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スキつけた後も、結局何回も読み直してるnoteを集めました。無断で入れてますので、差し支えある場合は教えてください。
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2023年5月の記事一覧

短編小説「空色の線」

短編小説「空色の線」

 筆に十分な水を含ませ、パレットに出した水色のアクリル絵の具と絡ませる。使い込まれた様子のないパレットは、着色していた色が移る心配もない。そうして完成した空色の絵の具。傾斜のつけられたキャンバスの、僅かな凹凸上を空色の筆先が左から右へ撫でる。キャンバスの左辺から右辺へ横断する線は、それだけで十分すぎるほど雄弁であった。その成果に、筆を持つ少年は満足そうな表情を浮かべる。

 しかし、暫くするとキャ

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【短編小説】転がる石

【短編小説】転がる石

 名前も不確かな程度の関係性。そんな女が裸で寝てたって、ベッドルームの窓に目を向ければレースカーテン越しに空が薄く青く広がっているから、不健全でも健康的な朝だよなってあいみょんでも聴きたくなる。隣で寝息を立てる女を起こさないようにベッドから抜け出して、人のことは笑えない俺も全裸で、リビングに出る。そんな間抜けな姿でベランダに繋がる窓際に立って伸びをする。光を文字通り肌に浴びる。河川敷沿いのマンショ

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