白秋「あめんぼの歌」のワ行の不思議
【スキ御礼】「「あめんぼ」に託した白秋の想い」
北原白秋の「五十音(通称「あめんぼの歌」)の最終の第十連は、
「わい、わい、わつしょい。ワ、ヰ、ウ、ヱ、ヲ。
植木屋、井戸換へ、お祭だ。」
仮名でいうと、
「ワイ、ワイ、ワッショイ。ワ、ヰ、ウ、ヱ、ヲ。
ウヱキヤ、ヰドガへ、オマツリダ」
注目するのは、最終行の「オマツリダ」の部分。各連のこの部分は必ずその連の五十音の行の音が2音以上含まれている。(注1)
しかし、ワ行の連にはそれがない。
白秋は、「芸術自由教育の根本は先ず此の音の言葉の祭に児童を自由に踊らせることにある」という。(北原白秋「将来の児童教育」『緑の触覚』)
白秋にとっての祭の意義は、「五十音」を収録する童謡集『祭の笛』のはしがきに書かれている。
この「もうひとつ」が「五十音」に代表される芸術自由教育の見地に立った童謡だった。
ワ行の連の最後は、例えば「輪を描く(ワヲヱガク)」や「笑ひ声(ワラヒゴヱ)」など、ワ行の音を入れた言葉を置くことも出来たはずだ。
白秋は、子どもを言葉の祭に踊らせるために、子どもの夢を育てたいために、そのメッセージとして「五十音」の最後に、初めから「お祭り」という言葉を置きたかったのではなかろうか。
注1)各連の最後のことば・・・「およいでる」「かれけやき」「さしました」「とびたった」「なにねばる」「ふえをふく」「みもしまい」「よいのいえ」「るりのとり」「おまつりだ」
童謡集『祭の笛』は、はしがきの後に同名の童謡「祭の笛」から始まっています。
はる さんが朗読されていますので、ご紹介します。
(岡田 耕)