描かれた黄泉の世界・王塚古墳 (シリーズ「遺跡を学ぶ」)
九州の福岡県にある、王塚【おうづか】古墳について、取り上げた本です。
おそらく、一般の人が読める本としては、最も詳しく、王塚古墳について書いたものだと思います。
なお、王塚古墳と呼ばれる古墳は、福岡県のもの以外にも、日本全国にいくつかあります。
他の王塚古墳と混同されないよう、御注意下さい。
以下に王塚古墳といえば、福岡県の王塚古墳を指すこととします。
王塚古墳は、古墳内部の壁や天井に、華々しい絵が描かれていることで、有名です。
その絵は、高松塚や、キトラ古墳のものとは、まったく違います。赤・黒・黄・緑などの、極彩色で彩られます。絵画の地の部分が赤ですので、たいへんけばけばしく見えます。
高松塚やキトラ古墳にある、四神や十二支は、描かれていません。
そのかわり?、抽象的な文様が、たくさん描かれています。連続三角文、蕨手【わらびて】文、同心円文、双脚輪状【そうきゃくりんじょう】文などです。
馬や盾【たて】、靫【ゆぎ】など、具体的なものも描かれています。
何も言わず、絵だけを見せたら、「日本の遺跡ではない」と思う方が、多いのではないでしょうか。
そのくらい、通常の古墳イメージからは、離れています。
本書では、王塚古墳の見事な絵を、たっぷり見ることができます(^^)
そして、その絵の謎に迫っています。
なぜ、どのように、これらの絵は描かれたのでしょう?
その謎は、すべては解けていません。けれども、研究者たちの長年の努力が、少しずつ、成果を上げています。
ぜひ、本書で、古代人の芸術の精華を、お楽しみ下さい(^^)
歴史好きの方ならば、本書の表紙を見ただけで、心惹かれるはずです。目に鮮やかな王塚の絵に、強烈な印象を持つはずです。
以下に、本書の目次を書いておきますね。
第1章 王塚古墳の発見
第2章 王塚古墳の構造
1 遠賀川【おんががわ】と筑豊地方
2 筑豊最大級の前方後円墳
3 多系統の横穴式石室
4 草食性に富んだ副葬品
第3章 装飾古墳の世界
1 墳墓装飾の系譜
2 辟邪【へきじゃ】と他界
3 描かれた他界
第4章 王塚の壁画を読む
1 王塚の壁画資料
2 玄門【げんもん】前面の壁画
3 玄室【げんしつ】腰石【こしいし】をいろどる壁画
4 石屋形【いしやがた】の壁画
5 墓室上部をおおう珠文【しゅもん】群
第5章 王塚の壁画を生み出したもの
1 壁画の制作者
2 筑紫君磐井【つくしのきみいわい】と東アジア情勢
第6章 壁画保存への苦難の歩み
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