アート徒然草①指導?環境?こども絵画のコツ~ 編
当教室も2024年で12周年目、出張ワークショップはもとより、園で保育士さんや教員対象の絵画造形研修の講師もさせていただく機会も多くなりました。
実は私自身も幼稚園教諭時代、勤務していた園にて絵画造形研修で基礎を学んだ一人でもあるのです。
当時、年に数回、研修講師として来られていたのは、
辻 正宏先生でした(大阪府立大学・聖母女学院短期大学 元講師)
私の最初の師匠と言っても過言ではありません。
新人の頃、年長クラス担任だった私は、1学期に子どもたちが描いた絵をずらーっと教室の床にならべ、辻先生に見ていただく機会がありました。
自分なりに題材を考え、がんばっていたので、ドキドキしながらお待ちしていると…
辻先生が教室に入って来られました。
パッと絵を見て開口一番
「あかん!話にならん!」と言い放ち
ぷいっと教室から出ていかれました・・・
唖然…それなりに頑張っていたのにぃ~ショックぅー涙
私は何がいけなかったのか、どうすればよかったのか、頭ぐるぐるぐる………
1度しかまだその時は研修を受けていなかったこともあり、
目指す方向がまったくわからない、マイナスからのスタートでした。
その日から私は良い絵画造形指導とはなんぞやと
試行錯誤する毎日・・・(もう怒られたくない~笑)
当時の辻先生の教材本や、先生が慕われていた花篤 實先生(大阪教育大学名誉教授、元美術科教育学会代表理事)の共著本を読みこみ、手探りで実践を繰り返していました。
元々、図工・美術は得意分野だったこともあり、どんどんその奥深さにのめりこみ、こども達の表現の面白さがやみつきに…本当に楽しくて…
3学期の研修では、並べられた子どもたちの作品をぐるっと見渡した辻先生が一言、「見たらわかる」と…
表情と声色からたぶん…まーまーやな、的な?言葉をいただきました。
(とにかく怒られなくてよかった、ホッと胸をなでおろすw)
こども達の絵画を全国教育美術展や世界児童画展に出展し、指導者賞などたくさんの賞もいただきました。
なかでも、園児Aちゃんの作品が全国教育美術展での特選に選ばれ(応募約10万点中 特選は約2,400点)
その上、作品がNHKのテレビで紹介されたり、
月刊誌『教育美術』の表紙として特選の中から選ばれる(10万点中の12点)という嬉しいできごともありました。
当時、指導者として、とても運がよかったなあ~奇跡だなあ~思いました。
しかし、なんと、次の年また別の園児Sくんが同じく受賞し、奇跡が2年連続になりました。(10万分の12が、2回連続)
あれ~まあ~嬉しい!もちろん園児の力が最も凄いのですが、さすがに、それは運や奇跡だけではなかろう…と、
20年の経験を重ねた今なら、そこそこ自信を持って言えます。
何故ならば…
素敵な絵は、より良い「空間づくり」から生まれると言えるから。
そもそも「素敵な絵」とは何でしょう。
画展に入選=素敵な絵 という単純なものではありません。
こどもが心の底から表現したいと思ったもの(題材)
魂から描けたその子なりの表現(構図・形)
いきいきとした筆跡や色がのっている(楽しさ・面白さ)
それが私が思う 『素敵な絵』です。
すべてのこども達にそれぞれキラリとした素晴らしい想像性や表現能力があります。
じゃあ、画用紙渡して自由に描かせていたら、ええやん?
