梁塵秘抄【りょうじんひしょう】
本書の題名は、「りょうじんひしょう」と読みます。
原著の著者は、平安末期の後白河法皇【ごしらかわほうおう】です。八百年ほども前のことですね。
当時の日本では、今様【いまよう】と呼ばれる歌がはやっていました。その今様の数々を、後白河法皇自らが集めて、編纂したのが、『梁塵秘抄』です。
現代に置き換えれば、天皇陛下自らが、Jポップの歌集を出した、という感じです。
八百年も経てば、最新の流行歌も、古典になります。
『梁塵秘抄』は、平安末期の社会をよく映した古典として、評価されています。現代語訳も、いくつも出ています。
そんな中で、本書は、完訳版―『梁塵秘抄』のすべての歌を、訳して載せている―ではありません。有名な歌を、いくつか抜き出して、翻訳と解説を付けています。
完訳版でないことに、不満を持つ方がいるでしょう。そういう方は、別の完訳版を入手して下さい。
初心者は、いきなり完訳版を読むより、本書のほうがいいと思います。詳しい解説が付いているからです。
何の解説もなく、平安末期の歌が羅列されていたら、普通の人は、戸惑いが大きいでしょう。
完訳版ではないことと、「解説が、逆にうざい」と感じる方もいることとを考えると、満点は付けられません。
とはいえ、初心者にとっては、読みやすくて、ありがたいでしょう。
本書の解説者は、西郷信綱【さいごう のぶつな】さんです。日本の古代文学研究の泰斗です。
実際に解説を読んでみると、さすがですね、論理に無理がありません。素直に読めます。平安末期の世界へ、自然に誘われます(^^)
平安末期は、激動の時代でした。貴族の世から武士の世へ、移り変わる節目でした。
その中で、懸命に生きた人々の息吹を、感じることができます。
以下に、本書の目次を書いておきますね。
第一部 梁塵秘抄の歌
一 我を頼めて来ぬ男
二 遊びをせんとや生【うま】れけむ
三 遊女【あそび】の好むもの
四 楠葉【くすは】の御牧【みまき】の土器作り
五 我が子は十余に成りぬらん
六 我が子は二十【はたち】に成りぬらん
七 舞へ舞へ蝸牛【かたつぶり】
八 いざれ独楽【こまつぶり】
九 茨小木【うばらこぎ】の下にこそ
十 頭【かうべ】に遊ぶは頭虱【かしらじらみ】
十一 鵜飼はいとをしや
十二 択食魚【つはりな】に牡蠣【かき】もがな
十三 吹く風に消息【せうそく】をだに
十四 熊野へ参らむと思へども
十五 仏は常にいませども
十六 拾遺【しゅうい】梁塵秘抄【りょうじんひしょう】歌
第二部 梁塵秘抄覚え書
一 梁塵秘抄における言葉と音楽
二 遊女、傀儡子【くぐつ】、後白河院
付 和泉式部と敬愛【きょうあい】の祭
神楽の夜――「早歌」について――
あとがき
梁塵秘抄歌首句索引
解説 『梁塵秘抄』の発想と言葉 鈴木日出男