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東京装甲少女 EPISODE 0  第8話  【 顔役 】



【ちょっと、あんた!!あんた 

 しゅうちゃん? 
 しゅうちゃんじゃないのかい、、、、、、?】




杖を突いた年老いた女性は薄暗い中、
父に向かい必死に話しかけてきた。


父は初め暗がりだったので、良く見えず怪訝そうな顔で老女を見つめたが、こう、答えた、、、、、。




秋水
【 、、、、、 時さん、、、、、?】


時恵
【そうだよ!あたしだよ!!
 あんたどうしたんだい?
    忘れちまったってのかい?まさか私の事?



秋水
【 時さん、、、、、本当に時さん? 】



時恵
【 そうだって言ってんだろ?
  だから、あたしだよ!! 】



父は私を母に預け、杖を突いた女性に駆け足で
近づいた。



秋水
【 時さん大丈夫かい?
  こんなところでなにしてるのさ?
  危ないから行こう
  さあ!さあ!
 】

  


と、秋水は、時恵の手を引き一緒に行こうと
誘った。


だが、時恵は老人とは思えない力強さと速さで
父の手を振り払った。


時恵
【 よしとくれ!!
  私は行かないよ!
 、、、、、。
  私が行ったら誰がこの店を守るってんだい 】


と暗闇の中、建物らしき入り口を指さした



戦禍で電気もなくなった街は


建物も吹き飛んでいる事もあり、
どれも同じ路地裏で同じ建物に見えたが目を凝らし立ち止まれば、


そこは紛れもなく

神保町の神田古書店街だった。




時恵は神田古書店街の裏通りにある

【 通り道 】という古本屋の店主だった。



自分の店の前を大急ぎで走る、ちらりと見えた

懐かしい秋水に声をかけた

のだった。


秋水もやっと子供の頃、父の大善と、
よく通っていたあの懐かしい古本屋の前だと
理解した。



秋水の母が14歳の頃に病で亡くなってからは


めっきり時恵の古本屋には

来なくなってしまったが、それまでは良く父と
来ていたものだ。




稽古ばかりで本など全く読まなかった父だが、
病気で床に伏していた
母から本を頼まれると【 通り道 】に2人で
母の本を買いに来た
ものだ。


塩沢家は、代々続く道場もさることながら

生粋の神田っ子という事もあり、


地場で育った大善は勿論、秋水や時恵
も、
江戸三大祭りの一つ

神田祭り



は、地元の皆にとって大イベントだった。



時恵
も幼いころから神田界隈で育ち、

父より年齢は一回り以上離れていたが、


大善は男勝りで江戸っ子らしい、時恵と、
とても馬があった。



お互い神田で育ち神輿の担ぎ手でもあった事もあり意気投合し、

義姉弟のような関係


で血のつながりはないが、遠い親戚のように感じていた。



時恵は、若い頃からじゃじゃ馬で、男相手に喧嘩し鼻っ柱も、とても強かったが、先代から続く書店の娘だけあり、

博識で、とても弁もたち顔も広かった。



正義感が強く仲間に慕われ何か困ったことがあれば


時さんに相談すれば何とかなる。



そんな神田界隈で知る人ぞ知るの

顔役

のような存在であった。


そんな以前のある日、大善は、


真紀からは、【 通り道 】に行って
時さんにまた、お勧めの本を選んできて
もらってきてくれと言われ、


いつものように咥えタバコのまま


秋水を連れて本を買いに【 通り道 】に
行った事があった。




大善
【  時さん、いるか~い?
   真紀がよ~
   今、神田の事を調べてるらしくてよ~ 
   将門さんの本あるかって聞いてきて
   くれって言われたんでよ~ 】



