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540.そうか!2、3人で本をつくっても楽しいね!【出版論第2章】新シリーズ「著作者になる!⑱」
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1.そうか!2、3人で本をつくっても楽しい!
本は一人で書かねばならない。
いえ、そんなことはありません。
テーマによっては2人で、または3人で、または4人で、場合によっては10人で、というのも可能です。それは共同で1冊の本を書くわけですから、「共同著作物」といいます。
1冊の本を2人で書けば2人の共同の著作物になります。
もちろん、3人で書けば3人の権利となります。
仲間がいるとお互いが叱咤激励し合い、それよりも燃えるという人もいます。
ただ注意する点は、2人でひとつの著作物ですから、どちらかが一方で勝手には利用できません。
たとえば、3人、4人の共同著作物の場合、共同で書いているわけですから全員が著作者になります。ですから、何かのときに利用したい場合は全員の合意が必要になります。
また、共同著作物であっても、ひとつのテーマがそれぞれのないようになっている論文形式の場合は、きちんと、発行する前に利用する場合があるということをしっかりと話し合いをしておく必要があります。もちろん書いた人たちからの合意をいただいておけば何も問題はありません。
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2.著作者と著作者人格権って何?
著作権法第二条一項二号では、著作者のことを「著作物を創作する者」と定義されています。「著者」の意味はわかるけれど、「著作権者」という言葉もある。そうなると「著作者」と「著作権者」の違いはどうなるのでしょう。
著作権は譲渡や相続などをできるもので、必ずしも著作者が著作権者でない場合があります。著作権者は著作権を保有するという意味で、著作者でない者でも著作権を持つことができます。そのため、「著作者」と「著作権者」の区別が必要となるわけです。
著作者でない人でも著作権を持てるということはだれでも著作権を持てるということでしょうか。著作物を創作する人が「著作者」ですが、著作物は第三者に譲渡したり、貸与したりすることができます。貸与する場合は著作権は移動しませんが、譲渡する場合は第三者に著作権は移動するわけですから、だれでも著作権者になれるわけです。
しかし、著作権が第三者に移動し、著作権者が変わったとしても、著作者には「著作権」と「著作者人格権」があり、注意が必要です。
これは、著作者には、著作物(創作物)を創作した時点で自動的に「著作権」「著作者人格権」の両方の権利が発生しています。
「著作権」は財産的権利として、著作者の経済的利益を保護し、「著作者人格権」は著作者の人格的利益の保護を目的とした権利のため、この二つの権利が重なり合っているからです。
ですから、著作権を譲渡してもらったからといってもこの「著作者人格権」を無視することはできません。また、この著作者人格権は譲渡不能のもので、一般に一身専属性と呼ばれ、著作権は譲渡されても、この著作者人格権は譲渡することはできないものです。
よく誤解されていることですが、著作権を譲渡されたものは、その新しい著作権者の自由に使用できる、代金も支払い、契約も交わしたのだから、自分の権利だと思い込みがちですが、この著作者人格権によってある程度の制限があります。
「著作者人格権」とは、著作者の人格的利益の保護を目的とする権利で、著作権の場合、それを利用することにより収益をもたらす財産権としての性格を持ちますが、著作者の人格を傷つけないという配慮として性格という二面性の権利が含まれています。
この人格権とは、身体、自由、名誉、貞操などの人格的利益にもとづいて生ずる権利の総称ともいわれ。これらの人格的利益が他人によって侵された場合には、加害者に対し、損害賠償その他の措置請求をすることができます。これは、プライバシーの権利もこれと同じと考えられます。
このように、著作権を契約により譲渡されたとしても、著作者人格権は譲渡できないものですから、ある程度、著作者の人格を傷つけないための使用、利用方法に制限があるわけです。では、その一定の制限とはどんなものでしょう。
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3.「著作者人格権」ってどんな権利なのだろう
「著作者人格権」は他の知的財産権(特許権・実用新案権・意匠権・商標権)に含まれる各権利の中でも特別な地位があり、特許等の工業所有権にはこのような人格権を保護する規定はありません。
著作権法では、著作者人格権と実演家人格権が特別に認められています。
「著作者人格権」は次の三つがあります。
① 「公表権」
無断で公表されない権利。これは著作物を公表するにあたって、公表するかどうか。公表するとしたら、その時期はいつか。方法はどうするかを決定する権利を公表権といいます。
一言でいえば、「公表するか、しないか」を著作者自身が決められる権利で、「いつ公表するか」ということについても及びます。
たとえば、著作者が季節的な公表を望み、春に考えていたものを、勝手に冬に公表されてしまったり、たとえば演奏会での公表はよいが、楽譜として出版することは複製権のほかに公表権の問題も生じます。
つまり、しっかりと公表時期、方法を話し合わねばならないということです。ただし、公表権があるからといって、著作権の譲渡をした場合、両者の確認等があるにかかわらず拒否することは問題があります。
②「氏名表示権」
無断で名前の表示を変えられない権利。
これは、著作物を公表するにあたって、著作者名を表示するかどうか。表示するとしたらどんな表示にするかを決定する権利を氏名表示権といいます。
つまり、その作品に実名にするか。
ペンネームや雅号にするか。
あるいは匿名にするか。
著作者が決定することができるという権利です。
たとえば本を出版するにあたり、作家が匿名で発表したい場合、また他のペンネームで発表したい場合、無断で実名で発表されてしまったり、他人の名前で発表されてしまったりすればいずれも氏名表示権侵害行為になります。
たとえばゴーストライターが有名人の影の執筆者として文章を作成した場合、たとえ著作権を譲渡していたとしても、著作者は著作物を創作したゴーストライターにあり、著作者人格権もあります。
③「同一性保持権」
無断で改変されない権利。これは、その著作物を著作者に無断で、変更、切除したり、その他の改変について適用されます。
たとえば、文章を編集の上の都合や頁数の問題で修正したり、一部カットしたりする場合、絵画や写真の一部をカットしたり、加工したり、トリミングしたりする場合などのことをいいます。このように無断で勝手に改変することは著作者の人格を傷つける恐れもあり、題号、つまり作品の題名やタイトルなども著作物と密接不可分に結びついているため、タイトルの改変にも及んでいます。
ただし、小・中・高校等で用いられる教科書等に著作物を掲載する場合や学校向けの放送番組で放送する場合などは、児童・生徒の理解を助けるため認められています。
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4.著作隣接権って一体何だろう?
