東京装甲少女 EPISODE 0 第10話 【1冊の本】
シェイル
【 パパ、、、、。 】
妻に抱きかかえられていたはずのシェイルがいつの間にか秋水の傍まで駆け寄ってきてしまった。
妻は、時恵と秋水の話の邪魔になると思い、
シェイルを戻そうと近寄ろうとしたが、
秋水が大丈夫!
というような手を翳す仕草で制したので、
時恵に一瞥しその場に距離を置き立ち止まった。
秋水は、駆け寄ってきたシェイルを困り顔で、
ヒョイっと抱きかかえた
秋水
【 シェイル、、、、、
ママの所に居なきゃダメじゃないか、、、。】
シェイルは父に抱えられ、もじもじと話し出した。
シェイル
【 だってパパ、、、、。 】
秋水
【 うん?、、、どうした? 】
少し間が開いた後、
シェイル
【 おなかすいた、、んだもん、、。 】
と恥ずかしそうに父に伝えた。
秋水はそれはそうだよな~?と
申し訳なさそうな表情を浮かべた所に
時恵が2人に話しかけた。
時恵
【 あらあら、可愛いね 何歳だい? 】
秋水
【 4歳です
シェイルと言います。 】
時恵
【 そうかい、奥さんも外人さんみたいだから
ハーフだね?
シェイルちゃん、こんにちは 】
シェイル
【 こんにちは 】
シェイルは時恵に話しかけられたが、
初対面で誰だかよく分らないという感じで
あいさつを交わしたあとに、
またすぐに秋水に話しかけた。
今度はハッキリとした口調で
シェイル
【 パパ おなかすいた!! シェイル、カレー食べたい! 】
時恵は抱きかかえられた後に、地面におろされた
シェイルに向かい
時恵
【 カレー好きなのかい? 】
シェイル
【 そう、この間食べたんだよ!
おいしいカレー! 】
秋水は元気よく時恵に応答する、シェイルの注釈をするように
秋水
【 あっ、、救聖軍の近くで先日、
炊き出しで出たもので 】
時恵
【 あ~そうなのかい?
それは美味しかったろうね 】
シェイル
【 うん、すごくおいしかったんだ 】
とシェイルの満面の笑みが零れたのを見て、
時恵も微笑んだ。
シェイル
【 おばあちゃんもカレー好き? 】
時恵
【 ああっ、そうだね私も大好きだよ
ここら辺はね、美味しいカレー屋さんが
多くてね
昔はね、よくあんたのおじいちゃんと、
お父さんとで食べに
行ったもんだよ。
みんなカレーが大好物さ。 】
シェイル
【 そうなんだ~みんなカレー大好きなんだ。
じゃあ、おばあちゃんもシェイル達と 一緒に今からカレー食べに行こうよ
とっても美味しいよ】
シェイルも久々家族以外と楽しい会話をしたので
目を輝かせながら
時恵を誘った。
時恵は、一瞬険しい顔にもどったが、
また笑顔に戻りシェイルに向け話し出した。
時恵
【 今かい?
それは、いいね~。
じゃあ、おばあちゃんも支度して、
後で行くから
お父さんと、お母さんとで先に
行っててくれるかい?
すぐに追いかけるからさ 】
とご機嫌そうなシェイルの機嫌を損ねない様に
相槌を打った。
シェイルもお腹がすいているので、時恵と一緒に
今すぐ行きたい気持ちだったが、あまり我儘を言うと父に怒られそうなので、自分を諫めつつ
シェイル
【 おばあちゃん、本当にくるよね?
約束だよ?
一緒にあっちでカレー食べようね。 】
と約束を交わした。
時恵
【 はいよ !
