歳時記を旅する52〔夕立〕中*拭ひ合ふ肩の雫や初夕立
佐野 聰
(平成十年作、『春日』)
浮世絵「大はしあたけの夕立」(歌川広重『名所江戸百景』一八五七年)は、隅田川下流の浜町あたりに架かる新大橋の図。にわかに押し寄せた黒雲とともに降ってきた夕立に、あわてふためく通行人の姿が描かれている。橋の上には五人。筵をかぶり前かがみの男、笠をかぶり腕まくりする男、一本の傘に頭を寄せて歩く三人の男、そして傘をすぼめて歩く女性らしき二人連れ。
句は、夕立が止んだところか、屋内に入ったところ。夕立の季節になったことを語り合っているにちがいない。
(俳句雑誌『風友』令和六年七月号「風の軌跡ー重次俳句の系譜ー」)
☆「大はしあたけの夕立」を岡本かのん さんが鑑賞されています。ご紹介します。
(岡田 耕)