小池真理子「沈黙のひと」読書感想
初版 2015年5月 文春文庫
あらすじ
両親の離婚によってほとんど関わりあうことなく生きてきた父が、難病を患った末に亡くなった。衿子は遺品のワープロを持ち帰るが、そこには口を利くこともできなくなっていた父の心の叫び―後妻家族との相克、衿子へのあふれる想い、そして秘めたる恋が綴られていた。吉川英治文学賞受賞、魂を揺さぶる傑作。(アマゾン商品紹介より)
生前、ちゃんと向き合わなかった家族を、死して、あるいは、死を直前にしてようやく顧みるという話です。
本作の場合は、幼い頃に、外に女つくって、でていった父ですから。
余計に冷え切っていた関係ですが、歳月を経て、凍った関係が解け始めた矢先に・・。
パーキンソン病を患った末に逝ってしまったという事です。
そして身辺整理をしていると、いろんなものが出てくるわ出てくるわと・・。ウチの父の時にも・・身に覚えのある話ですが・・。
本作も、ビニ本、性器具が出てきたくだりは笑ってしまいましたが・・
いやいやホントは笑えない。ウチの父も似たようなもの出てきたし、自分の時も、そういうのは絶対に遺したくないし・・・
あと、いろんな文章、手紙、短歌、なんかが出てくるわけです。
ウチの父も、そういう文章みたいなのもいろいろ出てきたけど、
ウチの家族はほとんど誰も読もうともせず捨ててしまいました。
他の家族がどう思ってたかは知らないけど、僕としてはあんまり、心みだされたくないというか、怖いというか・・まあ、本人が生前に見せようとしなかった心の内側は、あえて覗かなくていいと思ったのか・・・。
そんな感じでしたが。
本作の娘、衿子は、全部しっかり読んで、中に出てくる短歌友達の女や、後妻のそのまた不倫相手らしき女と連絡とって会いに行ったり・・。
なかなかに、真摯に受け止めます。
文庫あとがき解説者の持田叙子さんが平成を代表する「父恋の文学」と評していたけど、僕の家族の冷淡さに比べ、いろいろ複雑な遺恨のある父親だったにもかかわらず・・
いや、だからこそ、幾重にも重なった愛憎を越えて、長い歳月を経て、いくつもの後悔を経て、静かに慈しむような感情が芽生えていったのかもしれません。
恋心というほど純粋ではない気もしますが・・・。
まあ、人の終に対する向き合い方は、人それぞれで向き合うしかなく。
今回は、これ以上あまりごちゃごちゃ語るのはやめておきましょう。
冒頭のコピーした、アマゾンの解説読んでご興味惹かれた人は一読あれ。