連作短編小説「雪ふる京のうつろい」『白木の棺』
帰りが遅そうなるというてはりましたが、主人はまだ帰ってきはりません。
夕方から、雲行きがおかしいと思っておりましたら、陽が暮れてから雪が降って来ました。
この季節に粉雪は珍しくありませんが、今夜降っているのは牡丹雪です。
庭の松に、牡丹雪が降りかかって、かさかさと音を立てております。
庭を見れば、一面の銀世界です。
もうだいぶ積もってきていることでしょう。
お供を連れているとは言え、年老いた身には寒さも堪え、足元もおぼつかなくて難儀しているのではないか気が気でなり