といつもの軽口をたたきながら
ドアを開け中に入った



時恵
【 大!!!おめーは!!何回言ったら
  わかるんだい!!!
  タバコは中じゃダメだって
  いってんだろ~が!!
  全くわからね~奴だね】



とドアを開けた近くのカウンターにいた時恵は、

幾度となく注意しても態度を改めない大善に向けて

怒り心頭で詰め寄ったが、

大善は何を怒ってやがると飄々とした態度で
応答した。


大善
【  まあ、いいじゃねーか?  
   んなのは 
   ところでよ~時さん
   だから将門さんの本はあるかい?   】


時恵
【 大!!!タバコはダメだよ!!
  早く消せ!!
ホレ!!早く!!】


時恵は大善に灰皿を怒りながら突き出した。


大善は渋々灰皿を受け取ってタバコを消した
うんざりしたのか



大善
【  まったくうるせーなガミガミと
   
そんなんだからいつまで経っても
   貰い手がいねーんだよ 
   ったく!!    】


と売り言葉に買い言葉で、いつものように
お互いの悪態を突いた。


時恵
【  あんたね~
   その吸ってるタバコの火の子で
   火事
が起きたらどうすんだい全く
   あんたはそんな想像力も働かないのかい!!
   
   これだから体育会系の筋肉馬鹿は嫌なんだ
   困ったもんだよ
   まったく!!   】

と罵声を浴びせコンニャロメと思った大善も


大善
【  いいじゃねーか、こんなきたねー店!
   少し燃えちまった方が、すっきりすんだろ?

   それに江戸っ子なんだから火事と喧嘩は
   江戸の華
って言うもんだろ 
   ハハハッ、、、、、】


と更に悪態を突いた。


秋水もまたいつものが始まったと呆れ顔をし
長くなるのを見越して、2人を無視して沢山の本の森の中に入ろうとしたが
その日の姉弟ケンカはいつもとは違った。



いつもの時恵だったら、一回りも違う馬鹿な弟が
また、ふざけたことを言っていると、
適当に言いくるめて終わりというのが
パターンだったが、、、。



一瞬沈黙になった後、時恵が普段の口調とは
明らかに違う静かな口調で話し出した

時恵
【  、、、、、、、、、。
   あんたね、物事には言っていい事と
   悪い事があるんだよ、、、、。
   

この店の本は私の子供であって命だよ


   本を読まないあんたにはわからないかも
   しれないけど
   私の人生を掛けて手塩にかけて見つけて   
   お嫁に出してんだ。

   人には理解されないかもしれないが
   

私にとっては命よりも大切     なんだ、、、、、。


  それにこの店もあんたかりゃ見れば
  オンボロかもしれないけど私にとっては

ここが人生そのもので私なんだ


   


   あんた、武術家のくせにそんなことも
   解らないのかい


   自分にとって大事な物が他の人にとって
   大事な物とは限らないけど、

他人の大事な物を簡単に        踏みにじろうとするやつは       私は絶対に許さないよ!!       帰んな     】



大善もさすがにいつもの時恵との軽い冗談では

済まされないと感じまずいと思ったのか、


普段あまり謝るという事をしない
頑固な人だったが取り付く島がない様子で謝罪
始めた。

大善
【  時さん、、、、なんだよ  
   いつもの江戸っ子のノリじゃねーか ? 
   そんなに怒る事ねーじゃねーか~?
   冗談だよ悪かったな  
   すまねー!!  すまねー!!    】




と何度も謝っていたがその日はうるさい帰れ!!
の一点張りで



結局帰宅し、事の顛末と本を買ってこれなかった話をすると


母に伝えた所、


【 あらあら、              あなたたち、らしいわね 】

笑われたことがあった。




その後も、【 通り道 】に幾度となく通ったが、


大善はそれ以降は特に謝ることはなく、時恵もそのことに特段触れる様子もなく、全くあの出来事は
何だったのだろうか?



というくらい、

いつもの2人のまま



だったが、



その出来事以降、ひとつ変わった事は、


大善が店の前の灰皿でタバコを消してから


入るようになった事だった。




東京装甲少女 EPISODE0  第9話へ続く、、、、、。



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物語の初まりのOpening Part から
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ここから、初めのストーリーを読む



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