「木島日記」大塚英志+森美夏
「うさぎ。。月」
このセリフが読んでから十数年経っても頭に残っている。
特に印象的なシーンでもないのだが、なぜか。
本当に書いた通りのセリフかも不明だが、なんか覚えているのだ。
漫画、上中下の3巻。
伝奇民俗学漫画、小説版もある。
舞台は第二次世界大戦へと突き進む日本。
同じような時代を舞台にしているのに、「ジョーカー・ゲーム」とはなんと異なることか。
民族学者の折口信夫という人物がいる。
これは実在の人物で、本屋や図書館にいけば著書が置いてある、高名な学者さんだ。
けっこう特徴があって、顔に生まれつき痣があったり、同性愛者だったり、同じく民俗学者の柳田国男と論争したりと。
その折口信夫が物語の進行、狂言回しになる。
木島という仮面をかぶった謎の男。
彼はもと政府の研究機関に所属していたのだが、ある不可思議な事件によって研究機関をやめ、研究の結果・調査の結果出てきた、あると国政や現在の施政者の思惑にそぐわないものを、仕分けと称して世の中から排除する、という謎の仕事をしている。
第一話がただの研究員だった木島が、なぜ仕分け屋になったかが描かれる。
これがまた幻想的で面白い。
研究機関はある少女を保護する、水辺に打ち上げられていた。
出自不明、身体的特徴も通常の人間とは違っている不思議な少女、彼女は記憶を失っており、木島は記憶をよみがえらせる為に手を尽くす。
最初は言葉も話せない赤子のような彼女だったが、不思議な特徴があった。
物を教えると、段階的には習得しないのだが、ある時一気にすべての学習が身に着く。
いままでため込んでいたものが一斉にアウトプットされるのだ。
そんな彼女、今まで木島が施した記憶回復の為の処置が一気に効果を表し、記憶を取り戻した結果。。。自殺する。
彼女と心を通わせていた木島は悲嘆にくれ、死人返しの施術を依頼する。
これは失敗、膨れ上がり爆発した少女の死体、木島の顔には彼女の肌が張り付いて剥がれない。
だから仮面をかぶっている。
導入からして、伝奇って感じな物語でしょ。
ここから木島が同様に奇怪な事件をたんたんと仕分けていくのだ。
・サバン症の子供たちを、精神感応能力のある巫女とつなげて、コンピューターとする。
・ナチスは探す、戦況を有利にする為の道具として”ロンギヌスの槍”を。
・満州にユダヤ人をその富とともに受け入れる、毒も肉も食らう”河豚計画”
などなど、正史には登場しない怪しげな話のオンパレード。
非常に面白い。
為政者や国がオカルトを認めているという前提で進む話は、面白いに決まっている。
かつて海外ドラマブームのはしりとなった「Xーファイル」なんかも、現代を舞台にしたそんな話。
なんと平日の20時ー21時に放送されてたんだから、人気がうかがい知れる。
シーズン1は神作品だったなぁ。