もし松田聖子の「風は秋色」が古典和歌だったら
先日、インスタのストーリーで“好きな松田聖子さんの曲”を募ってみました。
ありがたいことに複数の方から回答をいただいたのですが、さすが名曲だらけの聖子ちゃん。回答がかぶりませんね…!
今回はその中から、今の季節にもぴったりな「風は秋色」を和歌にしてみました。
恋に恋する女の子の歌
私自身、聖子ちゃんが大好きで、この曲もよくカラオケで歌ってきたのですが…
改めて歌詞をよく見ると、これは相思相愛の歌?それとも失恋の歌?と、よく分からなくなってしまいました。
冒頭のサビでは、幸せな二人旅を楽しむ主人公。
しかしAメロに入った途端、急に切ないフレーズが。
さまざまに考えを巡らせた結果、当時の聖子ちゃんが18歳であることからも、これは恋に恋するナイーヴな女の子の歌だと私は解釈しました。
告白する勇気がないのか、脈ナシで友達止まりなのか…。
片想いが進展しそうにない主人公は、いっそ彼への想いを忘れようと海を訪れる。
そしてデート中のカップルや見知らぬ青年を見ては、例の彼、あるいはまだ見ぬ素敵な誰かとの二人旅を妄想する。
そんな歌ではないでしょうか?
潮風に切ない想いを重ねて
先に触れた“指に髪に離れない”というフレーズ、独特な表現ですよね。
海辺ということもあり、私は潮風に吹かれる聖子ちゃんヘアを連想しました。
ベタベタと髪にまとわり付くように吹いてくる潮っぽい風。
そこに、しつこく心から離れない切ない思いを重ねてみました。
映像的な要素を与える序詞
序詞(じょことば)とは、ある言葉のために前置きを入れる、和歌の技法のひとつです。
今回詠んだ和歌では、「揺るぎたる 髪にまつはる しほかぜの」までが「からき」の序詞になっています。
このように、前置きでしかない序詞が和歌の半分以上を占める例は珍しくありません。
こちらは「新古今和歌集」に収録されている一首。
萩の枝もたわむほど降りる露のように、今朝儚く死んでしまったとしても、(あなたとの関係は)顔色に出したりしませんよ。
と、恐らくバレてはいけない恋について詠んだ歌でしょう。
この和歌、要するに言いたいことは「死んでも顔に出さないよ!」という最後の二句だけ。
しかし前半の序詞があることによって、和歌に映像的な要素を与え、情景を頭に浮かばせる効果があるのですね。
そう考えると、序詞って素敵だと思いませんか…??
今回はこのちょっぴり回りくどい序詞を使って、ふわふわ揺れる聖子ちゃんカットのイメージを和歌に乗せてみました。
揺るぎたる 髪にまつはる しほかぜの
からき思ひは 忘れがたきや
※解説は冒頭のインスタ参照