【短編小説】 シロクマと音楽
かつて僕はシロクマでした。僕らの生息地であった北極の氷が溶けて棲家を失ったのは四半世紀も前のこと。それでも僕らは泳ぎが得意だったから、どこか遠い土地へと泳いでいき、別の北の大地に移り住むこともできたのです。例えばスカンジナビア半島だとか、サハ共和国だとか。それでもそんな運命を選ばなかったのはずっと一緒に暮らしてきた家族や仲間たちのことが大好きだったからで、そしてそんな同族たちと生活を共に過ごしてきた故郷と呼べる氷土がどうしても忘れがたく恋しかったからです。僕たちの種族に訪れ