すぐに行くからね、
先にみんなで行っておいで。 】
シェイルは本当は直ぐに一緒に行きたかったので
少し不貞腐れた表情をしたので
時恵は何かを思いだした様子で、
時恵
【 ちょっとまっておいでね 】
と言い2人を引き止め、いそいそと懐中電灯を
持ちながら
暗い 【 通り道 】 の店内に入り、
数十秒ですぐにまた戻って来た。
そして、
時恵はヨッコラセ という感じでシェイルの前に
屈みこみ
店内から持ち帰った1冊の本を、
優しくシェイルに差し出した。
時恵
【 おばあちゃんね、すぐにはいけないけどね
これでも読んで待っておいておくれ。
これとってもおもしろいよ 】
シェイルも何かは解らなかったがきっと良い物を
くれたのだろうと思い
笑顔でありがとうと言い受け取った。
だが、本よりもおばあちゃんと一緒に早くカレーを食べに行きたかったのが、本音だったが
子供らしい切り替えの早さで、
シェイル
【 うん!わかった じゃあ待ってるからね
約束だよ。 】
と伝え、右手の小指を、時恵の前に差し出した。
時恵もにこやかな表情で
時恵
【 ああっ、約束さ 】
と小指を出しお互いの指を絡ませ
指切りを交わした。
シェイルとの指切りを交わした時恵は、
今度は秋水に近寄り、
同じように右手の小指を秋水の前に差し出した。
時恵
【 さあ、秋水、あんたとも指切りだね 】
秋水は咄嗟に出された小指に反射的に反応し
時恵と指切りをする形になった。
指切りの最中に時恵が話し出した
時恵
【 あんたの親父さんとお袋さんは病には
勝てなかったけどね
誰にも負けない強さと誇りをもった立派な
人達だったよ。
弱い者がいれば自分を顧みず助けてやれる
人だった。
それは中々出来る事じゃないよ。
それに、あんたも、もうわかってるはずだろうけど、今守るのは私じゃないよ。 しっかりこの子たちの命を守って やんな
私との約束だ!さあ、秋水そろそろ時間だよ!お行き! 】
指切りを終え、
時恵の言葉を聞いているうちに秋水は目頭が
熱くなってきた。
何もできない自分に腹が立った、
だが一番悔しかったのは、
時恵の言う
【 あんたも解っているはずだ 】 という
言葉を理解している自分の心が 許せなかった。
そして、その理解は時恵の死を意味するという事も解っていた。
秋水
【 時さん、、、、、だめだ時さん
おいてけない おいてけない
俺には 俺には 】
時恵は煮え切らない態度の秋水に大きな声で言った
時恵
【 何をいってるんだい!情けない!
私の事は良いんだよ!!
あんたなら出来るさ秋水
あんたはあの大善の子だよ!! 】
それでも、決断できない今にも泣きだしそうな
様子の秋水は
秋水
【 うううっ、、、、 おいてけない
おいてけないよ、、、俺には、、、 】
と繰り返すばかりの秋水に時恵は
自分の持っていた杖を振り上げて。
時恵
【 何をやってるんだい!! おまえは!!】
と大きな声を上げながら、秋水の尻を振り下ろした杖で
【バチーン】
と引っ叩いた。
そして更に大きな声で
時恵
【 さあ走れ!!秋水!!走れ 】
と叫んだ。
秋水は何か吹っ切れたように前を向き
秋水
【ワ~ッ~!!】
と叫びながら
シェイルを抱え、そして、妻の手を繋ぎまた、
走り出した。
時恵は叫びながら走っていく姿を、暗がりの中、遠くなり声が聞こえなくなるまでその方向を見つめていた。
そして、ポツンと人の気配のなくなった古書店街で
少しにんまりとした顔でボソッと呟いた。
時恵
【 まったく、、、、、、。
明神さまも随分最後にあの子と あわせてくれるなんて粋な計らいを するもんじゃないか。
本当にね~、、、、。 】
とニヤニヤしながら
また 【 通り道 】の店内に入ろうとしたとき、
フッと店内から鼻腔に懐かしいタバコの香りがした。
時恵は反射的にすぐさま店内に明かりを当てると、
そこには、なんと、、、、、、!!
