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MoCAと時計描写テストで認知機能をチェック!高齢者に最適な認知症予防法

今日は高齢者の認知機能を評価する
「MoCA(Montreal Cognitive Assessment)」という
超重要なツールについて深掘りしていきます。
これがどれだけスゴいツールなのか、
特に「時計描写テスト(CDT)」を
中心に説明していきますね。
MoCAが一体どういうものか、
そして高齢者の認知機能をどうやって評価しているのか、
そしてそれが何故重要なのか、ぜひ一緒に見ていきましょう。


MoCAとは?

まず、MoCAについて説明しましょう。
MoCAは、認知機能を幅広く評価するためのテストで、
軽度認知障害(MCI)や認知症の初期段階を
発見するために使われます。
認知症の初期段階では、
通常の検査では見逃されがちな細かい
認知機能の低下が起こることがあります。
しかし、このMoCAなら、そんな細かい変化も見逃さず、
しっかりと検出できるのです。

このテストは、
視空間認識や実行機能、記憶、注意力、言語能力など、
様々な領域をカバーしています。
そして、たった10分程度で完了するのに、
30点満点の詳細なスコアを得ることができ、
26点未満のスコアが軽度認知障害の疑いがあるとされています。

時計描写テスト(CDT)とは?

MoCAの中でも、特に重要なのが
時計描写テスト(Clock Drawing Test: CDT)」です。
これは非常にシンプルなテストで、
被験者に「10時10分を示す時計を描いてください」と
指示して、その結果から認知機能を評価します。

「ただの絵を描くテストで何がわかるの?」
と思うかもしれませんが、このテスト、
実は非常に多くの認知領域を評価しています。
例えば、視空間認識実行機能
さらに注意力時間管理能力までチェックすることができます。

どうやって数字を配置するか、
針を正しい位置に描けるか、
これらの要素が視覚的にどう処理されているか、
順序立てて物事を進める能力がどうかなどを総合的に判断できるのです。


研究でわかったMoCAとCDTの相関

今回の研究では、
MoCAのスコアと時計描写テスト(CDT)の
パフォーマンスがどのように関連しているかを調べました。
この研究からわかったことは、
MoCAスコアが低い人ほど、CDTで誤りが増えるということです。
これは、認知機能が低下している人は
視覚的な情報処理や空間認識、実行機能も
低下していることを示しています。

具体的には、数字を正しい位置に描けなかったり、
時計の針が適切な長さや位置に描かれなかったりします。
これが、認知機能の低下を示す初期のサインであり、
時計描写テストを通じて早期発見できることが証明されました。

特に興味深いのは、CDTは短時間で実施できる上、
診断結果もすぐに得られるという点です。
このため、臨床現場では非常に便利なツールとして活用されています。

実行機能と前頭葉の関係

この研究では、前頭葉機能が低下している人ほど、
CDTのパフォーマンスが悪いことがわかりました。
なぜかというと、前頭葉は計画を立てたり、
物事を順序立てて実行したりする
「実行機能」に関与しているからです。
時計描写テストのようなタスクでは、
数字を適切な場所に配置したり、
針を正しい位置に描いたりするために、
計画力と手順を踏む力が必要です。

この研究結果は、認知機能の中でも特に
実行機能が低下している人が、
CDTでミスをする可能性が高いことを示しています。
つまり、CDTは単なる記憶力のテストではなく、
複数の認知機能領域を一度に評価できる優れたツールだと言えるでしょう。


TMT(Trail Making Test)やFAB(Frontal Assessment Battery)との比較

MoCAは、視覚認知や言語、注意など多くの
認知機能を評価できるだけでなく、
他の検査とも相性が良いです。
例えば、TMT(Trail Making Test)や
FAB(Frontal Assessment Battery)といった
テストと組み合わせることで、
さらに詳細な認知機能の評価が可能になります。
これらのテストは、特に前頭葉機能
注意力
視覚的処理能力を評価するために使われます。

研究によると、TMTやFABのスコアが低い人は、
CDTでもミスを犯しやすいという結果が得られています。
これにより、MoCAやCDTと他のテストを組み合わせることで、
より包括的な認知機能の評価が可能であることが示されました。

臨床現場での活用

さて、MoCAとCDTがどれだけ素晴らしいかは
理解していただけたと思いますが、
実際にこれを臨床現場でどう使うかが重要ですよね。
ここがポイント!

まず、MoCAやCDTは非常に短時間で実施できるため、
忙しいクリニックや診療所でも大活躍。
高齢者が気軽に受けられるだけでなく、
結果もすぐにわかるため、早期発見や介入が可能になります。

また、CDTは特に視覚空間能力や実行機能を評価できるため、
これらの領域での異常を早期に見つけられるのが強みです。
これにより、軽度認知障害(MCI)の段階で
適切なケアや治療を始めることができるため、
認知機能の低下を抑えることが期待できます。

MoCAとCDTを組み合わせ早期発見のメリット

認知症やMCIは早期発見が非常に重要です。
症状が進行してからでは、
治療や介入が難しくなってしまいますが、
MoCAとCDTを使えば、
比較的軽度な段階で異常を発見しやすくなります。

特に、視覚的情報の処理能力や空間認識能力、
実行機能の低下
を早めに察知できることは、
日常生活の中での「ちょっとした変化」を見逃さないために
大きなメリットとなります。

例えば、
「最近忘れっぽくなった気がする」
「物を置き忘れることが増えた」
といった症状を感じたら、
このMoCAやCDTを受けてみるといいかもしれません。
早めに診断を受けることで、
必要な対策を取ることができ、
認知症への進行を防ぐことが期待できます。


まとめ

今回は、MoCAと時計描写テスト(CDT)
どれだけ効果的な認知機能評価ツールであるかを解説しました。
これらのテストは短時間で実施できるだけでなく、
認知機能の複数の領域を包括的に評価できるため、
臨床現場で広く活用されています。

特に、前頭葉機能や実行機能の低下を早期に発見できることから、
認知症や軽度認知障害の早期発見に大きな役割を
果たすと期待されています。
高齢者の認知機能が気になる方や、
身近な人の認知症リスクを考えている方は、
ぜひMoCAやCDTを!

MoCAは高齢者の認知機能を評価する超便利な
スクリーニングツールで、
たった10分で広範囲の認知機能をチェック可能。
特に「CDT」は、視空間認知や実行機能の低下を
見逃さない重要なテストです。
簡単な時計を描くだけで認知機能全体の状態を知ることができ、
臨床現場でも大活躍。
短時間で結果がわかるので、早期介入にも最適です。

論文タイトル:
  地域在住高齢者におけるMoCA-J得点別にみた時計描写テストの関連性
著者: 坂本晴美, 谷口圭佑, 巻直樹, 高田祐, 六倉悠貴, 久保田智洋, 柳久子
掲載誌: 高齢者ケアリング学研究会誌
巻号: Vol.13 No.1
発行年: 2022年


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