鑑賞*秋澄むや波は地球の音を立て〔拡大版〕
【スキ御礼】鑑賞*秋澄むや波は地球の音を立て
石塚 光子
秋の空の澄んだ海辺。
あたりは波の音しか聞こえない。
その波音は地球の音だという。
地球は宇宙に漂う塵やガスが集まって出来上がったもの。
地球ができたのは、約四十六億年前。
海ができたのが約四十四億年前。
大気は地球の表面に落ちてきた隕石に含まれていた物質が衝突の時に蒸発してできたものという。
海があっても大気がなければ音も生まれない。
波の音は海ができた頃からあるのだろうか。
地球が生まれてからの四十六億年間を一年に縮めて考えると、太陽と地球の誕生が一月一日。
海ができたのが一月十六日。
そして私たちの祖先ホモ・サピエンスの誕生は約二十万年前の十二月三十一日午後十一時三十七分。
テレビなら紅白歌合戦が終わろうとする頃に我々の祖先は生まれた。
その歴史は「ゆく年来る年」の除夜の鐘までの僅か二十三分間でしかない。
句にあるのは、大気と海とその音だけ。
そこに原始地球の姿を感じたのだろう。
人類と地球の歴史の長さを比べれば、波の音を地球の音と言うのは決して大袈裟ではないことがわかる。
それより気になるのは、その先の「ゆく年くる年」が終わる頃、人類がどうなっているのかということ。
波の音は続くのかもしれないが、我々人類は今のままでは、地球に居続けられるのかどうかは甚だ心もとない。
澄んだ秋の空の下で波の音を聞きながら、地球の誕生からの歴史、果ては地球の環境問題にまで思いが及ぶ。
☆トップの画像は、プラネタリウムで撮影したものです。そのプラネタリウムのレポートを 夢野剛 さんがされています。ご紹介します。
(岡田 耕)
(俳句雑誌『風友』令和四年十一月号)
写真/岡田 耕
(コニカミノルタプラネタリアYOKOHAMA)
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