父は富士母は相模野七五三 岡田耕
七五三の由来は平安時代から行われて来た三歳の「髪置き」、五歳の「袴着」、七歳の「帯解き」の儀式にあり、昔は子供の死亡率が非常に高かったため、このような節目に成長を祝い、子供の長寿と幸福を祈願したものが七五三というかたちで今に受け継がれて来たと言われる。また子供の死亡率が高かった時代では、「七歳までは神の子」とも言われ、子供は「神様から授かった預かりもの」として扱われて来たとも。
我が子の初の七五三を迎えた作者にも心の奥にどこかそんな思いがあるのだろう。そして神から授かったこの子の父はいつも目の前に雄々しく聳え立つ富士で、母は穏やかで豊穣なこの相模の大地と、産土の神々への畏敬と感謝の思いが。
今日ではこのような信仰は影を潜めてしまったが、まったく失われてしまった訳ではなく、更に幼い我が子の生長を願う親の気持は昔と少しも変りはないだろう。