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大河内健志短編集

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記事一覧

プロローグ『仮面の告白 第二章』

時代が変わった。令和になった。 かつての私は、昭和の代名詞となってしまった。 小説家を超…

大河内健志
4か月前
5

短編小説「地下鉄が黄昏の鉄橋を渡るときに思うこと」

やっと一日が終わった。帰りの地下鉄御堂筋線は、混み合う。 特に淀屋橋から梅田方面に行こう…

大河内健志
4か月前
22

すべてはシナリオ通りに『仮面の告白 第二章』

時代が変わった。 昭和が終わって、平成になり、やがて令和になった。 かつての私は、昭和の…

大河内健志
5か月前
7

私は生まれ変わった『仮面の告白 第二章』

私は生きている。 賢明な読者なら、もはや説明することはないと思うが、『豊穣の海』にその手…

大河内健志
5か月前
12

短編小説「行く当てのない旅に出てしまったボク」

耳鳴りがするほどの静寂。 何も聞こえない。 吸い込まれるような暗闇。 もう何も見えない。…

大河内健志
5か月前
6

短編小説「目を閉じて広がる景色」

遠くで若い女性の引き裂くような叫び声がした。 全身に鉄の鎧をまとった大男がベッドの周りを…

大河内健志
6か月前
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連作短編小説「雪ふる京のうつろい」『白木の棺』

帰りが遅そうなるというてはりましたが、主人はまだ帰ってきはりません。 夕方から、雲行きがおかしいと思っておりましたら、陽が暮れてから雪が降って来ました。 この季節に粉雪は珍しくありませんが、今夜降っているのは牡丹雪です。 庭の松に、牡丹雪が降りかかって、かさかさと音を立てております。 庭を見れば、一面の銀世界です。 もうだいぶ積もってきていることでしょう。 お供を連れているとは言え、年老いた身には寒さも堪え、足元もおぼつかなくて難儀しているのではないか気が気でなり

短編小説『流氷の鳴き声』

彼女がさっき言った「自由」、どういうことなのだろう。 確かに、彼女は札幌に出てきて「自由…

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私の投稿スタイルについて

2020年4月より、NOTEに投稿をはじめてから、2年余り経ちました。 現在までに340作品を投稿し…

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今すぐ、会いに行きます(小説『天国へ届け、この歌を』より)

「香田さん、ちょっと」 青山部長に呼ばれた。 別室に来るように言われた。いつもは柔和な表…

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心は、あの頃のままなのに(小説『天国へ届け、この歌を』より)

香田美月が、このマンションに来たという痕跡を全て消し去った。 土曜日に、単身赴任をしてい…

7

私の生き様(小説『仮面の告白 第二章』より)

私は、皆があっと驚くような馬鹿げたことしてみたかっただけなのだ。 世間が、どんなに頭をひ…

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はじめての音楽フェスでボーカルが急に歌えなくなる(小説『天国へ届け、この歌を』よ…

ワタシたちは、現役高校生の青春パンクバンドとして、人気が出てきました。色々なライブにも、…

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嵐のあとに(小説『天国へ届け、この歌を』より)

心地よい寝息が聞こえる。 このまま余韻に浸りたい。 眠っている美月に降り注ぐ月の光を眺める。 記憶が断片的に蘇ってくる。 簡単な食べ物や美月の下着などを買いに近くのコンビニに行った。 コンビニを出ると、あの嵐のような暴風雨は嘘のように空はすっかり晴れ上がっていた。 月が出ていた。 見事な満月だった。 妻の美由紀に知らせないと。 ポケットから携帯電話を取り出そうとしたが、見つからない。 どうやら、部屋に携帯電話を置き忘れたらしい。 残念だけど仕方がない。