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開発中止になったFFシリーズの思い出② FF12スピンオフ「Fortress」
前回の記事に続き、本稿では開発中止になり日の目を浴びなかった「ファイナルファンタジー (以下FF)」シリーズ達に思いを馳せてみたい。今回は、FF12のスピンオフ作品として企画・開発されていた“と考えられている”作品「Fortress」(仮称)について取り上げる。
1、「Fortress」とは
前回取り上げたワンダースワン版FF3リメイクに対し、こちらの知名度はとてつもなく低いだろう。何故ならスクウェアエニックス公式からの情報が全く出ていないからだ。そのため、本稿の記事には不正確な情報が含まれている可能性がある。その旨どうかご了承頂きたい。
本作はスウェーデンの開発スタジオ「GRIN」によって開発されていたそうなので、“洋ゲー”と呼んでも差し支えないのだろう。基本的に国内(特に旧スクウェア/スクウェアエニックス)の内製開発が殆どのFFシリーズでは大変珍しいケースである。
そんなGRINは2009年8月に閉鎖している。そして「Fortress」開発の噂がWEB上に流れたのはスタジオ閉鎖後の2010年頃。つまり我々ファンは作品の存在と開発中止を、同時かつ事後的に知ったことになる。
2、「Fortress」の内容
「Fortress」の内容は未知数である。開発していたことすら発表されていなかったのだから仕方がない。内容を伺い知ることができる具体的な材料は、流出した技術デモ動画とアートワークだけだ。
動画では広大なフィールドと、チョコボに乗るプレイヤーの姿が確認できる。FF12のようなパーティプレイ・コマンド選択型バトルを前提にしたゲームには思えない。オープンワールド風のアクションゲームだったのだろうか…?
※フェイク動画にしては凝りすぎているので、個人的にこの流出動画はガチだと信じている。もちろん、信じるも信じないも観る人次第です。
また、流出したアートワークには、FF12のヒロイン:アーシェと酷似した女性、モーグリ族、トンベリ(デザインにアレンジが加わっており若干グロテスク)などが描かれていた。アーシェと思われるキャラクターの服装を見る限り、FF12のエンディング後──彼女が女王として即位した後の物語だったということになる。FF12と直接的な連続性を持つ物語だったのだろうか。
また、「Fortress」にまつわる様々な情報(噂)は上に挙げたサイトに集積されている。翻訳サイトを頼りに読んだところ、ゲームシステムや開発中止の経緯、ストーリーに関する情報などが多数掲載されていた。
俺個人の意見としては、こちらはかなり眉唾物の情報(特にストーリー面について)と思っている。
例えば主人公はFF12の仲間キャラ:バッシュとされているが、彼はFF12のエンディングで身分を捨て、自由に身動きがとれない程の重役に着任してしまっている。主人公として単独行動させるには無理があるのではないか。
また、本編では一ミリも触れられていなかったバッシュとアーシェ・アーシェとラーサー(FF12のNPC仲間キャラ。ラスボスの弟でもあった)との恋愛関係についても同様だ。これはよほどキャラクターの設定・性格を改変しない限り訪れない展開だろう。いくら何でも無茶が過ぎる。その無茶さを納得させられるだけの周到な脚本が用意されていたとでもいうのだろうか…?
3、「Fortress」とFF12への想い
俺はFF1・11以外のナンバリングタイトルを全てクリアしているが、中でもFF12(特にHDリマスター版:「ZODIAC AGE」)こそが最高傑作だと感じている。
後半の性急なストーリー展開こそ惜しかったが、洋画を彷彿とさせる台詞回し・地味ながらも人間味のあるキャラクター達・快適かつ戦略性の高い戦闘システム・練り込まれた世界観・壮大なオーケストラの劇伴・非常に豊富な自由度と寄り道要素…あらゆる点が魅力的で俺のツボに入り、通算6回はクリアしている。
もし無人島に一つだけゲームを持っていけるなら、俺は迷わず「FF12 ZODIAC AGE」を選ぶだろう。誰に何と言われようと、それ程に俺はFF12が好きだ。
FF12の発売翌年となる2007年、スピンオフ作品「FF12 レヴァナントウィング」がニンテンドーDSで発売された。“リアルタイムストラテジーRPG”として非常に楽しいゲームではあったが、20時間程度でクリアできるボリュームやライト層を意識した低すぎる難易度、“戦記モノ”としての色が皆無だったのは残念でスピンオフとしては少々物足りなさがあった。病気療養の為か、企画段階におけるFF12の産みの親:松野泰己氏が一切関わっていない影響が大きかったのかもしれない。
先に挙げた動画を見る限り、「Fortress」は「レヴァナント〜」よりも大規模かつ骨太な企画であったことは間違いない。数多くのスピンオフに恵まれたFF7・FF13を羨ましく思うFF12原作ファンとしては、このような大型プロジェクトがお蔵入りになってしまったことが非常に悔やまれる。また、松野氏が創造した壮大な世界観“イヴァリース”の歴史の中で「Fortress」がどのように位置付けられていたのかも気になる。
いつか日本のスクエニ関係者による公式的な言及・種明かしがない限り、「Fortress」はFF12ファンが見た単なる白昼夢となってしまうだろう。本作にまつわる様々な謎が明かされる日を、俺は今か今かと待ち望んでいる。
※FF12のスピンオフについては、2012年にこのような噂が流れたこともあった。「VALIANT SAGA」と銘打たれたこちらの内容は、松野氏の作品「ベイグラントストーリー」を意識させるものだった。結局デマだったと思われるが、情報が流れた当時は凄く期待してしまっていた。
「Fortress」に続きこのような出来事があったので、その後「ZODIAC AGE」の開発が噂になった際も俺は「どうせまたデマか開発中止なんだろ!勘弁してくれ!」と疑心暗鬼になった。こちらは発売されてくれて本当に良かった…。