若かりし頃の姿の大善が、咥えタバコを吹かしながらこっちを見つめ立っていた。
時恵はギョッと心臓を鷲掴みにされたかのような
衝撃を受けたが
直ぐに
嗚呼
ついに
【 お迎え 】
が来たんだなと確信した。
そして、こちらを見つめる大善に久しぶりに
話しかけた。
時恵
【 大善、、、、あんた、、、、、
来てくれたのかい? 】
大善は店内でタバコを吸いながら話しかけてきた
時恵に
大善
【 ああ、、、、、、 俺はあんなクソババアほっとけって
言ってたんだけどな
真紀の奴がうるさくてな、、、、、。】
と少しバツの悪そうな感じで頭をかきながら
話し出した
時恵は懐かしさもあったが、
こいつは相変わらず口の悪さは変わらないねと
思い苦笑いした。
そしてあの頃の懐かしい2人を思い出し 時恵も昔の様に話し出した。
時恵
【 なんだいあんた?
久しぶりだって言うのにその態度は?
だれが、クソババアだってんだい?
それにね、何度も言うけどねこの店の中じゃ
タバコを吸うのは禁止
だって言ってんだろ?
まったく体育会系の脳筋はこれだから、
本当に馬鹿は死んでも治らないね。 】
大善も来やがったなと言わんばかりに
少しニンマリし呼応するように
大善
【 なんだよ相変わらずの うっせ~ババァだな~
ったくよ!!!
だから最後の最後まで 一人ぼっちなんだよ。
わざわざ、寂しい思いするかも しれねーと思って来てやったのに。
こんなきたねー店!燃えちまった方が、
すっきりすんだろうが?、、、、、。 】
大善は
懐かしい久々の時恵との売り言葉に買い言葉に
ヒートアップしてしまったが、
我に返り、ありゃっ!!
また、やっちまった~!! と思い、
そういや、
昔こんなことがあったなと思いだし
恐る恐る時恵を見た。
時恵は少し沈黙したあと、フフッと笑いながら話し出した。
時恵
【 そうだね、あんたの言う通りだよ!
こんな店はもう燃えちまえばいいのさ
それにねここが無くても、
最後に秋ちゃんたちにも会えたしね。
キッチリ、次にバトンも渡せたよ。
私は私の人生をあんた達のお陰で
キッチリ前を向いて楽しく全うできたよ。
ありがとうよ
あんたもそうだろ大善
楽しかっただろ? 】
大善も時恵の笑顔をみて安堵し、自分も笑顔で
大善
【 ああ、そうだな、色々あったけどな。
まあ、俺も楽しかったわ。
時さん!あんがとよ 】
と2人はお互いを見つめ笑顔を交わした。
そんな、2人の周りを光の粒の様な物が
取り巻きキラキラと輝きだした。
光は時恵を包み込み、
いつしか時恵の姿も大善と同じように
あの時の、
時さんになっていた。
その、刹那、【 通り道 】の
外がまるで昼間かの様に明るく輝いた。
こちらで小説を展開している
東京装甲少女EPISODE-0という作品ですが
物語の初まりのOpening Part から
現在のストーリーまで今の所
【無料公開中】です。
是非、東京装甲少女
という世界観の伝わる
始まりから
お読み頂ければ幸いです。
今後は有料化も予定しておりますので
期間限定の今のうちに
お読みい頂ければ幸いです。
よろしくお願いいたします。
ここから、初めのストーリーを読む
※お知らせ👼
現在こちらで小説を展開している
東京装甲少女という作品ですが、
こちらにはお話の基になるデジタルアートNFT
作品があります。
そしてその作品が
2024年4月に行われましたNYCで大規模開催された
https://www.nft.nyc/という展覧会で
展示されました🎊
皆様のご協力を頂きこの度展示して頂く事が叶いましたので
また来年も展示されるのを目指してまいりますのでご協力
よろしくお願いいたします。
ありがとうございました🙇
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