日本の美術 no.330 飛天と神仙
飛天【ひてん】と呼ばれる超常的存在と、神仙と呼ばれる超常的存在とを、解説した本です。
類書は、ほとんどありません。飛天を扱ったものとして、わずかに、小学館の『飛天の道』があるくらいです。
飛天も、神仙も、日本をはじめ、アジアの美術に、よく現われるものです。一見しただけでは、飛天なのか、神仙なのか、わからないものも、少なくありません。
ごく簡単に言えば、どちらも、「ヒト型をした、空を飛ぶもの」です。
けれども、その起源を尋ねれば、飛天と神仙とは、もともと、まったく違うものでした。
飛天の起源は、インドにあります。インドの精霊的存在だったものが、仏教に取り入れられ、仏教の伝播にともなって、アジア全域に普及されました。
神仙の起源は、中国にあります。神仙とは、「神」と「仙人」とを合わせて呼んだ名です。古代中国で、不老不死、または、不老長寿である神や、仙人という存在が考えだされました。
神仙の存在を核にした「神仙思想」は、東アジア全体に波及します。それにともなって、神仙の姿も、各地で表わされるようになりました。
仏教と神仙思想とが広がったアジアのどこかで、飛天と神仙とが出会います。
形象が似た両者は、互いに影響を与え合いました。一つの品物に、飛天と神仙と、両方が付いていることさえ、起こるようになりました。
本書では、アジア美術の美しい脇役、飛天と神仙とが生まれ、出会い、発達してゆく様子が、解説されています。
図版が多いです。飛天や神仙の、具体的な姿を、たくさん見ることができます(^^)
以下に、本書の目次を書いておきますね。
序 飛天と仙人――玉虫厨子【たまむしのずし】の例から
飛天――インドから西域【さいいき】へ
インドの飛天
西域の飛天
中国の仙人と飛天
中国の飛天
中国の仙人
仙人と飛天の出合い
朝鮮の仙人と飛天
日本の飛天と仙人
飛鳥白鳳時代の飛天と仙人
天平時代の飛天
正倉院の仙人像
飛天と仙人の混在
平安時代以降の遺品
結び
図版目録
参考文献
特別寄稿
古代インドにおける飛天の図像 秋山 光文