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山深き遠野の里の物語せよ


山深き遠野の里の物語せよ

 『遠野物語』の舞台裏を解説した本です。

 解説本というと、「難しくて、退屈」という印象をお持ちかも知れませんね。
 この本に限っては、そんなことはありません!

 『遠野物語』は、説明するまでもない名著ですね。日本民俗学の金字塔です。座敷童子や河童など、妖怪談が収録されていることでも有名です。

 二〇一〇年現在の日本では、「座敷童子や河童が実在する」と信じる人は、ほとんどいないでしょう。
 けれども、歴史的には、つい最近まで、「そのような妖怪が実在する」と、信じられていました。妖怪とは、真実味があるものだったのですね。

 どういう生活をしていたら、そのように信じられるのでしょうか?
 この本は、それを教えてくれます。じつに生々しく。

 この本の著者、菊池照雄【きくち てるお】さんは、遠野市で生まれ育った人です。ですから、遠野の風土や文化が、肌身にしみています。『遠野物語』に登場する人の子孫を、直接、知ってもいます。

 菊池さんは、上京して、大学で高等教育を受けました。民俗学の素養を通して、自分の故郷を語ることができるわけです。
 『遠野物語』の解説者として、これ以上、ふさわしい方は、いないでしょう。

 以下に、この本の目次を書いておきますね。目次を読むだけでも、遠野の風が匂ってくるようです。

はじめに
山に消えた娘たち
 1 寒戸【さむと】の婆の風
 2 猟師に撃たれた山女トヨ
 3 六角牛山【ろっこうしさん】の山の主へ嫁入り
 4 長者の娘にばったり会う
 5 墓場から生きかえって山女に
 6 山女を見た美男の豪傑万次郎
 7 山女伝説の舞台・六角牛山
 8 山は女のかけこみ寺
 9 水汲みに始まる女の苦海
 10 畑に生み落とす

山男の影
 11 水平移動と垂直移動の放浪者
 12 山師たちの足跡
 13 夏草や金山師たちの夢のあと
 14 金山に身を寄せた隠切支丹【かくれキリシタン】
 15 山の漂泊者、木地屋一族
 16 マヨヒガの地を歩く
 17 土淵村琴畑の落人伝説
 18 伝説の英雄、上郷村畑屋の鵺之助【ぬいのすけ】
 19 附馬牛【つくもうし】村と木地屋
 20 山でも生存できた村の生活技術
 21 木の葉の下の山男の家庭
 22 農民になりきれない山師たちの末裔

河童と淵神
 23 早瀬川の河童の子を生む
 24 長女の娘に通った淵の主
 25 人柱になった乞食の母娘
 26 下女をつき落とした里屋の主人
 27 母也【ぼなり】明神の由来
 28 ボナリ・オナリの古代空間
 29 人柱をめぐる柳田と南方【みなかた】の交差
 30 鮭にのって遠野に入る
 31 傀儡坂【くぐつさか】物語
 32 河童駒引きの淵と座敷
 33 中世の土豪阿部家の河童淵
 34 猿の経立【ふったつ】から淵猿【ふちさる】へ
 35 猿女【さるめ】たちの河童駒引き
 36 同じ構造の天の岩戸と河童淵

漂泊する物語
 37 伝説の地層、三山神話
 38 蓮華の花ふる遠野の伊豆権現
 39 早池峰【はやちね】開山の猟師藤三
 40 話の発行元と運搬者
 41 三山の由来を語る歩き巫女
 42 陸中室根山の熊野信仰
 43 白山様を宿にした姉妹神
 44 盲人に慈愛の厚い胡四王【こしおう】様
 45 葉山の北限の三山
 46 三山伝説のルーツをたどる
 47 那智山の穀屋と菊池氏
 48 館ごとに付着する羽衣伝説

伝承の里、家と人と
 49 話者佐々木喜善の生地
 50 駄賃の鈴の音と風説のるつぼ
 51 ほらをふき、ひょうはくをきる
 52 ひょうはくきり風雲録
 53 厚楽【あつらく】家と佐々木家
 54 話者をだした家々の盛衰
 55 毒キノコで一家全滅した孫左エ門
 56 母を鎌で殺した孫四郎
 57 『遠野物語』伝承の申し子たち
 58 「こんやふくべし あそびにこいや」

あとがき



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