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映画についての極私的な文章

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僕が観た映画と日常の関係性について極私的に。
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#エッセイ

映画の話がしたいだけなのよ:「映画部 気泡」

映画の話がしたいだけなのよ:「映画部 気泡」

 映画の話をしたい。誰かと一緒に映画を観に行って、その後、飲み屋とか喫茶店に入って、映画の感想を言い合うというのはよくあるベタな夢なのかもしれない。が、基本的に独りで映画を観に行く僕は、誰かと一緒に映画の話をするということを夢見ている。
 といっても、60年代の古いヨーロッパの映画だとか、タイトルが太く赤い筆文字で書かれていた頃の日本映画を好む僕の映画的趣味趣向は捻くれており、現在の若者の一般的な

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赤く太い筆文字で題名が描かれていた頃の日本映画

赤く太い筆文字で題名が描かれていた頃の日本映画

 よく日本の映画を観るようになった。2022年に入ってからの鑑賞映画本数を数えると、28本(1月19日現在)。うち18本は日本の映画で、さらにそのうち11本が1950~60年代の映画だ。こうした映画のほとんどのポスターは、赤く太い筆文字で、力強く題名が描かれている。

 ぼくが古い日本映画に惹かれる理由はなんだろうか。自分でも良くわかっていはいないのだけれど、考えたら理由はいろいろと出てくる。

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アントワーヌ・ドウネル≒フランソワ・トリュフォー

アントワーヌ・ドウネル≒フランソワ・トリュフォー

 アントワーヌ・ドワネルは走る。少年鑑別所から逃げ出し、海に向かってひたすら走る。『大人は判ってくれない』のラストシーンだ。
 アントワーヌ・ドワネルというのは、フランソワ・トリュフォーが生み出したキャラクターだ。『大人は判ってくれない』『二十歳の恋』『夜霧の恋人たち』『家庭』『逃げ去る恋』と約30年をかけ、5本の映画に渡って、ジャン=ピエール・レオ演じるアントワーヌ・ドワネルの半生を描く。
 ち

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