海辺―生命のふるさと
とても美しい本です。
言葉が美しく、挿絵も美しいです。挿絵がモノトーンなのが、品が良いです。
著者のレイチェル・カーソンは、すでに故人です。環境破壊に対して、早い時期から、警告を発していたことで知られます。
けれども、本書には、声高に環境破壊を告発する調子はありません。
海辺の光景を、詩的に、かつ、科学的に、描写しています。さまざまな海の生き物たちが、登場します。よく知られるものから、ほとんど知られないものまで。
カーソンの指は、海の生き物たちの命を、紙の上に紡ぎ出しているようです。
じっくりと、噛みしめるように、読みたい本ですね。
一部、本書の文章を、ここに引用してみましょう。
『テンシノツバサガイの混じりけのない色と繊細な形は、一生涯泥の中にかくされている。貝が死に、貝殻が波によって解き放たれ、浜辺へ運ばれるまで、この天使の翼の美しさは人目に触れぬよう運命づけられているのだ。暗い牢獄の中に神秘的なまでの美しさを秘め、外敵からもほかの生物からもかくれて、テンシノツバサガイは不思議な緑色の光を発している。なぜ? 何のために? そして、誰に見せるために?』
ため息が出る文章ですね。全編、この調子です(^^)
以下に、本書の目次を書いておきますね。
謝辞
まえがき
序章 海辺の世界
第1章 海辺の生きものたち
第2章 岩礁海岸
第3章 砂浜
第4章 サンゴ礁海岸
終章 永遠なる海
付 海辺の生物の分類
訳者あとがき
索引