仏像学入門 ほとけたちのルーツを探る
仏像の発展の歴史を、たどった本です。
仏「教」がインド起源であることは、皆さん、御存知でしょう。
けれども、仏「像」の起源については、二〇一〇年現在、いまだ議論の最中です。
この本では、仏像の誕生地、および、誕生した時期について、興味深い見解が述べられています。仏像の成立について知りたい方は、無視できない本です。
仏像には、いろいろな種類のものがありますね。お釈迦さまの姿を写したものばかりではありません。
例えば、観音菩薩、弥勒菩薩のような「○○菩薩」やら、帝釈天、毘沙門天のような「○○天」やらがいます。
こういった「お釈迦さま以外の仏像」についても、この本で、詳しく述べられています。
特に、梵天、帝釈天、弥勒菩薩、観音菩薩、四天王、八部衆について知りたい方は、ぜひ、この本を読みましょう。
前記のような、「仏教の神々」(矛盾した表現ですが(^^;)については、意外に情報が少ないです。
仏教は、バラモン教の神々や、ギリシャ美術の影響、中国の道教の思想などを取り入れながら、発展してきました。ユーラシア大陸の主な思想は、すべて入っている、と言っていいくらいです。
そのような中で生まれてきた「仏教の神々」は、説明が難しいのですね。起源においても、発展の過程でも、さまざまな影響を受けているためです。
この本は、錯綜した「仏教の神々」を解きほぐす、良い糸口となります。
以下に、この本の目次を書いておきますね。
はじめに
第1章 仏像の誕生
1 象徴的表現
2 仏像の起源
3 仏像の展開
第2章 大乗仏教美術の源流――ガンダーラ
大乗仏教美術のテーマ
1 ガンダーラの仏三尊像
2 ガンダーラ・インドの観音菩薩像
3 ガンダーラの大神変図と浄土図の原型
第3章 梵天と帝釈天
1 梵天・帝釈天の成立
2 梵天と帝釈天の展開
第4章 弥勒信仰とその造形
1 インドの弥勒菩薩
2 中央アジア・中国の弥勒菩薩
第5章 観音菩薩の展開
1 観音信仰
2 インドの観音像の変遷
3 インドの多臂観音像
4 インドの密教系観音
第6章 変化観音の源流
変化観音とは
1 十一面観音
2 千手観音
3 不空羂索【ふくうけんじゃく】観音
4 如意輪観音
5 馬頭観音
6 准胝【じゅんでい】観音
むすび――変化観音の成立とダラニ経典
第7章 四天王と毘沙門天
1 インドの四天王
2 中央アジア・中国の四天王
3 毘沙門天の成立
第八章 兜跋【とばつ】毘沙門天の成立
1 東寺の兜跋毘沙門天とその源流
2 東西交流から見た兜跋毘沙門天の成立
第9章 八部衆の源流
八部衆とは
1 インドの八部衆
2 中国の八部衆
第10章 アジアの阿修羅
1 阿修羅の源流
2 仏教に取り入れられた阿修羅
3 アジアに広がる阿修羅
各章のコメントと参考文献
あとがき
図版目録・出典
索引