森と芸術
森、というものは、ヨーロッパの芸術の中で、どのように扱われてきたのでしょうか?
それについて、書かれた本です。
風景画として、リアルな森が描かれることもあります。
しかし、そういう作品は、非常に少ないです。
リアルなように見えても、ほとんどの場合、作り手の作為が、強く入っています。
人は、芸術の森に、リアルな森以外の何かを投影することが、とても多いのです。
ある時は、この世の楽園、理想郷としての森。
ある時は、暗く、恐ろしいものが潜む場所としての森。
またある時は、きらびやかな装飾に満ちた場所として。
本書は、芸術論として、とても面白いです。
そればかりでなく、神話学、地理学、民俗学などの分野から見ても、優れた論だと思います。
「何だか難しそう」と思う方も、いるでしょう。
でも、大丈夫です。本書には、美しい図版がたくさん載っています。それを見ているだけで、楽しめます(^^)
図版に付いているキャプションを、拾い読みするだけで、読者の心の中にも、ふしぎな「森」が、広がってゆきます。
以下に、本書の目次を書いておきますね。
はじめに
序章 森から森へ
ギルガメシュの森
ドングリの森
縄文人の森
古代ローマの森
シベールの森
第1章 楽園としての森
コラム
リンゴの実
デューラー
ゴーギャンとタヒチ
素朴画家たち
第2章 神話と伝説の森
コラム
聖なる世界としての森
ケルト人と森
オークの木
第3章 風景画のなかの森
コラム
ウェルギリウスの田園詩
バルビゾン派と写真
「愛の森」
第4章 アール・ヌーヴォーと象徴の森
コラム
象徴主義
ラファエル前派
エミール・ガレの植物愛
エミール・ガレの家具
昆虫誌
ブルターニュとアンヌ女公
第5章 庭園と「聖なる森」
コラム
フランス式庭園
マニエリスムと庭園
川田喜久治
ボマルツォの「聖なる森」
第6章 メルヘンと絵本の森
コラム
アンデルセンの童話
エルツ山地の木工玩具
第7章 シュルレアリスムの森
コラム
エルンストの博物誌
ブロスフェルトと植物
アルプと森
女性のシュルレアリスム
ブルトンと「野生の目」
マン・レイの場合
第8章 日本列島の森
岡本太郎の森
ジブリの森
東京の森
福井の森
北海道の森
コラム
沖縄の「ウタキ」
男鹿和雄と白神山地
砂澤ビッキの木彫
森のカメラ・オブスクラ(東京大学総合研究博物館モバイルミュージアム)
特別寄稿 「森」のシュルレアリスム博物誌 西野嘉章
索引(主要人名・地名・事項)
主要参考文献
作品リスト
後記
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?