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"自由に選べること"のほんとうの意味
本日のお題は、
生まれたばかりのシャツ屋が語るには、
そして、親しみやすさがうりの生地屋が語るには、
「なんだか大それたテーマだなぁ」
なんて、思われるかもしれません。
”何かを選ぶ”ときに、
”らしくあってほしい”
と、ついつい願ってしまうひとさまと、
それに一生懸命応えようとする、
私たちの国民性。
そして、最近なんだかよく耳にするようになった
”多様性”
をテーマにお送り出来たらな~と思っています。
我ながら、なんと、壮大な!
きっかけは、当店にいただいた1通のメール
生地がもっとも売れるシーズン、
それは、新入園・入学に向けて、レッスンバッグをはじめとするアイテムを作りはじめる1月~3月。
当店では、おすすめの生地をまとめたページをいくつか公開しているのですが、その表現について、とっても貴重なご意見をいただき、
大切な気づきがあったので、備忘録として書いておこうと思います。
いただいた内容は、
生地紹介ページの
「男の子におすすめの柄」「女の子におすすめの柄」という表現が気になる
と言った旨のお問合せでした。
何気なく、商品を探す際に、
わが娘にぴったりの柄を早く見つけたい
「女の子柄 おすすめ」
とか、
息子は車や恐竜が好きだから
「男の子柄 おすすめ」
と検索するんだろうな~と
機能性を考えて用いた表現だったのですが、
それを見て、
”ざんねんな気持ち”
になる方がいるということまで、考えが至らなかったことを反省し、
現在、ページには訂正を入れさせていただいてます。
ピンクが好きな男の子、ピンクで笑われたくない男の子
このお問合せを受けて、数年前に、聞いた
ある友人の息子さんのエピソードを思い出しました。
息子さんは、ピンク色が大好きな男の子。
ある日、自分で選んだピンクのパーカーを保育園に着ていったところ、
クラスの子に、
「なんで男の子なのにピンク着てるの?」
と言われたそうです。
傷ついて帰ってきた息子さんを見て、
友人は、なんで好きな服を着ていっただけなのに、
そんなこをと言われないといけないんだろう
と悲しい気持ちになったんだそうです。
大人が作った空気の中で、
知らず知らずのうちに
”らしさの強要”
がこどもの間で行われているんだなと感じたエピソードでした。
そして、ちょうど1年前に話題になった、
台湾のIT担当大臣オードリー・タンさんが考案したピンクのマスクの記者会見。
政府へのホットラインに男の子から「学校にピンクのマスクをつけて行きたくない。」という相談を受けた、次の日のこと。
一瞬で”ピンク”をヒーローカラーとして印象付けた秀逸なアイディアでした。
大人の作った世界で、
こどもたちは、おんなじアイテムを身につけるにも、
ワクワクしたり、落ち込んだりする。
まさにそれを証明した出来事だったと思います。
卒園式でワンピースに媚びなかった娘の選択
そしてもうひとつ先日も少し記事に書かせていただいた、娘の卒園式のこと。
わが家の娘は、現在6歳で、
絶賛「かっこいい女」を目指して奔走中なのですが、
4歳から、
「かわいいね!」
と言おうものなら、
「かわいいじゃないっ!かっこいい~だよ!」
と訂正を入れられて、早2年。
親バカのわたしは、
いまだに
「かわいいね」
の口癖を封じ込めることができずに、怒られ続けています。
そんな娘が、今年ついに、
卒園・入学を迎えました。
かっこいい女が目指す先は、
ワンピースではないんです。
スカート履かないかもな~
とうすうす勘づいていた母。
「スカート履かない!」
ほらきた。
「この紋所が目に入らぬか」
バリの展開。
わが家お決まりの予定調和です。
「あぁ~~~、なんでよ~」
ってそのときは思いました。
でも、よくよく考えると、この、
「なんでよ~」
って、娘の方がわたしに言いたいセリフだよな~と。
そもそもどうして私は、この時、困ってしまったんだろう?
