強迫性障害(OCD)の感染症対策方法
現在、コロナウイルス感染の恐れから、多くの人がコロナに関するニュースを見られていると思います。感染予防の観点から推奨されている手洗いや消毒などを頻繁に行なっている方も多いと思います。
この状態、強迫性障害(OCD)をお持ちの方にとって、特に大変な時だと思います。OCDから回復をされた方も、何度も手洗いをしたり、頻繁なアルコール消毒や自粛を推奨されるのは、再発のキッカケになりかねません。
どの頻度の消毒、手洗いなどが推奨された範囲で、どこまでが過剰な不安や強迫行為なのか、OCDをお持ちの方は、ご自分で判断をすることが特に困難となります。
今回は、コロナの報道が続く中、強迫性障害をお持ちの方のサポート方法を紹介いたします。
(2020年 4月に米国心理学会が臨床心理士・精神科に向けて推奨したものを参照しています)
1. 不安を煽るような報道に触れる時間を減らす
OCDをお持ちの方は、コロナの感染情報をニュースなどで、頻繁にチェックしたい、という願望があるかもしれません。
その、感染状況を常に把握したいという強迫観念と戦うために、ニュースに触れる時間を制限します。無理やり制限を課すのではなく、どの頻度で、どのくらいの時間ニュースを見て良いのか、ルールを作成します。ご本人以外が介入される場合には、制限時間のルールを作るよう、指導をしてあげてください。どの範囲なら制限が可能なのか、相談をして決定します。
例えば、コロナに関するニュースを見るのは1日に1回、5分間まで、など。夕方のニュースを週に1度見る、もしくは、ニュースなどの報道を一切見ない、などでも大丈夫です。
2. 手洗いなどの健康行動に関する有効な推奨事項に従う
汚染への強迫観念からくる、過剰な洗浄行為や掃除の習慣を減らす目的でOCDの治療を受けられている方は多くいます。
治療の一部で、汚染への強迫観念を抑えるために、手洗いやその他の洗浄行為の習慣を制限するよう勧められていたかもしれません。
ですが、今回は、コロナウィルスの感染予防の為、OCDをお持ちの方も、世界保健機関や厚生労働省などによって推奨されている現在のガイドラインに従わせてあげることが重要です。ご自分でやられる場合は、カウンセリングで制限をされていたとしても、WHOや厚生労働省の推奨する手洗いなどを行うことを、自分自身に許可してあげましょう。
大切なのは、専門機関が推奨する以上のことを、行わないこと。WHOや厚生労働省が作ったガイドラインは、各分野の専門家が推奨したものです。WHOは、手を20秒洗うこと、厚生労働省は、帰宅時、調理前、食事前、鼻水を咬んだ時、くしゃみ、咳をした時に手を洗うよう推奨しています。ご自身で手を3分ごとに消毒をする、などルールを作成しないようにしましょう。必要以上に手を洗ったりせず、推奨範囲内にとどめることは、曝露反応妨害法 (Exposure and Response Prevention; ERP)の良いトレーニングにもなります。
推奨された手洗いや感染予防を行なっても、十分でないような気持ちがしてしまう場合は、再び洗浄行為をするのではなく、そのままでいることを練習してみてください。医療従事者でOCDをお持ちの方もいます。その方々も、自分でルールを作ったりせず、職場で決められた感染予防に従っているのです。
3. セルフコンパッションをもつ
セルフコンパッションとは、自分への理解と思いやりをもつこと。コロナウィルスを恐れるのは、普通のことだと、リマインドしてあげましょう。
OCDを持っていない人達でも、コロナウィルスに対して恐怖感を抱いています。コロナに対して不安感が湧いてくるときは、共感心を持って接します。コロナに対して不安を抱いても良いのだ、ということを認識しましょう。
もし、コロナの影響で、最近OCDの症状が増えたのなら、セルフコンパッションを持ちましょう。ご家族の方は、症状をもつ方をとがめたりせず、これは、彼らのせいではないこと、ご自身で読まれている方は、あなたのせいではないことを認識しましょう。完璧であろうとせずに、衝動を抑えるために出来ることをするようにしましょう。
さらにサポートが必要な場合は、専門機関に相談をしましょう。
セルフコンパッションについて、詳しく知りたい方は、こちらをお薦めいたします。
4. レジリエンスがあることを伝える
コロナがまだ不明な点が多くあり、予防摂取や治療薬がないので、パブリックヘルスクライシスと呼ばれる、多くの人を巻き込んだ健康危機になりました。
ですが、OCDの治療を受けた経験がある方は、分からないこと、経験をしたことがないことに挑戦するスキルや、不安の解消方法などの手段を身につけておられます。治療を受けたことのない人よりも、未知なことに対抗をするパワーや心の準備がある可能性があることを、伝えてあげましょう。
「怖くない、恐怖心なんて存在しない、意味がない」などと感情を否定するのではなく、認めてあげて、「恐怖心が実際にある。それは無駄ではなく、意味があること」だと、伝えてあげましょう。
現在は、通常よりも強迫行為を起こす可能性があることも伝えても良いでしょう。そして、その際は、そばにいるからね、と伝えてあげることや、サポートが受けられることを伝えてあげてください。
ご自身で読まれていて、誰もいない、という方は、サポートグループや相談できるカウンセラーを今のうちに見つけておきましょう。
皆様が明るく過ごせますように。
引用文書:American Psychological Association. (2020, April 9). Managing COVID-19 concerns for people with OCD. http://www.apa.org/topics/covid-19/managing-ocd