見出し画像

自由が丘で藤井隆(さん)のパーカー

♪You should be kappo!
You have to kappo!
ヒマじゃないから〜♪

Like a Record round! round! round!/ kappo!

私のテーマソングの一つに、藤井隆が椿鬼奴とレイザーラモンRGと一緒に歌うkappo!がある。なぜテーマソングなのかというと、私は自分が藤井隆に似ていると勝手に思っていて、なおかつ結構な頻度で周りからも言われることがあるからだ。

藤井隆との共通点は何か。それはジェンダーが不明という点だと思う。彼が過去に男性同性愛者的な役を演じたことや、アイドルのオタクであること、そして金髪のかつらをかぶって別人格を演じてバラエティ番組をやっているなど、彼はイメージや役割、ジェンダーに縛られずいろいろな形に姿をかえる様子に似ていると思う。


「ねえ、環!」
地元の駅で、小学校の同級生であるまつりから声をかけられた。数年ぶりの再会で、一瞬誰かわからなかったが、笑ったときに見える綺麗な歯並びを見たらまつりだと思い出した。

「何年ぶり?てか、なんで気づいたの?」
「久しぶり!角を早足で直角に曲がるのなんて、環くらいしかいないでしょ。あとは藤井隆くらい?」
よくわからない。ただ、まつりには私が藤井隆と同じ歩き方をしているというように見えるそうだ。

私は小学校のときに若干いじられていた。それは出生児の性別が男性であるにも関わらず、女の子の集団の中でも平気で遊ぶし、言動も「男臭い」感じではない。

普通にギャルみたいに話すし動くし、かわいいものも好きだし(犬のシールとか可愛い筆箱とか普通に集めていた)。だからといって女の子になりたいとかでもなく、スポーツで泥だらけになることも好きだから、昼休みは男子しかいないサッカーの試合に入って、ラフプレーとかしまくっていた。

そんな状態なので、最初は「オカマ」みたいないじられ方もしていたが、徐々にみんなの認識がバグってきて、「まあ環は環だから、どの集団にいても環なんだよな」となっていた。そんな感じで、私のジェンダー不明ポジションが確立したのだ。


そして別件。ある日、会社の後輩である紗枝からLINEがきた。
「Xのこの投稿、めちゃめちゃ環さんみたいなんですよね。脳内で環さんか藤井隆の声で再生されるんですよ。話し方そっくりですし」

その投稿は、ユーモアを交えながら世間に毒を吐くという内容のことが多い。この後輩からすると、私と藤井隆は話し方の雰囲気が同じなうえ、(プロとして仕事をしている藤井さんには非常に申し訳ないが)自分の世界観の中で世間を小馬鹿にしながらくるりと踊ってみせる笑いの取り方がそっくりなようだ。

ま、でもそりゃそうだ。私は藤井隆の芸を摂取して大人になった。世間への目の向け方も、人を笑わせる方法も藤井隆から学んでいるのだから同じになるだろう。そういえば親友の行天が、あまり面白くない人に私が絡まれていることにブチギレて、「うちの藤井隆に何やってくれてんだよマジで」って横浜の駅に言い捨ててたときは最高だったな。

そんなこんなで、私にとって藤井隆は目標であり尊敬する人だ。そして、ジェンダーのことで周りから変な目で見られる私を、心の底の底から支えてくれたのが彼の存在だったのだ。「俺は間違っていない。絶対に面白い、イケてる、大丈夫」と、藤井隆を考えながら自分に言い聞かせた。



ある日、先ほど出てきた紗枝と自由が丘を散歩していた。よく晴れた日で、自由が丘にはニコニコとした多くの人と、街頭演説をしている政治家がいた。上京したての紗枝は自由が丘を気に入ったみたいで、「良いところだな〜」と何度も言っていた。

そしてあるギャラリーの前を通ったとき、中にかわいい洋服が見えた。その洋服にはいろいろな刺繍がしてあって、よくみると平成の初期にやっていたテレビ番組のオマージュのような柄が刺繍されている。かわいい、かわいすぎる。紗枝とギャラリーに入った。

ギャラリーは20畳くらいの広さで、そこまで大きくはない。壁やラック以外に吹き抜けの天井から吊るされたワイヤーにも洋服がかかっていて、どれも可愛い。電波少年、欽ちゃんの仮装大賞、E.Tなどなど、懐かしくもくすっと笑ってしまうものがパーカーやロンT、帽子に刺繍されていた。

その中で、一際目立っている洋服を見つけた。それは、藤井隆の「ナンダカンダ」という代表曲のジャケットが刺繍されている。かわいいにも程がある。そして店員さんにいった。「すみません、私は藤井隆なんですよね。これ試着して良いですか?」痛いファンだ。


試着する。はちゃめちゃ似合う。グレーのパーカーにナンダカンダのジャケットが刺繍されていて、着心地も良い。その日履いていたオレンジ色のナイロンパンツにも似合う。これは私のために作られたのではないか?

運良く、作者のクミンアヤさんにもお会いすることができた。藤井隆への並々ならぬ愛をお伝えし、パーカーを着て見せた。

「え〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜似合う〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」
「ですよね!!!!!!!!!これは、俺のために作ってくれたとしか思えません!!!!!!」

でかい声で二人して笑った。あ、紗枝はずっと笑っていたからようやく笑い声が3人になったといった方が正しいか。

私はまた藤井隆に救われている。今の自分がめげずに、不貞腐れずに、世間に押しつぶされずに形成され、そして今の生活にも彩りをくれているのは彼の存在なのだ。

ああ、藤井隆とご飯行きたいな。感謝を伝えたいんですよね、本当に。


いいなと思ったら応援しよう!