海の古代史―東アジア地中海考 (角川選書)
どこの国でもそうですが、日本の古代史にも、謎が多いですね。
古代といえるほどの昔は、どうしても、情報が少ないからです。
本書は、日本の古代史に、「東アジア」という視点から、切り込んでいます。
古代の日本は、東アジアの国々と関係が深かったことが、明らかになっています。にもかかわらず、この視点からの一般向けの解説書は、少ないです。
本書は、貴重な例外です(^^)
日本は島国ですから、他国と交易などをしようとすれば、船に頼るしかありません。古代なら、当然ですね。
そのため、本書では、まず、古代の船や航海について、取り上げられています。
その他、海に生きる人々の習俗、貝や玉といった装飾品、楽器、鉄、墓のあり方について、取り上げられています。
読み進むうちに、東アジアの国々が、互いに影響を与え合いながら、歴史を歩んできたことが、わかります。
歴史を知りたいなら、自国の歴史だけ見ていては、いけませんね。大事なことを見落とす可能性があります。
本書には、日本の古代について、非常に示唆的な個所が、いくつか、あります。
以下に、本書の目次を書いておきますね。
はじめに
第一章 航海と船
一 船に関する出土遺物
二 龍の船と鳥の船
三 東アジア地中海の航海と船
第二章 海への祈り
一 航海安全祈請の儀礼
二 海神への祈りの事例的考察
三 海神のイメージ
第三章 海人の習俗としてのイレズミ
一 考古資料に見るイレズミ
二 東アジアのイレズミ文化
第四章 貝への憧憬
一 貝輪の考古学的考察
二 貝輪・貝釧【かいくしろ】の歴史――呪具から示威具・レガリアへ
三 貝の用途と意味
第五章 玉の道
一 東アジア地中海における玉文化
二 日本古代の玉をめぐって――日本古代史の立場から
三 東アジア地中海における玉の道
第六章 海を渡った音色――琴をめぐって
一 東アジアの琴の起源
二 琴と神
第七章 鉄と交易
一 水神と鉄忌信仰の諸相――朝鮮半島を中心に
二 金属器の神の渡来、日本列島における鍛冶の神
三 古代朝鮮半島と日本列島における鉄――考古学的知見
第八章 東アジア地中海文明――墓制からの視点
一 古代中国の墓制とその変遷――造墓の知恵からみた古代中国人の世界観
二 高句麗壁画の図像について
三 東アジア地中海文明の思想的基層
あとがき