卒園式はいいけど、せめて入学式はスカートで。
とも思っていました。
正直に言うと、
はじめましてのシーンで、人と違うことはあまりしてほしくないと思っていたんです。
”らしさの強要”というあぁ、おせっかい。
無意識に、そして盛大に、時代に逆行していく人間が、ここに1人おったわけです。
(書いていると、ますます恥ずかしくなります)
そんな母のKY対応を強行突破して、
6歳の娘は、堂々とパンツスタイルで、
卒園式、入学式に参加していました。
「あぁ、なんてかっこいいんだろう、わが娘」
当日、娘は、本当に気のせいではなく、
2度見するほどキラキラしていました。
その1か月前、母はというと、
「女の子 フォーマル パンツスタイル」
「女の子 パンツスタイル おしゃれ」
というワードをGoogle先生に何度も聞いては、
一生懸命、納得のいく検索結果を探していました。
それが、びっくりするほど、ヒットしない。
こんなに検索しやすくなった時代に、おかしい
というくらい見つからないんです。
いや、待てよ、そもそも、この問題に、
正解なんて、なかったんじゃないかな?
フォーマルなら、どんなスタイルで、式典に出るかは自由。
わたしも、結婚式に呼ばれたら、パンツドレスで出席するし、それとおんなじこと。
いま、まさに、そしてやっと
世の中が変わろうとしているときに、
30年前の子供時代を思い出して、
つい、大昔の一手を打とうとしていたわたし。
あぁ~~、あぁ~~
まちごうてたなぁ。
と思いました。
ランドセルの色が選べる時代が意味すること
そして新入学、私の子どもの頃とは違い、ランドセルの色は、ほんとうに彩り豊かです。
これは単に、
「自由に色が選べて楽しいな」
ということ以上に、とても意味があることなんじゃないか?
と感じるんです。
学校の必需品が、好みがハッキリしはじめる年頃に、自由な色を選択できる
ゴールドやシルバーも、レインボーもある、
そして、
黒やキャメルのランドセルを選ぶ男の子や女の子が、
おんなじ色だねぇと言い合う景色が意味すること。
いい時代だなと思います。
ご意見をお寄せいただいたお客様へ
こんないろんな世の中のできごとに思いをめぐらせるきっかけをくださったお客様へは感謝しかありません。
今回、当店にご意見をお寄せいただいたお客様は、
きっと、とっても勇気を出して、
メールをお送りくださったのだろうと、思います。
それと同時に、意見を言うことが、
どうしてこんなにも勇気がいることになっているんだろう
とも思います。
ここにも、
"よっぽどでない限り、意見は言うべきではない"
という、
”らしさの強要”の原理が働いているように感じます。
nunocoto には、どんどんお客様にご意見をお寄せいただきたいと思っています。
1通のメールは、99人の言いたくても言えなかったお客様の意見を背負っているような気がして、100人くらいのお客様がおなじお気持ちなのではないか?と思うこともあります。
当店にお問合せをいただくお客様の多くは、
率直な意見を送りたいと思いながらも、
"申し訳ない気持ち"
や、
"いつも、愛用しているからこその"
という言葉をたくさん添えてくださる方がほとんどです。
たしかに、わたしも、
よっぽどではない限り、
購入店にわざわざメールをすると言うことはほとんどありません。
だからこそ、勇気を出して、貴重なご意見をくださったお客様へ、心から感謝したいと思います。
ソーイングが好きなお客様が、こどもたちのアイテムを作るときに、ほんとうに自由な気持ちで選んでいただけるくらい豊富なデザインをそろえる
『nunocoto fabric』
そして、2,000以上の柄を取り扱う生地屋が作った、
『nunocoto wear』
ユニークが武器になる時代を生きる、
選ぶ楽しさと着る自由に気付いた人のためのブランドです。
お気に入りの音楽を聴くみたいに、お部屋に絵を飾るみたいに、自由な気持ちで選べるお洋服が、あってもいいんじゃないか?というところから、50人のデザイナーの協力を得てはじまったプロジェクト。
"らしさの強要"は早々に脱ぎ捨てて、
もっと気持ちに正直に、過ごせたら良いなと思う今日この頃です。
BY nunocoto fabric