「選択と集中」は諸刃の剣?
経営戦略を学びはじめの頃に習う基礎概念のひとつです。
コア事業に経営資源を集中させ、事業価値を高めることを言い、短期間でコスト削減や収益改善を実現し、飛躍的な成長を見込むことができます。
ただ、同時にリスクもあるのです。
「選択と集中」が広まるきっかけは、あの会社!?
諸説がありますが、この戦略が広まったきっかけは、ゼネラル・エレクトリック(GE)社のカリスマ経営者・ジャック・ウェルチ氏だと言われています。
GE社は市場で1位・2位になれる見込みのある部門だけを残し、それ以外は縮小・閉鎖することを決断しました。結果、業績は大幅に向上し、この考え方が広まったのです。
ただ、ウェルチ氏は「選択と集中」という言葉は使っていないどころか、むしろ彼がCEO時代、多くの新事業に着手するなど多角化投資を進めていました。
実際のところ、将来的に業界1位・2位になりえる事業に集中するとの考え方を示しただけに過ぎません。
しかし、いつしかこの「選択と集中」という考えは、多くの経営者に受け入れられ、経営戦略の歴史にも残るものとなったのです。
「選択と集中」にも思わぬ落とし穴が…
さて、この「選択と集中」という考え方ですが、"諸刃の剣"な側面があります。それは同様の戦略を取って失敗した企業を見れば、明らかでしょう。
「選択と集中」のリスクは、特定事業に依存度が高まり、柔軟性が低下することです。この戦略が行き過ぎると急激な環境変化に対応できなくなります。
日本ではSHARPなどの事例が有名です。SHARPは液晶テレビ事業に対して集中的に資源を投下したことで、一時的に「液晶はSHARP」と言われるほど成功しました。しかし、リーマンショックなどの環境変化が起きたことで収益が悪化し、苦しい状況に陥ってしまっています。
まさに「選択と集中」は環境変化に弱いのです。
また、「選択と集中」を進めると、当然、コア・ノンコア事業の再編に取り組むことになり、社内の労働環境は変化します。結果、社内から反発が生じるだけでなく、人材の流出や離職、株主の不安や不満も出てきます。
「選択と集中」は短期間で収益改善などが期待できますが、こうした落とし穴があることを忘れてはいけません。
「選択と集中」は万能ではありません。大事なのは、今、本当にこの戦略を採用すべきなのかを問い直すことでしょう。
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