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仏典の植物


仏典の植物

 仏典とは、仏教のお経のことです。というと、大部分の方には、退屈なものと思われそうですね(^^;

 じつは、お経を丁寧に読むと、意外に、一般の人にも身近なことが、書いてあったりします。お経は、本来、仏教の教えを、人々にわかりやすく説いたものだからです。

 お経には、動植物の名前がよく登場します。お経が書かれた地域や時代に、身近だった動植物を挙げて、多くの人に、仏教を理解させようとしたのですね。

 ところが、今の日本で、お経をそのまま読んでも、わかりにくいことが多いです。
 というのは、日本のお経が、複雑な経緯をたどっているからです。

 お経の源流は、インドにあります。ですから、多くのお経は、最初、インドの言葉(サンスクリット語)で書かれました。
 そこから、お経は、中国に入ります。その時点で、サンスクリット語から、中国語(漢語)に翻訳されました。

 ここに、一つ、関門があります。違う言語からの翻訳には、誤解や、意訳が、どうしても発生しますね。お経にも、もちろん、それらがあります。
 お経の場合、「どうしても訳せない」と思われた部分は、サンスクリット語の音に、無理やり漢字を当てはめて、そのまま読んでいます。

 そして、漢語のお経が、日本に入ります。
 日本では、長く、漢語のお経を、そのまま漢語で読んできました。けれども、長い間には、発音が日本語風になったり、漢語の中に日本語が混ざったりするようになりました。
 時代が下ると、漢語のお経を、日本語に翻訳したものも出てきます。

 サンスクリット語→漢語→日本語、と、二重に訳されたお経は、さあ、どうなるでしょう?
 素人が考えても、誤解や意訳の嵐になることは、想像できますね(^^;

 というわけで、お経の中に動植物の名前が出てきても、今の日本人には、何のことだかさっぱりわからない、という事態になってしまいます。
 本来は、わかりやすく説くためのはずのものが、逆にわかりにくくしてしまっているわけです(^^;

 本書は、そのような事態を打開するために、書かれたものです。お経に登場する植物が、実際にはどんなものなのか、丁寧に解説されています。

 仏教に興味がある方にはもちろん、植物に興味がある方にとっても、有益な本です。
 仏教の故郷、インドの豊かな植物相について、知ることができるからです。

 以下に、本書の目次を書いておきますね。

 I
仏教的世界観
仏教三霊樹と五木、五天華【ごてんげ】
托胎【たくたい】、生誕、結婚の木アショカ
解脱の木、菩提樹
涅槃の木、サラノキ
仏国土の七重行樹オオギヤシとヤシ類
仏国土の薫香
仏教のシンボルはす(蓮華)
希有にして会い難きこと如来の如きウドンゲ
仏身大直身相のバンヤンジュ
赤唇相のビンバ果
天華【てんげ】デイコ
仏典をたたえる香花、香木
不放逸、焼身供養の香花、香木
釈迦族発生の地チーク林
最初の瞑想樹ジャンボラン
結集【けつじゅう】の木、七葉樹
学林樹林
因果論、無因果論のパンノキ
恍惚の果花、シロバナヨウシュチョウセンアサガオとチョウセンアサガオ
五樹の教え
キムシュカの喩【たとえ】
空なるもの芭蕉
四諦【したい】とアセンヤクノキ
香木ビャクダンとセンダン
臭木トウゴマ
尸陀林【しだりん】とインドセンダン
カーストの否定
一闡提【いっせんだい】と死屍
功徳無量の菩提子の数珠
ヒマラヤザクラの人形
モミジバウラジロとゴジカ
曼荼羅【まんだら】と鑚火【さんか】の木
雨乞とカバノキ
偵察木ビルマネム
木樒と天木香樹
税金とインドマツリ
マドゥカと甘草【かんぞう】
ナツメ
最上の薬果ミロバラン、セイタカミロバランとターミナリア属の木
ベルの実、百獣を走らす
乳首の如きインドガキ
キワタとワタ
樒(シキミ)
捨心定【しゃしんじょう】、戒、解脱、菩薩

 II
護摩壇【ごまだん】と護摩木【ごまぎ】
護摩壇に捧げる植物
真言呪法の植物
仏像、寺院、木棺

 III
男女両性の出現
カルパの長さと人間の寿命
安産の生薬ハマビシ
食事
薬事
澡豆【そうず】
法衣【ほうえ】、内衣【ないえ】
自然環境の保全
生活環境の保全

参考文献
植物名索引



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