ジャケ買いしたい「表紙がステキな本」3選
小説家の保坂和志氏は、古井由吉の『眉雨』や『仮往生伝試文』などの作品について、当時は「ジャケ買い」のような感覚で買い揃えていたと述懐している(その後「背中ばかりが暮れ残る」という短編を読み、その凄さに気づいてしっかり読みだしたらしい)。私も昨年『仮往生伝試文』を古本屋で買って、たしかにこのジャケはど迫力だ、うちに置いておきたい、と同じことを思った。保坂氏とかぶっては仕方ないので、古井を除いた「表紙が好きな本」を紹介していこう。ぜひ検索しながら見てほしい。
①ロラン・バルト『恋愛のディスクール』
これはヴェロッキオの「トビアスと天使」という絵のごく一部、手と手が触れ合う瞬間のような部分を切り取った表紙である。フランス語原書も持っているが、原書からこうである。18歳頃、書名に「恋愛」と入る本はすべて買おうと決心したのは黒歴史だが、その中でも最も深く刺さったのがこの本であった。バルトの著作の中でも一番に好きである。
②加納光於『夢のパピルス』
この本は版画家・加納の唯一のエッセイ集だが、今現在手元にないので装丁は誰がしたとかいうことは判然としない。ただあの「稲妻捕り」の加納が言葉で語ったものがあるならぜひ読んでみたいと貪り読んだ記憶はある。この本の出版社、小沢書店にはいい本が多かった(などと言うと60代くらいの人間に見間違われようか。私はまだ30代前半であるが…笑)。
③ビル・スコロン『ウォルト・ディズニー伝記』
最後はまったく毛色の違ったものを。これはディズニーの似顔絵を誰かが描いた表紙である。なんて素敵な、屈託のない笑顔なんだ。私などはこの本の横で何度もこの笑顔のマネをして自撮りしてみたが、こんないい微笑みはそうそう出せるもんじゃない。「おともだち」感も若干ある。ぜひこの絵を見て皆さんも笑顔になっていただきたい。
以上3冊である。他に『ゴダール全評論・全発言3』なども迷ったが選に漏れた。皆さんも自分の推し表紙をぜひ考えてみてほしい。