これは、実演家(俳優、舞踏家、演奏家、歌手などの実演をおこなう者、および実演をおこなう者を指揮・演出する者)、レコード製作者(レコード原盤製作者)、放送事業者(放送を業としておこなう者)、有線放送事業者 (有線放送を業としておこなう者)の経済的利益を保護するための権利の総称といわれているものです。
著作隣接権とは一言でいえば、「伝達者の権利」です。
また、実演家のみには公表権を除いた、氏名表示権、同一性保持権が著作者人格権として与えられています。
さて、著作者の死後における人格的利益の保護とはどんなものでしょう。著作者人格権は著作者の死亡と同時に消滅します。
しかし、著作権法は、著作者の死後においても著作者の尊厳を保護することは文化の保護・継承という意味において重点を置いています。
たとえば、著作者の死後であっても、もし著作者が生存していたとすればと想定し、著作者人格権の侵害となるべき行為をしてはならないと定めています。(著作権法第六十条)
つまり、生前、著作者が明らかに拒否していた作品を公表してしまったり、死後において氏名表示を怠ったり、死後において著作物や題号を勝手に改変することは、生前であれば侵害行為となっていることに対し、これらの行為は死後においても禁止されています。
そのため、著作者が死亡していたとしても、その遺族 ( 配偶者、子、父母、祖父母、兄弟姉妹 ) が法的手段を取ることが定められています。また、これは親告罪ではないので、告訴がなくても検察官の判断で訴訟が提起されうるといわれています。ただし、何百年前とてったかなり昔の作品に関しては問題ありません。
続く~
文字数5,065文字
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※さて、毎回、過去作品ですが。「noteと著作権・noteの著作権」として、お役に立ちますよう5作品ずつご紹介いたします。もうすぐ600作品超えてしまうとバックナンバーから消えてしまいますので、(自分の「記事」には残ります)消える前に5作品ずつ掲載することにしました。その後は過去記事のバックナンバーマガジンを作成して保存します。それまでお時間がありましたら「著作権の基本編」をお読みください。みなさまのお役に立てば幸いです。
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ラインスタンプ新作登場~
「noteと言う世界」第3章書くnote「出版論」シリーズを始めました。どうか引き続きお読みください。
また、日々、拘束されている仕事のため、また出張も多く、せっかくいただいているコメントのご返事。お問い合わせメール、お手紙等のお返事がかなり遅れています。しかし、必ず読ませていただいていますのでどうかお許しください。
では、また(月)(水)(金)にお会いいたしましょう。
いつも読んでいただいて心から感謝申し上げます。
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※本内容は、シリーズ「noteの世界」というテーマで著作権等を交えて解説、感想及びnoteの素晴らしさをお伝えしていく予定です。
私たちの著作権協会は市民を中心としたボランティア団体です。主な活動は出版と講演会活動を中心として全国の都道府県、市町村の「著作権・肖像権・SNS等を中心」にお伝えし続けています。皆様から頂いた問題点や質問事項そのものが全国で困っている問題でもあり、現場の声、現場の問題点をテーマに取り上げて活動しています。
それらのテーマの一部がこのnoteにしているものです。ぜひ、楽しみながらお読みください。
noteの世界は優れたアーティストの世界です。創作した人たちにはわからないかも知れませんが、それを読む人、見る人、聴く人たちがリアルに反応してくれる場所です。もし、本格的なプロの方々が参入してもこの凄さには勝てないかもしれません。プロもマネのできないnoteの世界。これからも楽しみにして皆様のnoteを読み続けています。
私たち著作権協会では専門的なことはその方々にお任せして、さらに大切な思いをお伝えします。
本内容は、全国の都道府県、市町村、学校、NPО団体、中小企業、noteの皆様、クリエイター、個人の方々を対象としているものです。また、全国の職員研修での講演先のみなさまにもおすすめしています。
特定非営利活動法人著作権協会
「クリエイター著作権全般」特定非営利活動法人著作権協会(NCA)
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