シルクロードの象 (1980年) (シルクロード史考察 正倉院からの発見〈14〉)
シルクロードの象 (1980年) (シルクロード史考察 正倉院からの発見〈14〉)
『シルクロードの象』とは、不思議な題名ですね。
内容は、この題名どおりです。シルクロードに現われるゾウ(象)を紹介した本です。
シルクロードと象とは、普通は、あまり結びつきませんよね。
けれども、考えてみれば、シルクロードの途中には、ゾウの分布する地域があります。東南アジアや、インドを中心とした地域ですね。そこで、ゾウとヒトとが、どのように共存していたのかは、知る価値があるでしょう。
御存知のとおり、象は、地上最大の動物です。
にもかかわらず、昔から、家畜として、人間に飼われてきました。荷物の運搬役として、現在のトラックや、クレーンのように使われました。軍象として、戦争に使われることもありました。
このように、人間と深く関わる動物であれば、そこには文化が生まれます。
シルクロードの文化の一つとして、取り上げられるべきでしょう。
本書で取り上げられているのは、実在する動物としての象ばかりではありません。
美術品や工芸品、また文献の中に現われる象も、扱われています。
長大なシルクロードの全体を見渡せば、その中で、実在する象と親しく接することができたのは、一部の地域だけです。
例えば、日本には、野生の象は存在しませんね。当然、家畜としての象の歴史も、ありません。現代のような動物園ができる前は、日本人にとっての象は、美術品や工芸品、文献の中だけに現われる動物でした。
実物の象がいない地域で、象とは、どのようなものだと思われていたのでしょうか?
逆に、象が親しい地域では、象は、どのように扱われてきたのでしょうか?
象がいるにはいるが、珍しい地域―例えば、西アジア―では、象とは何だったのでしょうか?
本書は、こういったことを紹介しています。
類書は、無きに等しいです。独創的なシルクロード文化の本です(^^)
以下に、本書の目次を書いておきますね。
はじめに
日本の象
正倉院と象
最後のマンモス
ナウマン象の群
古墳時代の象文様
仏教とともに
古典の中の象
象の渡来
中国の象
殷【いん】王朝の象
漢の武帝と象
石窟【せっくつ】寺院と象
唐代壁画の象
砂漠の象
シルクロード
敦煌【とんこう】壁画の象
西域【さいいき】の象
『大唐西域記』と象
インドの象
仏教美術の象
仏典の中の象
インド最古の象の造型
叙事詩の中に
石の彫刻の象
象に乗って
西方の象
オリエントの象
象牙の美術
『聖書』の中の象
イソップの中に
ペルシアの軍象
ローマ帝国の中で
巨象の道―東西交流と象
象と人間のかかり合い
東の象と西の象
正倉院の象の背景