世界をスローモーションで眺めてみる
「さみしい夜にはペンを持て」を読み終わったとき、胸の奥の方があたたかくなり、自然と涙がでた。
書くことについて色々な気づきがあるだけでなく、物語としても素敵だった。
やさしい文章に、可愛いイラスト。すべてひっくるめて、美しい本だと思った。
物語の舞台は、海の中。
海の中の描写が素敵で、私も海の中にいるような気分で読み進めていった。
お風呂上がりにハーブティーを飲みながら、寝る前までほっこり読みたいような、そんなやさしいお話だと感じた。
主人公は、中学生のタコジローくん。ヤドカリのおじさんとの会話を通して、日記を書きながら「自分との対話」を学んでいく。
書くことは、考えること、自分と対話すること。
自分と対話しながら書いていると意識したことはないけど、書くときはよく考えないと書けない。
考えているとき、自分と対話しているということなのかな。
書いたり消したりを繰り返して、自分と向き合ってじっくり書いていくと、自分のことがわかってくる。
書くことは、考える気力、体力がいるから大変なこともあるけれど、そうして得られるものは、特別な価値があると学んだ。
悩みごとをふたつに分けて考えることが自然とできるようになったら、生きやすくなるだろうなと思った。
アドラー心理学の本に書かれていた、課題の分離という考え方に似ているような気もする。
心配ごとを考えている時間をなるべく減らして、自分にできることに集中する。今あるものに目を向けていく。これは来年の目標にしようかなと思った。
この本の最後に、嬉しいサプライズのような贈り物があったことに、感動した。その時が来るまで開けずに、大切に手元に置いておきたい。
ずっと触っていたいような、抱きしめたくなるような、そんな特別感のある本。
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「世界をスローモーションで眺める」という言葉が印象に残っている。
今年もあっという間に年末になってしまって、驚くほど早くて。
でも、書こうとして過ごすのと、何も考えずに過ごすのでは、同じ時間でも違うものになるのだと気付いた。
書こうとすると、出来事をスローモーションでとらえて見ることができる。
その時に得た感情や考えを書いていくと、時がゆっくりと伸ばされていき、自分の宝物になるような感覚がする。
来年も、その一瞬一瞬の時を大切に、過ごしていきたいなと思う。
そして、またあれこれ書いていきたい。