【大月書店通信】第188号(2024/9/30)
「大月書店通信」第188号をお届けします。
山田洋次監督といえば、押しも押されもせぬ映画界の巨匠。1961年の初監督作品『二階の他人』から2023年の最新作『こんにちは、母さん』まで、90の監督作品があります。『男はつらいよ』シリーズはもちろん、『家族』『故郷』『同胞』や『幸福の黄色いハンカチ』といったシリアスな作品、『学校』シリーズ、『たそがれ清兵衛』『隠し剣 鬼の爪』『武士の一分』の時代劇、戦争を描いた『母べえ』『小さいおうち』『母と暮せば』などなど、日本中の観客を魅了しつづけ、幾度も映画賞を受賞しています。
しかし山田監督は、その力を正当に評価されてきたといえるでしょうか――。
フランス人のジャーナリスト、クロード・ルブラン氏は、40年前に来日した際、『男はつらいよ 真実一路』(1984年)で山田作品に出会いました。
運命的に寅さんに一目惚れしたルブラン氏は、以来くまなく山田作品を鑑賞し、フランスで山田監督作品を紹介し普及することに努めてきました。が、フランスでも山田監督は、小津安二郎や黒沢明、北野武、是枝裕和といった監督たちのようには評価されていません。
そこで、1年がかりで執筆したのが『Le Japon vu par Yamada Yoji』(2021年)です。この本によって、フランスの人たちは山田監督を発見し、パリ日本文化会館での山田作品のロングラン上映へとつながりました。
この本の日本語版が、9月新刊『山田洋次が見てきた日本』(大野博人・大野朗子訳)です。山田監督を正当に評価する世界初の評伝であるとともに、日本現代史、日本社会論としても読み応えがあります。大部で高価な本ですが、山田作品未見の方でもきっと作品が観てみたくなるはずです。
◆クロード・ルブラン[著]大野博人・大野朗子[訳]『山田洋次が見てきた日本』
【新刊案内】『核兵器と戦争のない世界をめざす高校生たち』ほか9月の新刊4点
●仏人ジャーナリストによる世界初の評伝
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『山田洋次が見てきた日本』
クロード・ルブラン[著]大野博人・大野朗子[訳]9,900円
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フランスで山田洋次作品を普及するジャーナリストが監督の懐深くに飛び込み、大胆かつ細やかに著した評伝の決定版。旧満州での生立ち、『こんにちは、母さん』まで全90作品の魅力、作品が映し出す日本社会論など、ファン必携。
●「映え」る自衛隊に「萌え」る社会
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『映画のなかの自衛隊――防衛省のメディア広報戦略』
須藤遙子[著]2,640円
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自衛隊が広報活動として製作に協力する劇映画=「自衛隊協力映画」。戦車や爆撃機までもが無償=税金で提供される、その32作品を、政治・経済・社会的背景と映画表象を関連づけて分析。官民相互依存のポリティクスを描きだす。
●薬物や依存症の危険、今から知っておこう!
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『10代からのヘルスリテラシー 薬物』
松本俊彦[監修]3,850円
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エナジードリンクや市販のかぜ薬やせき止めなど、身近なものでオーバードーズを引き起こしたり、薬物依存症のきっかけにも。乱用・依存しやすいさまざまな薬物とその危険、依存症にならないための方法などをわかりやすく解説!
●特集=教職員の長時間労働と「中教審答申」を問う
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『月刊クレスコ 10月号(no.283)』
クレスコ編集委員会 全日本教職員組合(全教)[編]825円
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文科省の調査では教職員の時間外在校等時間が減少したと主張するが、過労死や自死は増え、50年ぶりの給特法改正も長時間労働の抜本的な解決にはつながらない。法的な観点や各組織でのとりくみを紹介し、解決の糸口を探る。
【話題の本・本の話題】
今月の書評掲載
●クロード・ルブラン[著]大野博人・大野朗[訳]『 山田洋次が見てきた日本 』
「高知新聞」9月26日
●高校生平和ゼミナール全国連絡センター[編]『 核兵器と戦争のない世界をめざす高校生たち』
「琉球新報」9月2日
「しんぶん赤旗」9月4日
「沖縄タイムス」9月11日
●三浦まり・金美珍[編]『 韓国社会運動のダイナミズム』
「ふぇみん」9月5日
「図書新聞」9月21日
●キム・ジヘ[著]尹怡景[訳]『 家族、この不条理な脚本』
「朝日新聞」 好書好日 9月21日
●生田武志・山下耕平[編著]『 10代に届けたい5つの“授業”』
『はらっぱ』2024年9月号
●虎岩朋加[著]『 教室から編みだすフェミニズム』
『月刊高校教育』2024年10月号
●林香里・四方由美・北出真紀恵[編]『 テレビ番組制作会社のリアリティ』
「 UTokyo BiblioPlaza」
【イベント】
『「帰れ」ではなく「ともに」』出版記念会~「帰れ」は差別判決の意義、その先へ」
『 「帰れ」ではなく「ともに」――川崎「祖国へ帰れは差別」裁判とわたしたち』の書店等での発売に先駆けて、刊行記念イベントがおこなわれます。
昨年10月12日、川崎の在日コリアン三世の崔江以子さんに対するネット上の書き込み「祖国へ帰れ」が、ヘイトスピーチ解消法2条の「差別的言動」にあたり違法であるとした判決が出ました。長年在日外国人を苦しめてきた「帰れ」との表現は、許されない違法な言動であり、著しく人格権を傷つけたとして損害賠償金100万円が認められたのです。この判決の意義を解きほぐし、差別と闘うツールとして使えるよう、また、今後の差別をなくす法制度をつくる取組に活用できるよう、原告本人、弁護団、研究者、記者が共同で本をつくりました。記念すべき判決1周年の10月12日に出版記念会を川崎で開きます。皆さん、どうぞご参加ください。(イベント案内より)
出演者:石橋学、板垣竜太、神原元、崔江以子、師岡康子(著者)、森幸子(大月書店編集担当)
場所:川崎市労連会館5階ホール
日時:10月12日(土)14時~16時(開場:13時30分)
参加費:2,000円(書籍代+配付資料[判決要旨]込み)
※事前申し込みが必要です。お申込みは こちら
~イベントアーカイブ販売中~
能條桃子×福田和子×松岡宗嗣 『家族、この不条理な脚本』刊行記念トークイベントその脚本を書いたのは誰?~ジェンダーと生殖をめぐる衝突を“家族”から読み解く
今野書店でのトークイベントが好評につき、アーカイブを販売中!!(2025年1月19日まで視聴可能)
※本イベントは9月6日に開催されました。
【今月の赤旗半4段広告】
【編集後記】
お彼岸が過ぎてから急に肌寒い日が多くなりました。スーパーに栗があったので早速買ってきて、まずは塩味のシンプルな栗ご飯にしました。残りは渋皮煮に。何度か水をかえて湯でこぼし、その都度柔らかくなった皮や筋をこすり取ります。この単純作業が毎年楽しく、秋が来たことを実感します。(Y)