絵の具とクレパスを置いて「自分の好きな絵を描きー」と伝えて、あとは見守る…
たまにはそんな時があってもいいかもしれませんが、毎回それじゃあ、ただの放任、または絵画の時間じゃなく「自由時間」です。
絵画造形とこども達の心をあずかる者として、そのキラリとした能力を引き出すためにも、「空間づくり」に注力しなければいけません。
では、「空間づくり」とはなんぞや…
例えば、絵画活動を「舞台」に置き換えてみましょう。
演者=こども 監督・演出家=先生
小道具=画材 劇場=部屋
内容=画題や案
演出=導入・最小限のルール・言葉がけ
こども(演者)が最小限のルールでのびのびと自由に表現できる環境をつくるのが先生(監督)の仕事、予想外のアドリブ大歓迎。
絵画(舞台)中は、先生の仕事は殆どないのです、心地よく安全な空間に保ったり、あるとしたら…
先生はこどもの表現の良いところを見つけ、褒め褒め盛り上げ役に徹する。
これら一連の流れ・環境をトータルして「空間づくり」と私はよんでいます。
すてきな「空間づくり」を目指すのに特に大切なポイントは
先生(監督)の
演出=導入・最小限のルール・言葉がけ です。
簡単に説明しますと…
①導入時
できたら題材の本物をこども達に見せます。(本物を用意できない場合は、図鑑や写真集をたくさん見てもらいます)
触ったり香ったり、発見したり…
実はイカやとうもろこし、調理する前の状態を触るのが初めての子がとても多いです。キャッキャと喜んで、本当に楽しそうです。
ここで、こども達は視覚・触覚・嗅覚・聴覚で色々感じます。
あれこれ気づいたことを話しながらボルテージが上がったところで…
②最小限のルール
先生は「重ね塗り」「塗り広げ」など本日のルールを伝えます。
筆をあまり使ったことがない場合は、少しだけ筆使いのデモンストレーションします。ただし、題材の絵の「見本」は描かないです。
こども達が描きたいものは横から見た題材だけじゃなく、上から下から、遠近、俯瞰、透視だってします。人によって形や色の感じ方も違います。
こども達なりの表現がとても大切で、それこそが魅力!だからです。
(見本を描いてしまったら、みんなマネしちゃいますよね笑)
③言葉がけ
描く直前にこども達がわくわくするような言葉をかけ、楽しい空気感を作り
いざ!絵画(舞台)へ送りだします。
後はこども達を信じて自由にのびのびと…
「間違った―」「わからないー」という子もいるでしょう、そこは先生の言葉の魔法で励まします。
あとは、作品の良いところをみつけ声をかけ、アイデアを出し合ったり、一緒に楽しむのみ!(なので、先生の見る力も大切)
ちなみに、小道具=画材 にもコツがいります。
題材によって、クレパス、水彩絵の具、ポスターカラー、墨、割りばしペン、サインペン、コンテ、etc
絵の具の色、画用紙の色、
それぞれ適した画材があります。(長くなるので今回は割愛)
「空間づくり」のチェックポイントは…
題材に適した画材は選べているか。
題材の元となるものを、あらゆる感覚で熟知できたか。
どれだけみんなが機嫌よく、自由に描ける状態になっているのか。
それらの環境がばっちりであれば、
「素敵な絵」傑作は、小さな手から次々と生みだされます。
なので常々、私が大切に思っていることは、
よい指導ではなく「空間づくりのスペシャリスト」を目指していこう。一緒に楽しんで。
ということなのです。
(監督は良い環境さえ整えたら、あとはどーんと演者に任せればいいんですよw)
話は元に戻りまして…
幼稚園教諭として数年たったある日のこと…
辻先生から一本の電話を受けました。新しい出版本の写真協力を園全体でしておりましたので最終確認の内容でした。用件が済み電話を切ろうとした時、辻先生がこう言いました
「ところで、おまえな…絵画造形の先生になれるで…」
「えっ…ほんまですか?ありがとうございます!」
と、心で小躍りしながら電話を切りました。
辻先生はめったに人を褒める方ではなかったので、そのような言葉をいただけたことは本当に貴重で、心底嬉しかったです。
その数週間後…
辻 正宏先生は病により天国へ旅立たれてしまいました。
悲しく早すぎるお別れでした。
あの電話が私にとって最後の会話になり、
最初で最後にお言葉をいただけたこと、深く心に残っています。
それが、わたしにとって、
現在の姿、アート講師をめざす
最初のきっかけでした。
今では、辻先生がされていた絵画造形の研修講師として園へ訪問させていただいていることも、とても感慨深く嬉しく感じます。
今後も、教えていただいたことを基礎として、これまでの経験で得た自分なりの答えで、こどもたちや保育にたずさわる方々の笑顔のためにも、アート講師、研修講師、リサイクルアーティストとして、精進して参りたいと思います。
次回は、「先生お困りあるある」「絵画造形のモヤモヤ」など書いていきたいと思います。
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