ドラ『虎に翼』。本メルマガ読者にもハマった方が多いのではないでしょうか。 個性的な登場人物それぞれが抱えた背景が、女性の権利を制限した戦前の法律や家制度の因習とリンクして描かれるところが脚本の妙ですね。 「結婚って罠だよ!」まさか、NHKでこんな台詞を聞く日が来ようとは…。 今月の新刊『家族、この不条理な脚本』(キム・ジへ著、尹怡景訳)も、国は違えどよく似たテーマを扱っています。 結婚や出産

          【大月書店通信】第186号(2024/7/31)

          先生が先生になれない世の中で(35) ~だって先生わらってたから~

          Cが中学校女子個人日本一に輝いたことをふり返って、K先生はこんなことを言った。 「もし、団体で全中(全国中学校剣道大会)に出ていたら、あいつは、あそこまで自分の力を発揮することはできなかっただろう。」 後日、Cに直接話を聞いたら、驚くことに本人も同じことを言っていた。みんなと出ていたらきっと甘えが出ていた、と。ずっと一緒にやってきたチームメイトたちと、団体戦で全国大会に出るという目標は叶わなかった。それどころか、チームが負けたのは自分のせいだったと、今でも感じている。その

          先生が先生になれない世の中で(35) ~だって先生わらってたから~

          【大月書店通信】第185号(2024/6/28)

          「大月書店通信」第185号をお届けします。 一足飛びに夏が来てしまったような陽気ですね。 6月は1年で最も日の長い季節。今年は雨が少ないせいか、よけいに日の長さを感じます。昨年ソーラーパネルを載せた我が家では、日に日に発電量が伸びていくのがわかるので、ちょっと楽しみでもあります。 今月の新刊『市民エネルギーと地域主権――新潟「おらって」10年の挑戦』は、新潟で市民主体の再生可能エネルギー事業を育ててきた政治学者の佐々木寛さんが、その歩みの中での思索を綴った一冊。 佐々木さ

          【大月書店通信】第185号(2024/6/28)

          先生が先生になれない世の中で(34) ~不登校から日本一~

          K先生は、よく過激なことを言う。 幼少期から「天才卓球少女」としてテレビにも出演し、当時中学生だった福原愛を引き合いに出し、若い教員にこう尋ねるのだ。 「もし、卓球の福原愛ちゃんがおまえのクラスにいて、授業中に寝てたらどうする?」 「注意します!」と若手が威勢良く答えると、K先生は予想通りの答えに「あ~~」とガックリため息をつく。 何度このやりとりを見たことだろう。 K先生ならどうするのか。 「そのまま寝かせておく」と言う。 それに対してまわりの子が文句を言ったら?

          先生が先生になれない世の中で(34) ~不登校から日本一~

          先生が先生になれない世の中で(33) ~先生との出会い~

          「なんで教員になったの?」 その一言で僕の計画は音をたてて崩れおちた。 2002年3月末の日曜日、自分が4月から赴任することになっていた千葉市の中学校を訪れた日。ひと気のない学校を案内してくれていた校長から紹介されたのが、K先生だった。「うちの剣道キチガイに会ったほうがいい」、と。 いま思えば、日曜日だったから他に紹介できる職員がいなかっただけのことだ。 K先生はポロシャツに短パン姿、そして裸足。後でわかったことだが、歳は僕のちょうど10上だった。最初にどんな言葉を交

          先生が先生になれない世の中で(33) ~先生との出会い~

          【大月書店通信】第184号(2024/5/30)

          「大月書店通信」第184号をお届けします。 ロシアのウクライナ侵攻から、すでに2年以上。この間、なぜこの戦争が引き起こされたのか、ウクライナとはどのような国か、プーチンの戦争をどう見るべきかなど、多くの書物が出されてきました。 戦争はじめ大きな事件が起きると、その真相を知りたい・伝えたいと思い、本が編まれ、多くの読者の「新たな知」が形成されていきます。ただ、そこで「メジャー」となった言説には、注意も必要です。 ウクライナ史の研究者である東京大学教授・松里公孝氏は、「戦争開

          【大月書店通信】第184号(2024/5/30)

          【大月書店通信】第183号(2024/4/30)

          「大月書店通信」第183号をお届けします。 4月10日に投票された韓国の国会議員選挙では、革新系の野党が大差で勝利しました。投票率は67%で、1996年以来最高とのことです。 ニュースなどで選挙戦のようすを見ると、両陣営が踊ったり歌ったり、良くも悪くも「お祭り」的な明るさは日本の選挙にないものですね。韓国ドラマにもシリアスからエンタメ系まで、政治や選挙を題材にしたものが多数あります。 そうした文化の端々から、人々が政治を自分の生活に影響するもの、放置すれば今より悪くなってし

          【大月書店通信】第183号(2024/4/30)

          あっと驚く刑務作業の世界(3)横浜刑務所の製麺

          製麺工場がある唯一の刑務所横浜刑務所(神奈川県横浜市)には、なんと刑務所では全国唯一の製麺工場があり、受刑者による乾麺の製造が行われています。 取材に対応してくれたのは小山田勝(おやまだ・まさる)さん。作業専門官として、受刑者への乾麺作りの指導と、商品の企画、開発を行っています。 まずは横浜刑務所の製麺の歴史を伺います。 乾麺の製造を始めたのは、ある「ピンチ」がきっかけでした。刑務所の改築に際し、それまで横浜刑務所の目玉だった石けんの刑務作業が、他の刑務所に移転することに

          あっと驚く刑務作業の世界(3)横浜刑務所の製麺

          【大月書店通信】第182号(2024/3/29)

          「大月書店通信」第182号をお届けします。 春、卒業式~入学式、入社式の季節になりました。春は、新たな「学び」を始めてみたくなる季節でもあります。 今月の新刊『 大学生が推す 深掘りソウルガイド』は、大学ゼミでの「学び」のなかから生まれた本です。企画の始まりは、2022年秋のソウルでのゼミ合宿。街を踏査(タプサ)しているときに、有名な観光地やその周辺のあちこちに、「日韓」の歴史を知ることができる空間や物があるのに気づいたことがきっかけです。これを知らないなんて、とっても残

          【大月書店通信】第182号(2024/3/29)

          【大月書店通信】第181号(2024/2/29)

          「大月書店通信」第181号をお届けします。 この2月でウクライナ戦争の開始から2年。そして昨年10月からのパレスチナ・ガザでの戦闘はまもなく5か月になろうとしています。停戦を求める世界の声を無視して殺戮が続くことに無力さを感じている人も多いでしょう。 イスラエルの作家アモス・オズのエッセイ集『わたしたちが正しい場所に花は咲かない』(大月書店、2010年初版。現在品切)を開いてみました。 自分たちは常に正しいと考える「狂信者」への処方箋としてオズが提示する「想像力とユーモア

          【大月書店通信】第181号(2024/2/29)