歳時記を旅する28〔雲の峯〕後*峰雲やいまも菓子屋は市電前
磯村 光生
(平成六年作、『花扇』)
「阿波太郎」とは、讃岐地方での積乱雲の別名。「阿波太郎が南に立てば天気が続く。」ということわざがある。
讃岐地方と瀬戸内海を挟んだ岡山県の岡山市電の電停「中納言」の前には、吉備団子の「廣榮堂武田」がある(※)。
安政三年、武田半蔵が茶道を通じての友人でもあった池田藩の筆頭家老・伊木三猿忠澄の依頼を受けてきびだんごを商品化したのが始まり。出来上がったきびだんごは味に優れ、絶好のお国名物として池田藩の国印である釘貫(くぎぬき)を商標とすることを許されたという。(同社HP)
句は、白い大きな雲の峰と、瓦葺の小暗い小さな和菓子屋、そしてその軒の前を路面電車が車と人を分けて唸りながら走る、そんな昭和の景を呼び起こす。
※廣榮堂武田 中納言店は、2023年5月に閉店になっています。残念。
(岡田 耕)
(俳句雑誌『風友』令和四年七月号「風の軌跡ー重次俳句の系譜ー」)
写真/岡田 耕(廣榮堂武田 中納言店 2019年1月撮影。手前に市電のレールが写っています。)
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