魔女はなぜ人を喰うか
日本では、魔女というと、ファンタジーの中の存在ですね。魔女っ子アニメなどのためか、「魔女が人を喰う」といった、強烈な負の印象は、少ないかも知れません。
けれども、ヨーロッパでの魔女は、少なくとも近世までの段階では、リアルな存在でした。人を喰ったり、畑の作物に病気をばらまいたりする魔女が、本当にいる、と信じられた時代がありました。
本書では、そのようなヨーロッパの魔女(の伝承)が、なぜ生まれたのかを、解説しています。
「魔女が人を喰う」伝承ばかりでなく、魔女と吸血鬼伝承や、ヨーロッパの魔女と日本の山姥や鬼女との関係などについても、解説されています。
魔女伝承や、伝承の中の女性性について、考える材料を与えてくれます(^^)
後半は、繰り返しの言説が多くて、ちょっと飽きてきますが(^^;
本書の著者、大和岩雄【おおわ いわお】さんは、本書に先立って、『魔女はなぜ空を飛ぶか』という本も、書いてらっしゃいます。
できれば、『魔女はなぜ空を飛ぶか』を先に読んでおいたほうが、理解しやすいでしょう。
なお、本書の出版社の大和書房は、「だいわしょぼう」と読みます。著者名と漢字表記が同じで、読み方が違う、ややこしいことになっています(笑)
以下に、本書の目次を書いておきますね。
I 魔女はなぜ人を喰うか
人肉はうまいか?
佐川一政と宮崎勤の人喰い
人身供儀としての人喰い
タヒチ・アステカ・日本の人喰い儀礼
「神を喰う」ということ
人を喰う「野蛮」と聖餐【せいさん】という「文化」
「子供を喰う」といわれた聖餐
魔女はなぜ子供を喰うか
II 魔女と吸血鬼
「吸血鬼ドラキュラ」について
吸血鬼・食人鬼としての魔女【ストリゴイ】
吸血・食人のカーリー女神
吸血伝承と血と女性
血をなぜ吸血鬼は求めるか
死と再生のための血の儀礼
ルーマニアの吸血鬼伝承とアイルランド
吸血鬼としての日本の山姥・鬼女
III 魔女と人を喰う山姥・鬼女
魔女と山姥の共通性
鬼子母神の食人と産育
子供を「喰う」と「生む」が一体の山姥伝承
なぜ嬰児を喰い胎児を薬として用いるか
「喰う」は生かすために殺すこと
山姥の二面性・両義性と魔女
箒【ほうき】の二面性・両義性と魔女
箒と産婆と魔女
山の女としての魔女と人喰い
IV 魔女と「歯のある膣【ヴァギナ・デンタータ】」
下の口としての陰唇
「歯のある膣」の伝承
箱舟漂着譚と死と再生
ギリシア神話の箱舟漂着譚と「歯のある膣」
人を喰い自らも喰われるディオニューソス
「歯のある膣」をもつマイナデス
「歯のある膣」をもつマイナデス・魔女と性交
乱交と食人と「歯のある膣」
女人国の歯のある膣をもつ女と魔女
V 喰う女と喰われる男
牡山羊にまたがる魔女
牡山羊=男根を喰う女たち
「直立する者【オルトス】」としてのディオニューソス
魔女の性交体位の女上位
能動的な力を与える太母
太母に捧げられる切られた男根
パレドロス、カームテフとしての男根
飛翔力の根源としての太母の「カー」
女上位と魔女と「太母の祭祀」
男根を求める山の神・山姥
両性具有の太母像と魔女
男根=生首と「男を喰う」こと
断首と性交とカニバリズム
喰う女と喰われる男
あとがき
引用図版・写真出典一覧