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宮本武蔵はこう戦った

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#佐々木小次郎

秘剣 つばめ返し!(『宮本武蔵はこう戦った』より)

おもむろに、佐々木小次郎は背負っている刀を下から前に回し、鐺で大店の軒先にある燕の巣をはたき落した。

白っぽい土煙をたてながら、巣は地面に落ちた。

砕けた。

砕けた中に、何やら黒く動くものが、五つ六つ混じっていた。

それは、よく見ると、子燕であった。

まだ飛ぶことも出来ない子燕は、歩くこともやっとのことで、一つに集まって、唯か弱く泣くばかりであった。

小次郎は、落とした巣には一瞥もくれ

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本能には勝てない!(『宮本武蔵はこう戦った』より)

本能には勝てない!(『宮本武蔵はこう戦った』より)

「恐ろしい」

武蔵は、全身が強張って身動きが出来なくなってしまった。

小次郎は、目の前で見た「つばめ返し」の技を私との試合に使うに違いない。

彼は、私の太刀よりはるかに長い太刀で、遠い間合いから攻撃をしかけてくる。

相手が、遠い距離から仕掛けてこられると、こちらでは、明らかに届かないと分かっていても、今までに経験したことのない長さの太刀であることが頭に刷り込まれているので体が勝手に反応して

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勝負あり!(時代小説『宮本武蔵はこう戦った』より

勝負あり!(時代小説『宮本武蔵はこう戦った』より

 一刀両断、斬り下ろす。

むぅ、手応えがない。

突進してきた武蔵が急に身体をのけ反らせ、砂の中に沈み込むようにしてかわした。

一太刀で仕留めることが出来なかった。

しかし、小次郎には、まだ心に余裕があった。

武蔵は、小次郎の間合いに踏み込んで入っているが、彼が打ち込むことが出来る間合いには入っていないからだ。

愛刀長光は三尺三寸、武蔵の木刀はせいぜい二尺五寸もあるまい。

一足分の距離

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武蔵、目を覚ませ!(『宮本武蔵はこう戦った』より)

 武蔵は、目を閉じたままでいる。闇夜の中にいる。

 力の限り、砂の上を走る。

 小次郎の顔が段々と大きくなる。

 燕返しの前触れである横に払う太刀の動きがない。小次郎の太刀は大上段、頭上のまま。

 それでも走る。

 目の前が小次郎の顔で一杯になった。

 ハッ!頭上に、稲妻。

 斬られる!

 思わず目を閉じる。

 思いっきり足を踏ん張る。砂の中に両足を打ち込むように、突き刺す。体が

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武蔵の読みと誤算(『宮本武蔵はこう戦った』より)

武蔵の読みと誤算(『宮本武蔵はこう戦った』より)

 二人の距離が、三間を切った。

 ここまで入ると、小次郎の初太刀が来るはずだ。左から右にかけて顔の前を初太刀が横切る、あの燕返しの前触れが来る。しかし、それに惑わされてはいけない。間髪入れずに、次の太刀が来るからだ。初太刀に反応して、脇構えから木刀を上げてしまうと、右胴はがら空きになってしまう。そこを小次郎は、すかさず次の太刀で、難なく右胴に切り付ける。それ故、小次郎の初太刀には反応してはいけな

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